第十四回ふわふわラジオ(2)
上「最近の人類って我儘だよねーって話です」
柴「そんな話でしたっけか」
上「そうだよ」
柴「はい」
上「何事もそうだと思うんだよね。例えば……あーなんか似た話先週もした気がするんだけどさ」
柴「先週? 何の話でしょう」
上「子育ての話」
柴「ん-、そういえば、なんか確かに。あれですね、負担を分散させて終わりじゃなく、負担自体を減らそう見たいな話でしたっけ」
上「おー、よく覚えてるね。そのへんの話のそもそもなんだけどさ。望みが、多すぎる人、いるよね」
柴「というと?」
上「例えがどうしても女性目線になっちゃうけど、子供を産んだ後もばりばり働きたい。でも産休はしっかりとりたい。夫に育休も取ってほしい。仕事もするけど、子供の成長もしっかり見守りたいし、遊ぶ時間も取ってやりたい。と言いながらたまには母の役目から解放されて休む時間も欲しい。それらすべてを絶対にと言うことを、人は無茶と呼ぶでしょ」
柴「こうして主張だけを並べてみると、たしかに無茶ですね」
上「そもそもさ。昔から日本にあった、妻は家で家事と育児、夫は外で仕事っていうこの役割分担ってすごく合理的なんだよね。だって家事と育児は片手間でできるような作業じゃないし、仕事はそれだけを頑張れる人ほど会社で重宝されるもん。しょっちゅう休む人に急ぎの重要な仕事は任せられない、これはいじめでも差別でもなく純然たる事実なのよね」
柴「けど多分、合理的だったって話をするだけでも、今の時代は男女差別だって叩かれそうですよね」
上「ほうっときゃいいわよそんな馬鹿は。今は、感情の話はしてないの。というかこれ男性が家で家事育児で女性が外で仕事でも成り立つしね? どちらにしろ出産で休みを取らなきゃいけない女性が仕事を辞める方が会社的には助かるだろうけど、まあそれくらいは何とでもなるだろーし。大事なのは、合理的に考えたときに、夫婦で役目を分担するのが理に適ってるってとこなのよ」
柴「ふむふむ」
上「ただこれも例外というか、全員に当てはまる話でもない、けどね。仕事も子供も夫の仕事含めた収入も! っていう我儘に対して苦言を呈したかっただけ。現代社会だと、夫婦の片方だけの収入じゃ経済的に厳しいから、辞めたいのに働かざるを得なくなっている人も大勢いるだろーし、そういう人たちを否定する意図が無いことは伝わっててほしいわ」
柴「あくまで考え方の話ですからね。多くを望み過ぎていませんか? という」
上「けどまあじゃあ、経済的に苦しい人が我儘じゃないか? って言うと、そうとも限らないわけで」
柴「えっ」
上「周りのサポートが欲しいと言いながら、実家に戻らず、人付き合いの薄い都会にしがみつく人とかね。昔、二世帯三世帯で済むのが当たり前だったり、地域の人と協力して子を育てるのが当たり前だった田舎を離れて都会に出てきたのは自分達だったわけでしょう? 自分から過酷な環境に出てきて、無いと分かっていたものを寄越せというのは正直滑稽に映るというか」
柴「なかなか言いますね」
上「勿論これも全員に当てはまる話ではなくて、家族からの暴力や嫌がらせから逃げた人はきっと実家を頼れないだろうし、そういった人たちの為にサポートを充実させることは大事だと思うの。でも、今なんて特に縁もゆかりもない田舎ですら移住を歓迎してくれるような時代でしょ? それでもやりたい仕事が無いだとか都会でしかできない趣味だとか言って都会にしがみつきながらぐちぐち言うのはちょっと我儘寄りかなーとは思っちゃう」
柴「まあ田舎は田舎で昔からの風習とかありますし、そこに馴染めるかどうかもあるので。移住が簡単な話だということは決してないんですけどね」
上「そーだね。結局どの苦労が一番マシか、みたいな話にはなっちゃうけどね。でもどの苦労もしたくない、は我儘なんだよなーと」
柴「それは確かに」
上「そもそもこれは、我儘が悪いことだよって話じゃないのさ。というかあたしなんてベースが我儘の塊でできてるような女だし? 仕事にそんなにやる気は無いけど金は欲しくて将来のこと考えるのに頭使いたくないからクビになりたくなくて人ごみ煩わしいから都会に出たくなくてでも人とは喋りたくて趣味に金も使いたくてって奴だしね?」
柴「こっちもこう聞くとマジで我儘ですね……」
上「でしょー? 要は、なんかの時にも話したけど、自分の状態をもっとみんな理解するべきだよなーっていうお話ね。私たちが主張して、お願いしてることは叶って当たり前のことじゃないんだよと。多くの人の頑張りや、社会構造の大きな変化を伴ってこそ変わる類のもので、ちゃちゃっと手軽にできるものじゃない。そう分かっていれば、少しは優しくなれるんじゃないかなーとあたしは思うわけですよ」
柴「仕事から帰ってきたパートナーに家事や育児を頼むとき、相手も自分と同じだけ疲れてると分かれば少しの気遣いができるかもしれない。会社の制度がなかなか思った通りじゃなくても、会社に文句言うだけじゃなく別の会社を探すとか……これはちょっと違いますか? まあ、意味のある動きができるかもしれない」
上「公的サービスを受ける時には、税金払ってるから当たり前だと思ってる人は言葉も態度も乱暴になる。けど、それを考えてくれた人、頑張って実現してくれた人、運営するためにいまあ頑張る人を想うことで多分接し方が変わる」
柴「つまり、どういう話ですかね?」
上「プライベートでは人類皆我儘、仕事では人類皆必死。自分も同じ、相手も同じ。プライベート状態の時も、我儘を声高に叫びつつ、相手への気遣いは忘れずに生きていこうな!」
柴「マジで何の話からこの結論に至ったかわけわからんですね……区切りいいんでCM入れまーす」
(CM)
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