ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第二十三回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「メリークリスマス! MCの上崎茜(CV.長妻樹里)ですっ」

「一週間早いですよ、ついでに放送予定ズレたせいでクリスマスに放送はありませんし。あ、MCの柴山蒼汰です」

「それよ、それ。なんで先週放送なかったの? あたし、収録向かおうとしてたら今週お休みでーすって言われたんだけど。もうちょい早く連絡寄こせや」

「スタッフの休暇申請が相次いで番組が成り立たなかったからじゃないですかね」

「なんで?」

「かく言う僕も休暇申請出してた一人ですからね」

「だからなんで?」

「理由は一体何故なのか? 全ての答えはこの『ふわふわラジオ』第23回放送で明かされるのです。さあ、始めましょう!」

「あたしの号令がー!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「色彩(坂本真綾)」

 

「はい察した」

「そんなわけで、PN『サンタムを継ぐ者』さんからのリクエストでした。ありがとうございます」

「CMで何度か聞いたやつだね」

「まあでも、第二部なってから曲変わってる筈ですから、この曲に懐かしみを覚えない世代の人も増えてきてるんじゃないですか?」

「そうかもしれないわね。時代の流れは速いものよ……まーあたし初日勢じゃないから適当にしゃべってるけど」

「さて、おたよりの内容は、と。『上崎さん、柴山さん! 先週は放送お休みしちゃってごめんなさい!』」

「内部犯!?」

「犯ってなんですか、犯って。別に関係者がおたより送ってくるのは悪いことじゃないですよ」

「いやまーそーだけどさ」

「まあ別にいいんですけどね、どうでも」

「どうでも」

「『どうしても……どうしても、仕事を休んででもやらなければいけないことがあったんです!』」

「いやまー、察したから言わなくてもいいよ。うんうん、社会人にもそういうことあるよね。寧ろ有給休暇の存在する社会人にしかできないことでもあるし、つまりは何も恥じることはないということだよね! うん」

「『どうしても、ソシャゲのボックスイベを周回しなければならなかったんです!』」

「恥じろぉー! 分かってたけど少しは己を恥じろよお、廃人どもめー!」

「あらまあ、なんて暴言」

「いやお前もそっち側だろ知ってるんだからな!? というか最初にさらっと自分も休み出してたっつったわよね! 何!? ここのスタッフみんなそうなの!?」

「そうですよ」

「そうなのか」

「そうだからこそ、こんな番組が許されているわけですね」

「そっか、じゃいっか」

「というか上崎さんもゲーマーなんだから分かるでしょ? 割と」

「いや、うーん。やりたい気持ちは確かに、無いわけじゃないけど。あたしの場合気分で行動するからわざわざ休んでもどうせやり込めないのよね。面倒臭い、飽きたって思ったら周回辞めちゃう」

「ああ、まあ普通はそうですよね。なんか僕らがおかしいだけな気がしてきました」

「その通りだよ。普通ゲームのためだけに会社休んだりする? するわ普通に。うん、するね」

「完全自己完結型問答!?」

「いやあたしもしてたわ。モンハンやポケモンの発売日は同僚とけん制し合いながら休暇届出してたわ。そんなものよね」

「そんなものですね。ゲームするために働いてるので」

「断言しちゃうかー。一応我々客商売というか、リスナーさんがいるからやってけてるのよ? 評判、イメージ、大事よ?」

「別にこうして喋ってるのが嫌いとかってことは勿論無いですよ。多分、仕事として、会社に勤めていなくても、個人で配信したりとか何かしらで発信はしていると思います。けど、あくまでそれらは全てゲームするためであるので、そっちで大事な用事があればガンガン優先しますね」

「そーね。それは、あたしも否定できないかもしんないわ」

「というか、ちょっと聞いてみたかったんですけど」

「あたしにか」

「はい。上崎さんみたいな人って、何が楽しくてゲームしてるんですか?」

「柴山さんって、詳しく言えば誤解することもないまともな質問内容の時でも敢えて喧嘩売ってくるよね」

「げ、ばれてた」

「そらばれるわ」

「じゃあ普通に聞きますね。特にソシャゲーなんかでは、ある程度の周回ややり込みが無いと楽しめないイベントや、コンテンツがあるのってもうかなり一般的じゃないですか。僕はそれに加えてやっぱり、対人戦でそれなりに勝てないとなんか虚しくなってきちゃうんですよ。なので、結構別の文化の人種というか、エンジョイ勢というものがよく分からなくて色々聞いてみたかったんですよね」

「楽屋で話す類の軽い話題過ぎるけど……まー、そういう話を公共の電波上でするのがあたしたちの仕事か」

「うちのラジオは割と無駄話が過ぎますけどね」

「うーん。普通に、ストーリー読んで、キャラクターGETして、可愛いなって思って終わりじゃない?」

「成る程。ゲーム性というよりは、アニメや漫画の延長の部分で楽しむ感じ、ですかね」

「そうとも言える、のかな? 勿論ゲーム部分もちゃんと遊んでるよ。クエストやって、バトルやって」

「うう、なんか、まっとうに楽しんでる感じ、伝わってきますね」

「いや、まっとうにって。みんなそんなもんじゃないの? 廃人の皆さんはそれにプラスして何度も周回作業が入るだけで」

「そうとも限りませんよ。例えば、プロ廃人ともなればまずストーリーは全スキップですからね」

「は?」

「まあ僕はアマチュアなので基本的にはちゃんと読んでますが。冷静に、考えてください。敵は同じ人間、つまり24時間×イベント日数という与えられた時間は全員同じなんです。その状況で、他人と差をつけるために必要なのは何か? 睡眠時間を削る、仕事の量を減らす、そしてゲーム内での周回以外の時間を減らす、です。我々はゲームを楽しみたいのではありません。ゲームで勝ちたいのです。そして数多の負けゲーマーを煽りたい! マウントを取りたい! それこそがゲーマー、社会の最底辺でゴミ山のてっぺんに登る者!」

「それこそなんのためにゲームやってんのかって本気で思った」

「そんな人間から見ると上崎さん達の遊び方は極めて健全に見えるわけですねえ」

 

(CM)

 

 

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