ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第十四回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「こんばんは! 夢を追いかけBダッシュ! 上崎茜(CV.内田真礼)の『ふわふわラジオ』です!」

「ついに番組を私物化しだしましたね? どうも、柴山蒼汰の『ふわふわラジオ』でもあります」

「オリンピック終わったねー」

「えっ、ここでその話題振るんですか? 今までご時世的なトーク全スルーしてきたのに?」

「やっぱアレだね、チーム戦は腰を据えて、個人戦はなんとなしにテレビつけて気軽に見れるのがいいよね」

「完全無視しやがりましたね。いや、まあいいですけど、タイトルコールの後にね?」

「へーいそだね。よしじゃあとっとといきますかー第14回!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「I AM YOUR SINGERサザンオールスターズ)」

 

「敢えての?」

「何がですか?」

「オリンピックの話題からのサザンオールスターズと来たら『SMILE~晴れ渡る空のように~』だと思うじゃん? 敢えての『I AM YOUR SINGER』?」

「いや、そもそもオリンピックの話題が最初に出てくること自体が僕らにとって予定外だったのでなんとも。普通にリクエスト曲ですよ」

「あ、そうなんだ」

「PN『人生30年』さんからのリクエストです、ありがとうございます」

「同年代、ちょっと先輩の人か。あー、それだとこの曲が世代ドンピシャか」

「そうですね、それくらいだった気がします。『上崎様、柴山様。いつも楽しいお話を聞かせていただき、ありがとうございます』あ、どうも。」

「初手感謝はポイント高いわよ」

「『私がこの曲に出会ったのは、丁度、第二の人生について考えていた時でした』」

「待って?」

「第二の人生?」

「これ、10年と……13年くらいか、それくらい前の曲よね? 今30歳でしょ、てことは高校生くらいじゃないこの人? 第一の人生どこ?」

「いや、待ちましょう上崎さん、高校生とは限りませんよ。世の中、中学卒業と同時に働き始める方もいらっしゃいます。そこでの仕事が第一の人生、そこから第二の人生を考えていた方かもしれませんよ」

「あー、いや、成程ねえ。確かにあたしの中で、18歳イコール高校生がイメージとして固まっちゃってたかもしれない。それに気づかせてくれてありがとうございます……ん? 何の話だっけ」

「第二の人生の話ですね、おたよりの続きを読みます。『この曲は、サザンが30周年にして無期限活動休止を発表した時の曲で、これまでの感謝といつかの再会を願った、テーマとしてはありふれた曲かもしれません』」

「ふむふむ」

「『けど私にとっては、これをサザンが歌ってくれたことがとても大きかった。何歳からであっても新しい道を選んで進み、それでいて今の出会いにもまたもう一度と言っていいんだって。別れも、挑戦も、約束も。手遅れなんてことはないと教えてもらえました』」

「なんか、感想がだいぶ年上じゃない? 30っぽくなくない?」

「『50を過ぎての転職という、時代が時代なら有り得なかった選択を後押ししてくれたこの曲が、多くの人に届けばいいなと思います』とのことです」

「やっぱ30じゃないじゃん! なんでサバ読んだの? しかもペンネームだけで? 謎過ぎる!」

「いや、上崎さん、僕分かりましたよこれ。50過ぎでしょ? マイナス30年すると20ちょいってことになるでしょ? 第二の人生、って話してたでしょ? これ、一つ目の仕事、第一の人生に30年いたってことですよ多分」

「え、ちょっと待ってね……あーなるほど、理解した。でも紛らわしいわ!」

「ですね。でもまあ、おたよりありがとうございました」

「10年以上前かー。確かに、今ほど転職が当たり前の時代ではなかった気がするわね」

「というか、今も実はそんなにでもないですよね。業種や職種によって転職に対する考え方が違う気がします。同業種内でガンガン人動くとこと、一生涯勤め上げる! 会社に尽くす! って業界での考え方の温度差みたいなの、ありませんか」

「あー、そうかもしれない。なんだろうね、職種自体の新しさ? ITとかが人の動き激しい気がするけど」

「そこで働いてる人の目的の差、ってのがある気がします。勿論、個人差がありますって前置きはあった上で、より上のお賃金を求めて働く人たちと、より上の技術を求めて働く人たちとの違い」

「成程ね。考えてみれば、閉鎖的な業界でもより自分の能力を磨きたい人は転職も含めた変化を求めるし、流動の激しい業界でも生活のためって人はできる限りの安定のために居座るか。どっちのタイプの人が多いかで、業界の色みたいなのが決まると」

「そのイメージでした。傾向として、技術者、職人さんとか呼ばれる人たちがスキルアップ重視型が多いかなという」

「職人さんと言えば、伝統工芸とか、所謂『弟子入り』のある業界はまた別なのかな。師匠のを受け継ぐのが前提なんだろうし」

「それはそうですけど、最終的には独立を目指す人が多いんじゃないですか? 所属する会社自体が変わるのが当たり前、と考えると技術者型と言って差し支えないのかなと」

「まあそうか」

「会社が従業員を全力で守り、従業員は会社のために尽くすのが終身雇用タイプの前提なんだろうなと言うのは想像つきます。反対に能力向上転職上等型は、組織が同じ目的を持った人たちの集まりなんじゃないですかね」

「会社組織が上、従業員がしたって構造が強くないと。というか、そういう言い方をされると、会社の為に尽くすべき! って考え方も間違ってるわけじゃないんだなと思うわね」

「今どきそんなことを言えばすぐブラック企業だって言われるでしょうけどね、何事も一応の理由はあるってことじゃないですか」

「というか会社に安定を守ってもらいつつ仕事は最低限やってプライベートを満喫したい派のあたしたちがどれだけ我儘かよくわかるね」

「勿論、全ての人々が幸せに暮らす社会が理想なのでその在り方が理想の一つではありますけどね。世論的にその我儘が、通って当たり前になりかけているのはちょっと怖いですよねえ」

 

(CM)

 

 

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