第五回ふわふわラジオ(2)
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柴「都会っ子柴山の、教えて! 田舎っ子! のコーナーです」
上「ぶん殴るぞ」
柴「で。町ぐるみで子供を育てていく感じって、子供的にはどうなんですか」
上「まず前提として。柴山さんのいう都会と、イメージしてる田舎の他に、その中間ってものがあるのを理解しといてほしい。そしてあたしの地元は中間にあたるということを」
柴「中間、ですか」
上「即ち、都会ほど周りに無関心でもないけど、田舎ほど家族の境なく助け合えるわけでもない日常……ぶっちゃけ周りの目だけが異常に気になる関係」
柴「うわ、ドロドロ展開の匂いがしますよ」
上「古くからの凝り固まった価値観と、暮らしに合わせた現代の家族単位、町単位のはっきりとした線引きが夢の共演を果たした世界」
柴「なんだか寒気がしてきましたね」
上「この中間が一番クソよ。そこで、あたしが生まれたってわけ」
柴「上崎さんを生み出した諸悪の根源は生まれ故郷でしたか」
上「おい。まあポエティックな表現は置いといて、実際一番めんどくさいと思うよ。住んだことはないけど、本物の田舎に行くと、散歩の途中で会話があって、差し入れ合ったり、助け合ったり。月並みだけどほんとにあったかい人間関係ってイメージなんだよね。逆に東京都心とかはガチの無関心でしょ? どっちかのほうが楽だと思うや」
柴「あんまり想像できてないんですけど、どんな感じなんですか? その中間って」
上「さんま御殿とかケンミンSHOWとかで聞いたことない? ゲーセン行ったら不良だって言われる話」
柴「ああ、ありますあります。そういう感じか」
上「まあそこまでの人はそんな多くないけど、でもあたしの親もゲーセンは不良のたまり場ってイメージがずっと強かったみたいだしなー。あたしが大人になって一番マジかと思ったのは、どこ行っても誰々の娘さんね! とか言われること。日常的な付き合いなんてほとんどない人が、どこの家の子ってのだけは知ってんの。怖くない?」
柴「え、怖。じゃあ例えば、上崎さんが逮捕されたら、上崎パパが白い目で見られるってことですか?」
上「なんであたしが捕まる想定なのかは知らないけどそういうことよ。それこそゲーセンもそうだけど、誰々と一緒にいたとかね。それが親の評判にもなるし、逆に学校の先生が両親のこと知ってたり」
柴「あーそうか、持ち家だったら、親と同じ学校通ったりするわけですか」
上「いや同じじゃなくても、学校数も人も少ないから。先生の赴任先が元々あんま無いんだもん、親の知り合いガチャの排出率高いのよ」
柴「常に他人からの見え方が気になっちゃう感じですね」
上「勿論普段は意識してないけどね、今、思うと刷り込まれてるなーって時はある」
柴「やっぱ人間関係ってクソですわ」
上「いやその結論は短絡的が過ぎるけど、否定はしない」
柴「えーっと」
上「何?」
柴「上崎さん、今現在の話、って」
上「うん? ああ、今住んでるとこの話ってこと? いーよいーよ、気を使わせてごめんなさい」
柴「いえいえ、それじゃあ改めて。そんなに不満があるのにどうして今も地元で暮らしているんですか?」
上「あたしが最も望むものが都会で得られないからだよ」
柴「何を望んでいると?」
上「平穏」
柴「というと」
上「あんまりあくせく働きたくないって感じかな。大学で少しだけ外に出たけど、あのスピード感がちょっとキツかった。いや、プライベートは最高に楽しいんだけど、仕事的にね」
柴「都会で仕事した感想ってことです?」
上「んにゃ、大学の頃のバイトだけだから仕事した感想っつーか、ね。まあでも派遣バイトで飲食店とか言ったけど、絶対無理だと思ったのはある。次から次へと仕事が入ってきて、決まった休憩以外でトイレに立つ暇も無くて、それを一日八時間近く? 何日も何年も続くの? あたしにそんな熱量は無いね」
柴「僕は学生の頃から今の局でバイトさせてもらってたんで、なんというか、一般の方の感覚が分からないんですけど」
上「プラス都会生まれ都会育ちだとそうかもね。わかりやすいとこだと、スーパーとかさ? 田舎のスーパーご飯どき以人すくねーからなんかすごい空気がまったりしてるわよ」
柴「なるほど、それがスピード感ですか」
上「結局人が多いとその分忙しくなるし、少なければ少し余裕も生まれる。あたしが一番大事なのはプライベートな時間だけど、その為に仕事で苦労するのも許容できなかった。だから帰ってきたって感じかな」
柴「じゃあさっき言ってた、人の目が気になるとかが無くなったわけではない?」
上「帰ってきてからようやく実感したって感じ。大学で就職先選んでるときは分かんなかったからなー、まあでもあたしのプライベート基本家の中だからそこまで深刻ではないね」
柴「このラジオ聞かれてたらなんかちょっとめんどくさそうですね」
上「それはねー。ちょっと変わったことすると途端に目立つからね、田舎は。人そのものの母数が多くて変人も少なからずいる都会と比べるとその辺はやっぱ居心地悪いかも」
柴「いや、それもですけど、自分の地元のことこうやって喋ってるの聞かれていいんですか?という」
上「まあ直接的な悪口言ってるわけじゃないから大丈夫でしょ」
柴「そんなものですか」
上「あとは、あたし家族が大好きなんだよね」
柴「どうしました、まだそこまで好感度落ち切ってないと思いますよ?」
上「アピールじゃねえよ。いやさあ、こう、人は死ぬじゃん?」
柴「マジでどうしたんですか」
上「あたし割といっつもネガティブっつか、こんなっことばっか考えてるわよ?両親もおばあちゃんも、今んとこは弟もみんな地元にいてさ。若いうちの一瞬つまり大学の間とかは兎も角、仕事をするなら家族と会いやすい場所がいいなと思ったんだよね。そのためなら、ちょっとクソな部分が見え隠れしてても地元に戻る気になったというか」
柴「ああ、ちょっとわかります」
上「マジで? 柴山さん離れてるじゃん地元」
柴「だからこそ、離れた側の気持ちというかね。仙台は最近結構地震多いですし、なんかある度に心配になりますから」
上「今はスマホですぐに連絡取れるからこそ、ちょっとでも連絡取れない時間があるとすごい不安になるんだよね」
柴「でも仙台なら新幹線で秒で帰れますからね、やっぱり問題なかったですわ」
上「おのれ秋田」
(CM)
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