ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第五回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

上「さあ、今週もはじまりました『ふわふわラジオ』。第五回のMCはわたくし、上崎茜(CV.茜屋日海夏)と」

柴「柴山蒼汰」

上「でお送りいたします」

柴「上崎さん、なんか今日は落ち着いてますね」

上「ふふふ、でしょう? わたくしはほんとは落ち着いた女だったのですわよ」

柴「全部がおかしい」

上「だよね。やめた! さあ今週も頑張っていきましょー!」

 

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「秋田音頭(秋田県民謡)」

 

(無言)

柴「今日は一風変わったリクエスト曲でしたね」

上「このラジオのリスナーはやべえ奴しかいないんか?」

柴「やばいですか?」

上「週一回の放送で一曲しか流れないリクエストコーナーに秋田音頭出す発想がイカれてない?」

柴「民謡差別ですよ」

上「あっ、ぐ、そうなのかなあ……」

柴「まあそれは言い過ぎかもですが。あと、イカれてるとしたらこのリクエストを採用したスタッフサイドでしょうね。別に送ってくるのはどんな曲でも自由ですし」

上「たしかに。アニソン、J-POPの新しいやつに懐メロ、そこに民謡まで流したら、もうこのラジオに怖いものは無いね、どんな曲でもいいのでリクエストのお便り待ってまーす」

柴「お、宣伝ありがとうございます」

上「いっつも最後のほうになって、宣伝してないの忘れて慌てるからね。たまには早いうちにね」

柴「因みにコメントも来てます。P.N.プロデューサーさんから」

上「アイドルマスターから来た人かな?ありがとうございます」

柴「『上崎さん、柴山くん。元気してますか?』」

上「微妙に馴れ馴れしいね、いいけど」

柴「『私がいなくなっても面白いラジオで、正直毎週嫉妬しています』」

上「ん?なんか視点おかしくない?」

柴「いや僕もうわかっちゃいましたよ。『ふわふわラジオにはこれからもどこまでも羽ばたいてほしい。そのためには、色んな意見や要素を受け入れる度量が必要だと思うんです』」

上「否定はしないけど、いや、待って。この微妙にうざい言い草はまさか」

柴「『ですので今日はこの曲をリクエストします。どんなリクエストやお便りが来ても広い心で受け入れられる、そんな番組になっていってください。バイ、初代』」

上「初代P……なるほどね。うん……ありがとうございます、はい」

柴「はい。じゃ、次のトーク行きましょうか。多分触れないでおくのが一番効くと思うので」

上「しっ! それですらご褒美だよ!」

柴「ひどいイメージになってるなあ」

上「あ、じゃあさ。オープニング曲の話あんま無いなら、エンディング曲の話していい?」

柴「いいですけど、オープニングもうちょっと広げましょうよ。上崎さん秋田でしょ? 勿体ないじゃないですか」

上「何故バラすし」

柴「えっ駄目でした?」

上「いや、うーん……まあいいか。ラジオなんだし、いずれ自分で喋ってたでしょ」

柴「なんかすみません」

上「いえいえ。つっても、秋田の話って言われたらできなくはないけど、別に秋田音頭の話題は無いよ?」

柴「あんまり馴染み無いんですか? 県民でも」

上「おばあちゃんの世代とかであればわかんないけど、あたしはあんまりなあ。毎年のお祭りの時に演奏してたなーってくらい」

柴「いい話題じゃないですか。それでいきましょう」

上「それでいきましょうて」

柴「地域のお祭りってことですよね? 演奏?」

上「まあ、うん。と言ってもあたしはあんまり語れないんだよね」

柴「どうしてですか」

上「なんていうか……たしか、演奏だの踊りだのも神様に奉納するって意味がある祭りなんだけど、あたしが参加してたのはそういうちゃんとしたやつじゃないというかさ。こども神輿、っっつって伝わる?」

柴「全く分かりません」

上「まじか。えーと、大人も参加してしっかり演奏して、町のみんなで引っ張って人力で動かす山車じゃなくてね。トラックの荷台に神輿がついてて、子供をそれに乗せるのよ」

柴「トラック」

上「で、笛を吹ける人はおっきいとこじゃないといないから、ステレオから流れる音楽に合わせて太鼓だけどんどん叩くの。あと踊る」

柴「ステレオ」

上「午前中は一応山車を引っ張る人もいるんだけど、一日中だと大変だからね。午後は自走よ。公道を走って移動して、広場みたいなトコでだけ演奏すんの」

柴「自走するトラック……」

上「奉納の時なんてもう運転手以外誰も乗ってないわよ、夜だもん。夜は暗いからね、子供は帰らないと」

柴「なんというか、なんでそんなことになってるんです?」

上「田舎の闇だよ」

柴「いなかのやみ」

上「要は、山車ってのはそれぞれ町内ごとに運営しててね。基本的にはその町内の人だけで、お祭りのときは盛り上がるわけなんだよね。でも、山車を持ってない町内の子供たちが、お祭り楽しめないのは可哀想じゃん? だから大人たちが、大々的にやるのは無理だけど……って用意してくれてるのがこのこども神輿なんだよね」

柴「はー。そういうことですか。どっちかというと闇というより光案件では?」

上「まーね。最も、今冷静になって考えれば、だけど。当時はもっと卑屈だったなあ」

柴「なんでですか?」

上「学校の友達には、おっきい山車で演奏してる人もいたりしてさー。夜の部を親と見に行った時でも、大人と一緒になって盛り上がってるその子を見るとかっこよくて。すると思春期の私、自分がやってるお祭りが凄く陳腐に感じて、恥ずかしくなっちゃったんだな」

柴「規模の違いはどうしようもないですからねえ」

上「何も言わずにある年ぱったりやめちゃったけど、今ではあの時の大人たちに感謝してるよ。自分のでもない子供たちのために、頑張ってくれてたんだよねえ」

柴「偏見かもしれないですけど、田舎ってそういうとこありますよね。なんていうか、地域ぐるみで育てていく的な」

上「実際あると思うよ、最近は減ってきてるけど」

柴「あれって、仙台と東京にしか住んだことない都会っ子にはよく分からないんですけど、どうなんですか? 居心地いいものですか?」

上「お、田舎いじめ開始かー? CM開けたら話します、GO!」

 

(CM)

 

 

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