ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第二十四回ふわふわラジオ(2)

 

「子供の話、プライベートに侵食しない範囲なら子供好きみたいに言ってたじゃないですか。子供と関わる仕事にはつかなかったんですか?」

「子供は好きだけど親は嫌い。大人が嫌い」

「なるほど」

「なんなんだろうね、大人。いや、一括りにしてるけど全員が全員じゃないのは分かってるよ、当然。あたしももう25歳、ガッツリめに大人で、友達も大体大人だし。大人であることが悪に結びつくわけじゃない、けど、ぶっちゃけ社会人であることは悪に結び付くわよね」

「違いありませんね」

「本音を押し殺して笑顔で嘘を並び立てる毎日に心が綺麗でいられるわけがないんだよな」

「社会、関わる人が多すぎるんですよねどう考えても。関わる人間の数が増えれば増えるほど、我慢する人は増えていくわけですから」

「自然と、そう、誰が悪いとかじゃなく自然と偉い人とそうじゃない人が生まれて、そうじゃない人たちは建前を吐き出すマシーンになる。本当に、なんか、何も悪くないのがね、辛いよね」

「ほぼ全ての人が苦しいという地獄なんですよね。そんな大人にだけはならないと思っていた自分が、どんどん大人になっていく。純粋な子供たちに、どうか純粋なままでいてくれと、まず絶対に無理だと思いながら声をかけそんな自分が嫌になる」

「せめて、子供でいるうちは少しでも恵まれた環境を、一人でも多くにと。思うは思うんだけど、自分の幸せを妨げない範囲での話になるよね」

「台無しですねえ」

「日々を苦痛の中で生きる我々大人は、ほんの少しでも幸福感情を多く確保しようと笑いを求める。さあそんなわけで第17回M-1グランプリの話なんだけどさ! 見た!?」

「話題の持っていき方が強引過ぎて逆に感心しています。見ましたよ」

「面白かったね!」

「ですね」

「どこが一番推しだった? あたしはインディアンス!」

「初めて敗者復活戦から見たんですけど、金属バットのネタでアホほど笑ってました。決勝で見たかったなあ」

「ハライチ勝ち上がりに不満派ですか」

「面白かったのには文句ないですけどね。澤部が上手いし、じわじわずっと笑える感じというか。ただ後半、澤部は喋んないのかよ! みたいなノリでしたけど見てる側はあ、これ岩井は無言のままいくだろうなと分かっちゃったのが残念でしたね。もうちょい息を大きく吸うとか一歩前に出るとか、どっちだ!? みたいになって欲しかったかなあと」

「まああたし敗者復活戦見てないんですけどね。言われてみれば決勝も、ちょっと単調な感じはした、かな?」

「まあ、素人の意見ですけどね。そういう意味では、錦鯉の二本目は完璧でしたね」

「完璧だったねー。インディアンス最推しのあたしも二本目終わったころには確信してたくらいだったよ。見ながらずっと笑って、終わった後にアレそういうことかー! みたいな納得もある。あれでこそ、漫才って感じだったわね」

「インディアンスも行方不明キャッチボールとか真顔コントスタートとか最高でしたけど、一本目がバカ受けしたぶんの期待を全体的には越えてこなかった印象でしたし。それ以上に一本目で圧倒的だったオズワルドも、二本目は大分雰囲気変えてきてましたからね。ちょっと独特な雰囲気がある感じでしたから」

「ランジャタイみ、すらあったね」

「固有名詞として優秀すぎますねランジャタイ」

「他、印象残ってるのは?」

モグライダーは初めて見ましたけど面白かったですね。ゆにばーすは点数に納得いってない一組というか、正直1stの中ではオズワルドの次に笑いました。真空ジェシカ、小笑い中笑い大笑いを絶妙な感覚で畳みかけてくる感じが好きでした」

「え、何、全組ぶん語るつもり? お笑い有識者の方ですか?」

「ふっ、無識者だって語るときはあるんですよ」

「無識者て」

「んでですね、ロングコートダディ、僕はですけど所々想像出来ちゃったのが残念でしたね」

「え、うーんそんなのあった?」

「輪廻転生だーってなって、肉うどん!? ってなって。最初に思ったのが、次の転生チャンス早っやだったんですよね。期待裏切らずにそのくだりあったので」

「あー、うーん、言われてみれば?」

「しりとりもですねー。ただ逆に、二文字チャンスの時はえっ肉うどんなれないじゃんどうすんの!? ってワクワク感が凄かったのでよかったですね」

「無識者、ポイント解説まですんの怖いな」

「あとももはすごく面白かったんですが、ネタパレで何回も見てたからかいつものももって感じすごいしましたね。結局やっぱ順当な三組だったって感じなんでしょうか」

「この前ネット記事で視聴者ランキングみたいなの見たけど、確かそれも最終順位どおりだった気がするわ」

「まあなんにせよ」

「うん」

「みんな面白かったですね!」

「それねー」

「前に上崎さん、お笑い賞レースはクソみたいな話してませんでしたっけ」

「そこまではしてないし柴山さんも一緒に喋ってたからね。いや、なんだろうね、やっぱ有観客・無観客の違いもあるのかしら?」

「ああ、それはあるかもしれません。お客さんの笑い声で笑いどころが分かった! ってことありますよね」

「あるねー。なんだろう、あ、ボケとツッコミのやり取り此処で終わったんだって。ここが笑う間なんだっていう安心感? あるわよね」

「逆に客の笑い声うるせえ! ってときもありましたね。インディアンスとか」

「あったねー。まだボケてるのにカメラもね、もう笑ってる人のほう映しちゃってんのよ。その辺の調整は芸人側の仕事でもあるんだけど、インディアンスの場合は畳みかける感じそのものが良さでもあるからねー。いい塩梅を探すの難しそうだわ」

「実際、今年のインディアンスは聞き取りやすくて、SNS上でも審査員からも高評価でしたけど、僕個人としては前のほうが好きだったまであるんですよね。田淵っちゃんのあの、止まらなさがね? 欲しい感じもしたんですよね」

あっちょっそれ分かる! 今年はきむさんの説明落ち着いて聞いてるパート多かったわよね。その分ボケが分かりやすかったけど、よく知るあの笑い続けて休む暇ねーよお! 感は少なかった。それこそ賞レースと劇場&ライブで使い分けていく、みたいになるのかもしれないね」

「そうなっってきたらもうベテランですねえ」

 

(CM)

 

 

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