ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第十六回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「こんばんは! 隔週金曜日のこの時間は『ふわふわラジオ』! MCを務めます上崎茜(CV.倉岡水巴)です!」

「こんばんは。MCの柴山蒼汰です。」

「真面目なあたし、どう?」

「その問いが来なければ評価してたかもしれません。どうでしたか? 隔週になってみて、最初の休みは」

「それなんだけど、実は前から割と休んでたじゃん? 五回に一回くらいでさ。だから、いつも通りって言うか。実感するなら次回以降だろうね」

「まあ、たしかにそうですね」

「そんなわけで今週もいつも通りいくよー! 第16回はじまりはじまり!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「夢笑顔(茶太)」

 

「もしかして今のエンディングだった?」

「まだオープニングから5分ほどしか経ってないですね」

「心がほわほわして、今日はもう寝るかーって気分なんだけど」

茶太さんの声、いいですよねえ。PN『恋愛サークルの姫』さんからのリクエストで、茶太さんの『夢笑顔』でした」

「姫プレイ状態の子が存在してる恋愛サークルって機能してんのかな」

「さあ。おたよりを読みますね。『上崎さぁん、柴山さぁあん。こんばん、わっ』」

「柴山さん、きもいんだけど。姫に寄せなくていいから普通に読んで」

「いや、だってこう書いてるんですもん」

「え? ……ほんとだ! いや書き言葉でこれは完全にわざとというかなんというか、めんどくさっ!」

「なので忠実に読みますね」

「寧ろ柴山さんに姫っぽい台詞を言わせるためのトラップなのでは?」

「うえ、それは嫌ですね。まあ読むんですけど。『茶太さんの声ぇ、いいですよねぇ。私もぉすごくぅ親近感をぉ覚えるってぇいうかぁ』」

「段々舌ったらずなお爺ちゃんが脳内イメージに生まれてきたんだけど」

「笑わせないでくださいよ、姫プレイのお爺ちゃんって! あー『最初にぃ恋姫プレイしたぁときのぉ感動がぁ蘇ってきたりぃぃい』」

「プレイ? これゲームとかの曲なのか。……最近そんなんばっかりだな! いいけど!」

「いやまあ、うーん。『そんなわけでぇ、是非聞いて下さぁーい』うん最後は普通ですね、ありがとうございます」

「普通とは」

「ラジオの、こうしておたよりを通して紹介される人や、最近はSNSもそうですけど。結構、話をしている相手の性別やら年齢やらが分からないことって増えましたねえ」

「ん、まー確かにそうかもね。でもこの人は女性じゃないの? 姫だし」

「男性であっても同じ状態なら姫と呼んだりするらしいですよ。あと、この曲がテーマになってるゲーム、男性向けのエロゲーです」

「あ、そーなんだ?」

「全年齢向けコンシューマ移植版もありますし、アニメも一般向けでやってたんで、まあこれも絶対ではないですが」

「そもそもあたしの周りに、女性でそういうゲームやってた人もいたから、根拠としてそんなに強くは無いけども、そっかー」

「特にこの『恋姫夢想』というタイトルは、主人公が男性版上崎さんみたいになってるのを楽しむゲームですからね。ストーリーも悪くないですが、そっち重視って程ではないです」

「あたし? どーゆーこと、モテモテってこと?」

「そうです」

「まあっ」

「あと夜ごとに異性をとっかえひっかえ」

「それは幻想だっつってんだろ」

「純粋に疑問なんですけど、なんでそんなとっかえひっかえしたいんですかね? 好きな人一人に一緒にいてもらえればそれでいいじゃないですか」

「好きな人一人がずっといない奴がほざきおる」

「そこはいいですから」

「あー、この前も似た話したけど、個人の傾向というかさ? そりゃあ大事な人の目だけ自分に向いてればそれでいい人もいるかもしれないけど、あたしは一人でも多くの人からの賞賛が欲しいのよ」

「モデル体質というのか、なんというか」

「彼女連れで歩いてる男の視線とか一瞬こっちに流れた時、勝った! って嬉しくなるわね」

「嫌な女だ」

「まあでも、恋愛したいわけじゃないからそこで終わりなんだけどね。あとはそっちの二人で仲良くしっぽりしてればいいと思うの。あたしはあたしの魅力を確認できるし、カップルたちはきっと仲直りのための幸せな夜を過ごすでしょう。ね? Win-win

「そうかなあ」

「そういう柴山さんも、あんまり理解できないという割にはお詳しいじゃない? 結構馴染みあるジャンルのゲームだったんじゃないの」

「まあそうですね。ですが最近はあまり追わなくなったかもしれないです」

「それは何故に?」

「単純に本数、種類が減ったのもありますね」

「あ、そーなんだ」

「かつてはかの『Fate』のように、いかがわしいシーンがあればより売れるから、と言われたまでの全盛期もあったものですが。最近はもっと色んな種類のご飯のお供が、安く、手軽に手に入りますからね」

「その言い方過去イチ気持ち悪いんだけど」

「おかずが」

「許す」

「まあぶっちゃけ、ゲームにまでエロを求められていないんですよね、あまり。必要になれば二次創作者が供給しますし」

「あれもまた、すごい文化だよねえ」

「そうなると、全年齢対象で初めから作ったほうが売り出す対象が増えるわけですし。ましてやゲームなんて本来子供たちが遊んでいたものですからね、本来のターゲットにも売れる」

「わざわざR18作品として作るとこが減るわけだ」

「そして競争が減った分『当たり作品』も減ります、体感ではね。色んな理由から仕方ない面もあるんですが、年齢制限の分表現を変にマイルドにしなくて済むという長所があったり、性という人間の本質とも言える部分を扱うことで名作となるケースもなかなかに多いので、このまま衰退していってしまうのは少々残念です」

「まあでも、何処のどんな業界だろうと背水の陣状態ってのは強いからね。逆風を恐れない、爆発力のある作品が出てくれば流れも変わってくるかも」

「『ぬきたし』いいですよ。ゲーム好き芸人野田クリスタルさんが、シリーズ2作目を最も泣けると紹介した伝説のゲーム」

「え、もうあるんじゃん!」

「出てくる単語の全てが卑猥なせいでプレゼンが殆ど地上波で流れなかった伝説のゲーム」

「いつまでも語り継がれるんだろうな、その伝説……」

 

(CM)

 

 

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