第十回ふわふわラジオ(3)
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柴「本日はいつにも増して炎上覚悟でお送りしております」
上「あたしのせいでね。てか、覚悟って言うか本当、間違ってたらごめんなさいって話だよ。寧ろ誰か指摘してくれよ、訂正して謝罪するよ」
柴「はい。そんな、今までになかった着眼点と、意見を知った上で上崎さんはどう思ったんでしょうか?」
上「さっき言ったように、このラジオを聞いたときあたしは驚いてなるほどなーと思った。確かにそうだ、と思った。思って、いろいろ考えて、冷静になってからもっかい考えて……知ったこっちゃねー! と思ったよ」
柴「また乱暴な」
上「まあちょっと乱暴に言い過ぎたけど。でもさ……それこそ、これは個人個人によって考え方が違うと思うんだけどさあ」
柴「世の中そういうもんばっかですよ」
上「制度って、もっと大きい法律って、そういう細かいところまでを慮るものじゃないと思うんだよね」
柴「おお。なんていうか、若新さんの考え方とは真逆に近いですね?」
上「そうなる。うーん、上手く言えるかなあ……人の生活や感情があるから制度ができるんじゃなくて、制度を受けて人の生活が、感情の動きが生まれるというか、さ」
柴「ふむふむ」
上「夫婦別姓にしたいんですか? うーん、まあいいですよ。けど今そうすることに伴うゴタゴタは自分たちで何とかしてね! って言うのが国の在り方であり、自由の在り方だと思うのよね」
柴「そこまでルールで縛る必要はない、と」
上「だってきっと、どっちの考え方も無くならないんだよ。同姓にしたほうが家族の一体感が出るって人も絶対に居続けるし、別姓のままのほうが手間もかからないしデメリットも無いじゃんって思う人もいる。そして、多分どっちも間違ってない。間違ってないなら縛る必要なくない?」
柴「今の流れで絶対夫婦別姓制度にしたらしたで、数百年後には夫婦同姓を主張するデモが起きそうですね」
上「まあそのころ日本があるのかは知らないけども、あたしもそう思うよ。だってどっちも正解なんだもん、どっちも認めるのが自由ってもんだよ。そして自由であるためには、すべき苦労もあるんだよ」
柴「上崎さんは自由を重要視しているんですね」
上「そう。自由と、多様性かな。正解と間違いがある話なら別だけど、そうじゃないならどっちも認めるのが自由で、日本はそうあってほしいなと思う。それに伴って、恋人や家族と話し合うのは当人の責任でいい。周りの意見に流されるのは、それはそれで自由でしょ? 周りを気にしない自由も、周りに合わせる自由も、前提としてその人は持っているべきなんだよ」
柴「まあ、暫くは違和感あるでしょうけどねえ。日本人って何故か知らないですけど、友人と言えるほど親しい関係じゃない人のこととか、仕事でのつながりの人を名字で呼びませんか?」
上「確かに、そういう人が多いかも」
柴「そんな相手とスーパーで行き合って、相手が夫婦で買い物をしていた時に、あっ田中さんと、田中さんの奥さん……の、佐藤さん! こんにちは、そちらは息子さんですか? えーっと、どっちだ……? とかってなりそうじゃないですか」
上「すごいピンポイントな心配だね」
柴「絶対夫婦別姓制度なら、50年くらい後にはこれが当たり前になるんだろうなと思えますが、選択できるとなるとこのいつまでも違和感は消えないと思いますね。夫婦とのご挨拶ではまず同姓か、別姓かを探るところから始めましょうとかっていうマナー講座が始まりそうじゃないですか? 恐らくどっ地の場合も拘りを持って選択してるでしょうから、間違えちゃうと悲惨なことになりそうですし」
上「まー、それは確かに。選択できるようになると、今まではどうでもいいと思ってた人も考え抜いてどちらかを選ぶようになるからね。悩んだ分だけ拘りになる気がするよ」
柴「自由って、素晴らしいことだと思うけど、僕はいいことばかりじゃないと思っています。考え方の多様化はつまり、相手の地雷が何処に埋まってるのか分かりにくくなるってことですからね。僕みたいなコミュ障にとっては、より人付き合いを避けたくなる話なんですよ」
上「柴山さんはのコミュニケーション能力は置いておくとして、あたしはそれも踏まえた上で、それぞれが地雷を無くしていくことも含めてが考え方の多様化であり、自由の尊重になると思っているよ。相手に何を言われようとも、それはそれ、あたしはあたし。誰もがそう思えるようにならなきゃいけないだろうなって。だって、相手が何を思っているのも自由なんだから。相手の価値観で何かを言われても気にしなければいいだけなんだよ」
柴「それはそれでなんか、人と人とのつながりが希薄になっていく気がしますが」
上「加減が難しいよねー。ある程度は、自分と考えが似た人と一緒にいることで、解決すると思ってるんだけど」
柴「こんな風に、相反する意見や物の見方があり、それが多岐に渡るから、この手の制度改正の話は進みにくいんでしょうねえ」
上「うん。あとさー、これはあたしの知る範囲でのはなしではあるんだけど」
柴「はい」
上「現状特に問題が起こっていないから議論が進まないと思うんだよねー」
柴「ああ、それは僕も考えていました」
上「ある意味切ない話ではあるけども。実害がないってのはイコールで重要性が落ちちゃうのよね。この場合の実害ってのは、肉体的な話や金銭的な話、モノの話であって、精神的な話はしてないんだけど」
柴「例えば働き方改革とかは、進まなければ過労死者やブラック企業と呼ばれるものが消えないから、物質的な損失がある。そこまでは言わなくても、この変化によって生活が変わる人が大勢いるでしょう? けど、戸籍上の苗字が縛られなくなって、明確に生活が変化する人というのは、あまり多くない気がします」
上「どうでもいいとは言わない、けど、他のもっと優先すべきことに比べると……やっぱり、うん。どうでもいいと思ってしまうのかもしれない」
柴「四ツ谷サイダーさん的には納得のいかない結論に行きついてしまった気がしますが、ここでもうすぐお時間です」
上「最初に念押ししたけど、これはあくまで大した知識のない人間によるトークであり、結論なので! そんな考え方もあるんだなあくらいに思ってくれると嬉しいな!」
柴「こんな感じのふわふわした話を続けていきますので、今後もよろしくお願いいたします。それではまた次回!」
上「ばいなーらっ!」
(ED)
(曲)「番組テーマソング(access)」
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