第十三回ふわふわラジオ(2)
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柴「お笑いっていいよね、の話でした」
上「賞レースってどうなの? の話でもあったよね」
柴「あーあー聞こえない! おたよりいっちゃいましょうかね!」
上「ほーい」
柴「えーと、PN『ぼっちちゃん』さんからのおたよりです」
上「アニメ化おめでとうございます!」
柴「いや上崎さん、ぼっちな人なんて日本中に腐るほどいますよ? 『ぼっち・ざ・ろっく!』 の後藤ひとりさんとは限らないじゃないですか」
上「本名で言うと言いたいことが分かりにくいよ。まあ、うん、そうだね。ただの孤独な人の可能性もあるね」
柴「まったく」
上「いや、ただの孤独な人からのおたよりとして処理する方が、失礼な気がするんだけど」
柴「兎に角読みますよ? 『上崎さん、柴山さん。ボンバー!』」
上「なんで? 後藤ひとりちゃんだとしてもなんで?」
柴「『あ、今のは学校を爆破した音です!』成程、そっちでしたか」
上「孤独なほうかあ……涙が出てきた」
柴「『お二人に質問があります。ラジオを毎週聞いていても、私には、お二人がまともな人間だとはどうしても思えないです』」
上「おたよりじゃなくて果たし状なんじゃないの? これ」
柴「確かに喧嘩を売られているようにしか聞こえないですが、落ち着いて。『上崎さんだけじゃありませんよ? 柴山さんもです』いやわざわざ言わなくても分かってますから! なんで強調するんですか!」
上「まずなんであたしは当然ながらみたいな言い方なんだよ!」
柴「『そんなお二人ですが、お二人のラジオでは何も問題なく、聞き手からすると楽しそうに会話しているように聞こえます』」
上「お?」
柴「『どうしたら、そんな風に上手く人と会話ができますか?』と、おたよりありがとうございます」
上「なるほどー。そんな風に、ね。そう来たか」
柴「僕ら、楽しそうなんですって」
上「まあね。実際、あたしは結構楽しんでるし。柴山さんは?」
柴「僕もですよ。ただこれ、まず知っておいて欲しいんですけど。普段こうやって話せる人がいないからこその楽しさではあるんですよね」
上「それね! そーなのよ、それが前提。そもそも、前言ったことなかったっけ? あたし会社だと敬語も上手く使えないし、別に上手くも楽しくも会話なんてしてないよ」
柴「僕もです。そもそも、これは上崎さんも同じだと思うんですけど」
上「ふんふん?」
柴「上手く会話するのと、楽しく会話するのは別なんですよね」
上「ま、当然だね。ついでに、楽しく会話できる相手と、友人として仲良くする相手も違う。だよね?」
柴「ああ、やっぱり同じ感覚ですね。この辺の感覚が同じなのが、まず一つの、楽しく会話できる相手の基準ですね」
上「本音というか、思ってることを言えるし共感貰えるんだから、そりゃ楽しいわよね。これ言ったらまずいかなーとか考えるのって割と苦痛だもん」
柴「下手に友人関係じゃない、仕事上の繋がりだからこそってのもありますよね。というか……僕らの関係はかなり特殊なので。多分、社会にありふれている類の繋がりではないですから」
上「そーいう言い方されるとなんか恋愛に絡められそうで嫌なんだけど。仕事だけの関係で、尚且つ、普段から長く一緒にいないアンド今後一緒にいる保証もない関係、って意味だよ」
柴「そうですね。このラジオだけの繋がりで、まあ、業界にいれば今後も一緒に仕事することはあるでしょうけど、直属の上司・部下や同僚になる未来はまず無い。ぶっちゃけ嫌われても然程問題ではない相手、だからこそ、楽しく、そしてお互い気を遣わずに話せるんですよね」
上「あたしと一緒ならさ、バイトした時のお客さんとのやり取りとか、めっちゃ楽じゃなかった?」
柴「接客バイトの経験が無いんですが、言いたいことは分かります。学生の頃、部活の大会で会った他校の人とか、学園祭に来たお客さんとかの相手するのは苦じゃなかったですね」
上「ね。だって、もう話すことまず無いからね。あー、でも、だから、最初からもう関わらないと思ってるから、他人の顔や名前覚えられないんだよね」
柴「そうですね。そうやって大多数の人と接してるから、いざ覚えなきゃいけない人のことも覚えられない。訓練不足ですよね」
上「わかっちゃいるけどやめられないよね」
柴「一応、友人かつ会話が楽しい人、ってのも極稀にいたりしますが」
上「それでもここまで楽ではないかなー、嫌われたくないから言葉選んじゃうし。もう一つの、条件? に当てはまってる枠って感じかなそっちは」
柴「やっぱ一緒ですか。もう一つの条件、話してて楽しい人は……いやでもなんて表現すべきでしょうか」
上「会話自体が目的の人、かなあ。或いは言葉遊びに付き合ってくれる人」
柴「うーん、まあ、その辺ですかね」
上「アイスクリームって美味しいよね! って言われたとする。あたしはそれに肯定しつつ、何かもう一言付け加えたい、かつ、だからあたしもアイスは好きだよっていうのを結論に持っていきたい。だから、この前寒い冬にアイス売ってた店があってさ~ってエピソードトークから入っちゃったりして、相手をぽかんとさせる。なんてことが実は割とあるんだよね」
柴「ああ、その例えだと、会話が目的って言い方はその通りですね。相手の目的は、突き詰めてしまえば意思確認なんですよ。そうだね! かそんなことないよ! が欲しい。でも僕らは『どう面白い会話を、受け答えをしようかな?』と考えてる、だから食い違う」
上「結局最初に話した、TPOだの、求められてるものは何かだの、そういうのが会話にも必要だってことなんだろうね。ただ、それはあたしにとって楽しい会話ではないのよ。回りくどい文章や、勿体ぶった言い方や、敢えて使う単語を変えたやり取りがしたい、それこそが楽しい」
柴「僕らあんまり言葉のキャッチボールしてないですよね」
上「上手い! それだ。いや、してないというか、できないわけじゃないけどそれじゃ面白くない」
柴「だから僕らにとっての楽しい会話は、言葉のキャッチボールではなく、交互に遠投し合う感じに近いと思います。相手が投げてる間はそれにどう対抗するかを考えてるので、一応、一人では成り立たない会話ではあるんですけどね」
上「分かってくれる人あんまりいないよねー」
(CM)
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