ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第二十四回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「もーいーくつ寝ーるーとーおーしょーおーがーつー」

「一回寝るとお正月ですしなんなら寝ないで迎える人が多いまでありますよ。MCの柴山蒼汰です」

「あー! くっそ、先に名乗られた! MCの上崎茜(CV.内山 夕実)ですちくしょー!」

「24回もやってきて先に名乗ったの今回が初でしたか。今後はどんどん仕掛けていきたいと思います」

「名乗る順番なんてどーでもいーだろ! それより今日は年末、大晦日! 2021年の締めくくりとなるに相応しい放送にしましょうね! それでは行ってみよう第24回『ふわふわラジオ』!」

「順番云々言い出したのそっちだってことスルーしないで貰えます?」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「song for you(長瀬麻奈(神田沙也加))」

 

「この声は」

スマートフォンゲーム『IDOLY PRIDE』より長瀬麻奈、キャラクターボイス神田沙也加の曲、song for youです」

「そうか」

「リクエストは今回、多くの番組スタッフからという形になりますね。結構彼女の声のファンだという者が多くて。何曲か聞いた中で、僕のプレイしているゲームからこの曲いいねってなりました」

「そうかー。うん、まあ人の数だけ考え方がある意見だとは思うけど、私個人としては、こうしてずっと声を聞き続けられるってことは嬉しく感じるね」

「そうですね。僕もそう思います」

「さて。じゃあ今日は、おたより無しってことでいいのかね?」

「ん? まあ、そうですね。なんか話題ある感じですか」

「曲とあんま関係ないの申し訳ないけど、まあ、切り換えてね。柴山さん結婚したい?」

「ええ、突然のプロポーズですか? 嬉しいけど、少し考えさせてください」

「は?」

「冗談はさておき。恋愛トークですかあ? なんか前も話した気がするんですけど」

「まあまあ。ここが本題じゃないから。因みにあたしはあんまりしたいと思ってなくて、けどさー。最近ちょっと考え方がね、色々と変わってきたのよね」

「というと?」

「あたしは結婚は、あんまりしたいと思わない。今んとこ子供も別に欲しくはない。自分に割く時間が減ることになるからね」

「ゲーマーにとっては致命的な話ですよね」

「まああたしは柴山さんほどめちゃオタじゃないけど、自分の気分に従って、気の向くままに行動することが喜びみたいな人間だからねー。相手の仕事の都合だのに合わせて予定変えるのも苦痛だし、お互い仕事してるんだから家事は分業ねみたいなのも嫌なわけよ。気が向いたときに気が向いた家事を、それぞれやるみたいな、けどそこまで行くともう家族と言うか怪しいじゃない?」

「シェアハウスみたいになりそう」

「子供とかさ、いや好きだよ? 可愛いし。未来があるから力になってあげたいという気持ちはある。けど、あたしの時間を満喫したうえで余裕があればの話だね、それは。仕事で人生浪費したうえでプライベートを捧げられるかというとちょっと疑問よねえ」

「やはり仕事、人生の邪魔ですよね」

「同意するけど仕事でラジオやってる人がラジオの中で言うセリフか?」

「いやあ、放送は好きですよ。喋ってるのは。ただ、ラジオを作る仕事って我々MCにとっても本番で喋るだけではないじゃないですか。色んな準備をして、構成を考えて色んな所に許可とったり、話を回したり。広報したり」

「いやだからそれも、やってるなら公共の電波で言うべきことじゃないわよね。同意するけど」

「まあ好きじゃないだけでちゃんとやってますし。手を抜いたりすることもないんで」

「好きなことだけして生きてられないものね、みんな」

「死ぬほど努力して苦しい時期を乗り越える覚悟があればできるのかもですけど、そんなん無いですもんねえ」

「安定性を何より重視するあたしには耳が痛い話だ」

「話が逸れましたね。それで?」

「あー、なんだっけ。えーと、そうだ、自分の子供を産んで、育てたいとはそこまで思えないって話か。これはもう一回話がずれるんですけど、すごいなとは思ってるからね?」

「あー、それは僕も一緒です。さっきの愚痴だけでいろんな仕事を悪く言ったようになってますが、あくまで僕がやるのが好きじゃないだけです。それらを好きな人がいても否定しないし、すごいと思います。僕みたいに好きじゃないけど頑張ってる人とも応援し合えるでしょう。が、それはそれとして、僕は仕事怠いなあと思っているんです」

「割とクズ野郎だなあ。わかるけど」

「人間誰しも、自分の満足感の上で初めて他人に優しくできるんですよ。僕らはちょこっと自分の満足感の部分が我儘なだけです」

「違いないわね」

「で、結局何の話したかったんですか?」

「いや、だからさあ。旦那もいらない、子供もいらないって改めて思うと、余計にさ? 何か、なんでもいいから、あたしの生きた証を残したいという思いが出てきたのよね」

「はー」

「なんでもいいのよ。教科書に載りたいだのって大きなことは言わない。みんなの生活の中にあり続けるような普遍的なものじゃなくていい。そこまで大きい話じゃない。ただ、遥か未来になっても、物好きな人、世界の誰か一人くらいには気づいてもらえるような、小さな何かを残したい」

「それは何か、物質的な?」

「記録でもいい。記憶は、物足りないかな。だってその人たちが死んだら終わるもの。あたしは、あたしが生きた理由を望むの。いや、あたしが生きる理由はあたしの幸せのためだけど、世界にとってのあたしの人生は無意味であってほしくは無いなって思うようになったのよ。今までどーでもいいと思ってたのに」

「我儘ですね。だって、自分の幸せのために生きるんでしょう? 他者のためじゃなく、そこはぶれないまま、世界にとっても意味があってほしいと?」

「そうよ。あたしが幸せである上で、それ以外の何かの意味も望む。より我儘になったのかもね、柴山さんの言う通りだわ」

「でも、少しわかりますね。どうせ1人なのに、両親と一部の友人くらいしか繋がりなんてないのに、今日はまだ死ねないと。そう最近は、思うかもしれません」

「取り敢えず、あれだね。この『ふわふわラジオ』アーカイブ残ってんじゃん? こいつを大団円で終了させるその日までは、あたしら二人は死ねんかもね」

「違いありませんね」

 

(CM)

 

 

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