ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第二十回ふわふわラジオ(2)

 

「寂しい」

「いつまで寂しがってんのよ。というか、前半いっぱい使って別れを惜しんだだけありがたく思いなさいよ」

「まあそれはそうですね。うん、よし、切り替えました。ではおたより読んでいきましょうか」

「そうしよう」

「はいでは、これ。PN『ボート推し』さんからのおたよりです、ありがとうございます」

「ありがとうございますー」

「『上崎さん、柴山さん。こんばんは!』」

 

二人「「こんばんはー」」

 

「『ふわふわラジオ、以前から聞かせてもらっていました! その中で一度、みんな、選挙に行こう! という会話があった気がします。思えばあそこから、お二人のトークに更に興味を持てたと思います』」

「そんな話したっけ?」

「僕なんとなく、一人の力じゃ何も変わらないかもしれないけどそれでも投票すべきだよねみたいな話した気がしますよ」

「真っ当なトークじゃん。あたしたちにそんなこと出来てたのか」

「僕は兎も角、上崎さんにもね。出来たんですね」

「は?」

「『今もまた衆議院の選挙がやってきており、人々の意識を変えていくための大事な過程の一つです。是非宣伝をお願いします!』ということで、僕らのラジオに期待してくれているみたいですよ」

「うーん、あたし今回はあんまり力になれないかもしれんね」

「え? なんでですか」

「あたしの地元さ、選挙の時の事務スタッフを一般に募集してんのよね。役所の人だけじゃ手が回らないからだと思うけど」

「あー。上崎さんの会社って、そういう役所の雑用とか請け負ってるんでしたっけ?」

「そうそう。それでさ、なんか選挙に関わる人間は、投票の誘導になっちゃいけないからってあんま喋んなって言われてんのよね。いや、どっちかってーと、疑われないように、か」

「まあ投票事務のスタッフが一人ちょっと喋ったくらいで、誰に入れるか誘導できたりはしませんもんね、普通は。でも公的な作業につく人がそう疑われるのがヤバいと」

「だから、あんまり選挙関連の話するのまずいかなーと。まあ正直今更? と心の中では思ってるけど、上に言われてる以上は一応ね」

「まあ、日頃からこのラジオで諸々に対する考え方とか発信してますからね……アーカイブも残してますし。選択的夫婦別姓の話とかした気がしますよ」

「そんなこと言ったら公務員の皆さんだって軽い感じで消費税とか、そういう話してると思うからね。あくまで選挙期間中は、ってことでしょ。そんなん言ってたら誰も投票事務できなくなるわよ」

「まあでも、政策とかの話題に関しては兎も角、ボート推しさんから要望のあった選挙に行こう! って話するのはいいんじゃないですか」

「あー、そっか。誰に投票するかの誘導が駄目なんであって、投票自体をしてほしいのは政府機関も公的機関もみんな一緒の筈だもんね。みんな、選挙に行きましょう!」

「今更ですけど、ボート推しさんの名前のボートって投票のほうですか。船じゃなくて」

「あー、voteか!」

「徹底してますねえ」

「しかし、ボート推しさんみたいに推進活動する人がいるくらい、みんな選挙の投票行ってないもんなのか。勿論テレビとかで数字は見てるけどさ、あたしの周りで行かないって人あんまいないから実感ないのよね」

「僕の周りもですね。まあ、人間価値観が近い人たちとつるむものですから、そんなものなんじゃないですか。多分行かない人は行かない人で固まってるんですよ」

「そうなのかも。あたしからすると行かない理由がよく分からないんだけどね、それもやっぱ考え方かな」

「敢えて絶対に行かない! と決めている人ってのは少ないんじゃないですかね? 絶対行く派の人と、まあ別に行かなくてもいっかな派の人って分け方が妥当な気がします」

「結局関心があるか無いかになってくるのか。自分の生活に直接関わってくる話なんだけどねー」

「それは本当にその通りなんですけど、それでも、そんな余裕ないくらいに目の前の生活が大変な人ってのもいると思うんですよね。収入の問題で働く時間が長くなっている人、精神的に自分以外のことを考える余裕が無い人、あと色々な理由で、失礼ながら教養が足りずに大人になってしまった人。よく言われる若者の無関心をなんとか対処したら、次はそういう人たちへのアプローチを考える必要が出てくるんじゃないかと思っています」

「ほんとなら余裕が無い人ほど、政治の動きによる影響が大きい気もするけど」

「事実としては、そうなんでしょうね」

「でも一応、投票の前にはどんな意見を持った人たちが出馬しているのか調べて、自分はどれを応援するのかを考えておかなきゃいけないわけだもんね。そりゃあ少しは時間と労力を使うから、その余裕も持てないって人は確かにいるか。仕事も勿論だし、家庭の事情もあるだろうしね。手のかかる時期の赤ちゃんワンオペで育ててるとか」

「十人十色で人にはいろんな事情がありますからね。投票しない=悪ではない、けど、やはり僕の意見としてはできるだけ投票をしてほしいとは思います」

「最近は投票率が低いことによるデメリットを、一般の人もSNSとかで発信していたりするよね。それこそボート推しさんみたいに」

「そうですね。それだけ、社会全体としての関心は高まっているんでしょう」

「何事に関してもそうなんだけどさ。元々関心を持ってる人はさらに詳しくなっていくし、関心が無かった人はずっとそのまんまになりがちだよね。そりゃあそうって話ではあるけど」

「関心の高い人は自分から情報を集めますし、関心低い人には何を言っても騒音と変わらないでしょうからね」

「逆に、投票に行くことによる分かりやすいメリットが無いことが問題よねー」

「中長期的に、大局的に見れば……うーん、それでも、あなたの意見が政治に反映されるよ! と断言はできませんか。されるかもしれない、止まりですもんねえ」

「一応、票が割れるほど当選した人も好き勝手やりにくくはなる筈だけど、所詮は抑止力とも言えるから」

「やっぱり、自分の要望を叶えるより、自分の考える最悪を避けるための投票って側面が強いんですよね」

「難しいわねー」

 

(CM)

 

 

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