ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第二十五回ふわふわラジオ(3)

 

「ところで、話は変わるんだけどさ」

「はい?」

「あのさ。しれーっと、放送日変わってない?」

「気づきましたか。収録なのに」

「それは言わなくてよろしい。いや、あたしも今日来るまで知らなかったんだけど、え? なんかそう言う話、出してた?」

「いえ。急遽、ですね。まあ放送枠の問題なので仕方ないんですけど」

「いつものことながらさーこの番組はさーもう、ほんと、宣伝をちゃんとやろうね!」

「すみません。つい」

「ついて」

「いやね、スタッフも頑張ったらしいんですよ? どうも、先日の年越し放送までは頑張りたかったらしくて。そこまでは引き伸ばしたんだぜとかって自慢気にいってました」

「いや生放送ならその願望わかるんだけど収録じゃんね? しかも年越しタイミングも滅茶苦茶だったからさー、頑張りどころが違うんだよな」

「まあそれは分かりますが」

「頑張りどころが違う、といえばさ」

「そこで思い出すんですか? 自分で言ったコメントのそれで?」

「し、しょうがないじゃない。いや、頑張りどころが違うってのと、さっきまでしてた仕事の話からなんだけど」

「ふむふむ」

「人によってさ、こだわりポイントって違うじゃない。仕事という、仲がいいわけでもないのにみんなで協力して特定の何かに取り組む環境下だとね? それがすっげー気になるのよ」

「わかるような、分からないような?」

「例えばさ。仕事の中でも、案件ごとに担当者っているじゃない? ウチの場合は新兵一人とその上司、二人組で動くのが基本なのね」

「新人を新兵と呼ぶな」

「んで、事務所でもその二人が並ぶようになってて、電話対応の時もまあ担当者が対応するのが基本だからさ。あたしはなるべく、上司かあたしのどっちかはデスクにいるようにしてんのね。トイレのタイミングとか、給湯室行くのずらしたりとか」

「はいはい、わかりますわかります。上崎さんって妙なとこに気が回りますもんね」

「ああ? んだコラ」

「こっわ。続きどうぞ」

「上司はタバコ休憩も出るし、そういうの気にしてない人に見えてたのよ。でもこの前、タイミング会わなくて昼休み終わってから午前の仕事終わったことあってさ。そっから昼休憩入ったのよ」

「はいはい」

「あたしはてっきり、あたしが休んでる間上司も休んでると思ってたのね。だって、遅れたのは二人とも一緒だし、飯食う必要もあるし、何より誰かいなきゃいけないみたいなの気にしない人だと思ってたから。けどどうも、飯だけ食ってそのまま仕事してたらしくてさ! 気にせずきっちり休んだあたしすごい嫌な奴じゃん!」

「それは考えすぎだと思いますけども、うーん。それはコメントが難しい出来事ですねえ」

「いやまあこれに関しては、不満とか言うより驚いたというか。基準は? っていう。普段の仕事の時気にしてねーじゃん? っていう」

「まあ、時間とかもありますよね。短時間ならいいとか思ってそうです」

「電話来た時出れないとかは変わんないのにね。あー、まあ来客への対応にかかる時間は結構大きいか」

「逆に上崎さんはその時不在になることは気にならなかったんですね?」

「業務時間外だからね」

「徹底してるう」

「そらそうよ。あたしがお客様に親切なのは仕事だからだし、その分仕事中は徹底的に気遣って、期待に応えようとするわよ。でも意外と上司、その一人に限らないみんなだけど、変なとこで客に迷惑かけないようにとか言う癖に親切心徹底してなかったりさー。やっぱ、他人のこだわりって、分かんないのよね」

「そうですねえ。たぶん、その人たちからすると、上崎さんのこだわりもちょっと変わって見えるんでしょうね」

「多分ね、そうね! なんであいつ業務時間にあんな拘ってんだろとか思われてるわよね絶対。やっぱ人は分かりあえないんだなあと思ったよ」

「そういう結論の話題だったんですかこれ」

「今までで一番ムカついたけど調べてみたらそれなりにいた人種は、まあ時間外も高めに給料出るからいいじゃーんって言った奴よね。休日出勤よ?」

「さっき上崎さんも除雪に関する話で言ってたじゃないですか」

「あれは自分に言い聞かせてるの。この場合は、それが慰めになると本気で思ってるのが問題なんだって」

「こだわりが強いんだよなあ」

「そんなわけで、今年もこうやってモヤモヤしたこととか愚痴とか語ってみんなでわかるわかるって言い合う場所にしていきたいね!」

「だいぶネガティブな響き感じますが、そうですね。発散する場所ってのは、必要ですよね」

「一応なんだけど、あたしと、柴山さんは名前出してる以上愚痴が愚痴で済まない可能性があるわけなんですよ。なんで皆さんのおたよりをきっかけに語れればとてもありがたいという裏事情があります」

「僕なんて自分の職場で喋ってるわけですからね? 皆さん、ご協力のほどよろしくお願いします」

「そんなわけでおたより待ってます! あと、これ前回言っとくべきだったやつだと思うけどまーいいか、せーの!」

 

二人「「今年もよろしくお願いしまーす!」」

 

「ではでは今週はこの辺で! ばいなーら!」

 

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(BUMP OF CHICKEN)」

 

 

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