ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第二十三回ふわふわラジオ(2)

 

「そんなにゲームで勝ちを拾いたいならプロゲーマーになったらいいんじゃない? 仕事も兼ねられて一石二鳥じゃん」

「なりませんよ。勝てませんもん」

「それは努力次第では?」

「努力でプレイヤースキルの差がどうにもならないから、時間さえかければ勝てるゲームやってんでしょうが!」

「考え得る限りの最悪に近い逆ギレを見ている」

「しかも、努力が一番嫌いな人種であるところの我々ゲーマーが! どうして好き好んでプロの要る世界に飛び込んでいくと思うんです!? プロなら絶対選ばないようなゲームバランスぶっ壊れてる世界で最強キャラだけ確保しつつ圧倒的プレイ時間で差をつけるんですよ。分かんないかなあ」

「ゲーマーってクソだなということはよく分かったわ」

「まあ、大分大げさに言ってますけどね。極論するとそんな感じ、なんて人はまずまずいると思いますよ」

「でも、努力が一番嫌いとか言うし、実際それはそうなんだろうけどさ。極まったゲーマほど、ドロップ率のバカ低いフィールド何百周とかって苦行に真摯に取り組むわよね」

「え、ああ、まあそうですね。確かに」

「やっぱさ、楽しい努力かどうか、ってことじゃない? 確かに辛く、苦しいけれどもさ、隙でやってるゲームだからちょっと楽しいじゃん。その道一直線のスポーツ選手とかもさ、練習は辛くて、あまりに苦しくても、結局は好きで始めたもので嫌いになりきれない。そういう努力は、そりゃ嫌ではあるけど、やめないのかなって」

「それは、あるでしょうね。周回中、めんどくさいやめたいだの言いながらも、結局やめれないのがゲームみたいなトコありますし。でも、仕事でマジで嫌な案件まかされた時みたいな、ひたすらな絶望ともやっぱり違うんですよね。終わった時にあー怠かったって笑顔で言う感じ」

「あー、その例えは分かりやすいね。本当に、終わってよかったやっと逃れられたっていう必死さが出てこない感じ。やれやれってなる感じが、ゲームや、好きなことで言う苦しさなのかもね」

ロックマンエグゼ5の100人斬りは必死さが残るタイプの苦行だったので二度とやらせないでください」

「ちいさいお友達に分かりにくい例えを出すな」

「さーて、今週のサザエさんはー?」

「え?」

「というわけでおたよりコーナーです」

「版権に気を使って?」

「今更でしょ」

「確かに」

「今週もちらほら届いてますよー」

「わーい、みんなありがとう。でもドシドシくれたらもっと喜ぶよ」

「うーん、がさごそ。これだ! PN『未来と書いてあすと読む!』さんからのおたよりです、ありがとうございますー」

中二病患者によくあるやつね」

「『上崎さん、柴山さん! こんばんはー』」

「はーい」

 

二人「「こんばんはー」」

 

「『私の地元はなかなかの限界市町村で、実家の近くがいいなと安易な気持ちで就職先を決めた私は日々周りとの感覚の違いに戸惑う日々を過ごしています』」

限界集落的な市町村ね、わかるわかる」

「別に集落以外は限界迎えそうにないってわけじゃないですもんね、現代社会」

「そうそう。結局上が有能かどうかと、住民の意識の高さによるものだからね。人口は大事だけど一番の問題ではないと言うか」

「続きを読みます。『先日、祖父を通して聞いた話です。かつては周辺の住民がよく利用していた名物スーパーが近くにあったのですが、これが数年前に廃業して今は空き家になっています。これを解体して近くに新しいお店を整備しよう、という話の中で突然、一部の老人たちが主張し始めたそうなのです。地域にとって大事な財産だ、と。古い建物を修復して、市でお金を出して保存して欲しい、と』」

「うわー」

「『私のまちは限界市町村です。言葉を略さずに言えば、破滅寸前なのを理解していない老人どもがいなくなる前に“限界”を迎えて未来が無くなってしまいそうな“市町村”です。上崎さんが秋田出身だと聞いたので、似たような境遇かもしれないと思いメールしました』だそうです」

「略さないバージョンが分かりみすぎる。住民、危機感が足りないわよね」

「危機感ですか」

「そー。大学生の頃の私みたいにさ、一回外に出ると分かることなのよ。いや、正確には、外の友人が増えると分かることなのよ。全国47都道府県市区町村はいくつだっけ? の中から、強く地元にとは言えないよなって」

「地元に、とは?」

「呼ぶ。遊びに来てもらう。しょっちゅう来てもらう。住んでもらう。まあ度合いは置いといてさ、限られたお金と時間の中で、あたしに会えるってのと他の魅力アピールだけを武器に、おいでって言えるか? って話なのよ。魅力はある。名産品はある。やさしい人達もいる。それはそう、で? それって他にはないものなんですか? ってさ。日本中の中から交通の便悪いの我慢して是非うちにって言える状況になってますか? って考えて初めて、あ。ヤバいなって思うのよね」

「それは、そうかもですね。僕も東京に出てきてから知った仙台は多いですし、逆に目についた駄目なところもあった気がします」

「いいところだ、魅力的だって言ったって、結局住民が減れば税収は減るし、収入が減れば破綻するのよまちってもんは。それを楽観的に考えてるなーってのは、あたしも地元にいてよく感じる。別に、外に出たあたしが偉いわけじゃないのよ? 色んな考えがありつつもずっと地元を守ってる人たちこそが凄いとは思う。けど、ちょーっと意識を変える必要はあるかなってね」

「さて、おたよりにあった話ですけど」

「あ、待って。長くなりそうだからCM挟んじゃっとこうぜ」

 

(CM)

 

 

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第二十三回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「メリークリスマス! MCの上崎茜(CV.長妻樹里)ですっ」

「一週間早いですよ、ついでに放送予定ズレたせいでクリスマスに放送はありませんし。あ、MCの柴山蒼汰です」

「それよ、それ。なんで先週放送なかったの? あたし、収録向かおうとしてたら今週お休みでーすって言われたんだけど。もうちょい早く連絡寄こせや」

「スタッフの休暇申請が相次いで番組が成り立たなかったからじゃないですかね」

「なんで?」

「かく言う僕も休暇申請出してた一人ですからね」

「だからなんで?」

「理由は一体何故なのか? 全ての答えはこの『ふわふわラジオ』第23回放送で明かされるのです。さあ、始めましょう!」

「あたしの号令がー!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「色彩(坂本真綾)」

 

「はい察した」

「そんなわけで、PN『サンタムを継ぐ者』さんからのリクエストでした。ありがとうございます」

「CMで何度か聞いたやつだね」

「まあでも、第二部なってから曲変わってる筈ですから、この曲に懐かしみを覚えない世代の人も増えてきてるんじゃないですか?」

「そうかもしれないわね。時代の流れは速いものよ……まーあたし初日勢じゃないから適当にしゃべってるけど」

「さて、おたよりの内容は、と。『上崎さん、柴山さん! 先週は放送お休みしちゃってごめんなさい!』」

「内部犯!?」

「犯ってなんですか、犯って。別に関係者がおたより送ってくるのは悪いことじゃないですよ」

「いやまーそーだけどさ」

「まあ別にいいんですけどね、どうでも」

「どうでも」

「『どうしても……どうしても、仕事を休んででもやらなければいけないことがあったんです!』」

「いやまー、察したから言わなくてもいいよ。うんうん、社会人にもそういうことあるよね。寧ろ有給休暇の存在する社会人にしかできないことでもあるし、つまりは何も恥じることはないということだよね! うん」

「『どうしても、ソシャゲのボックスイベを周回しなければならなかったんです!』」

「恥じろぉー! 分かってたけど少しは己を恥じろよお、廃人どもめー!」

「あらまあ、なんて暴言」

「いやお前もそっち側だろ知ってるんだからな!? というか最初にさらっと自分も休み出してたっつったわよね! 何!? ここのスタッフみんなそうなの!?」

「そうですよ」

「そうなのか」

「そうだからこそ、こんな番組が許されているわけですね」

「そっか、じゃいっか」

「というか上崎さんもゲーマーなんだから分かるでしょ? 割と」

「いや、うーん。やりたい気持ちは確かに、無いわけじゃないけど。あたしの場合気分で行動するからわざわざ休んでもどうせやり込めないのよね。面倒臭い、飽きたって思ったら周回辞めちゃう」

「ああ、まあ普通はそうですよね。なんか僕らがおかしいだけな気がしてきました」

「その通りだよ。普通ゲームのためだけに会社休んだりする? するわ普通に。うん、するね」

「完全自己完結型問答!?」

「いやあたしもしてたわ。モンハンやポケモンの発売日は同僚とけん制し合いながら休暇届出してたわ。そんなものよね」

「そんなものですね。ゲームするために働いてるので」

「断言しちゃうかー。一応我々客商売というか、リスナーさんがいるからやってけてるのよ? 評判、イメージ、大事よ?」

「別にこうして喋ってるのが嫌いとかってことは勿論無いですよ。多分、仕事として、会社に勤めていなくても、個人で配信したりとか何かしらで発信はしていると思います。けど、あくまでそれらは全てゲームするためであるので、そっちで大事な用事があればガンガン優先しますね」

「そーね。それは、あたしも否定できないかもしんないわ」

「というか、ちょっと聞いてみたかったんですけど」

「あたしにか」

「はい。上崎さんみたいな人って、何が楽しくてゲームしてるんですか?」

「柴山さんって、詳しく言えば誤解することもないまともな質問内容の時でも敢えて喧嘩売ってくるよね」

「げ、ばれてた」

「そらばれるわ」

「じゃあ普通に聞きますね。特にソシャゲーなんかでは、ある程度の周回ややり込みが無いと楽しめないイベントや、コンテンツがあるのってもうかなり一般的じゃないですか。僕はそれに加えてやっぱり、対人戦でそれなりに勝てないとなんか虚しくなってきちゃうんですよ。なので、結構別の文化の人種というか、エンジョイ勢というものがよく分からなくて色々聞いてみたかったんですよね」

「楽屋で話す類の軽い話題過ぎるけど……まー、そういう話を公共の電波上でするのがあたしたちの仕事か」

「うちのラジオは割と無駄話が過ぎますけどね」

「うーん。普通に、ストーリー読んで、キャラクターGETして、可愛いなって思って終わりじゃない?」

「成る程。ゲーム性というよりは、アニメや漫画の延長の部分で楽しむ感じ、ですかね」

「そうとも言える、のかな? 勿論ゲーム部分もちゃんと遊んでるよ。クエストやって、バトルやって」

「うう、なんか、まっとうに楽しんでる感じ、伝わってきますね」

「いや、まっとうにって。みんなそんなもんじゃないの? 廃人の皆さんはそれにプラスして何度も周回作業が入るだけで」

「そうとも限りませんよ。例えば、プロ廃人ともなればまずストーリーは全スキップですからね」

「は?」

「まあ僕はアマチュアなので基本的にはちゃんと読んでますが。冷静に、考えてください。敵は同じ人間、つまり24時間×イベント日数という与えられた時間は全員同じなんです。その状況で、他人と差をつけるために必要なのは何か? 睡眠時間を削る、仕事の量を減らす、そしてゲーム内での周回以外の時間を減らす、です。我々はゲームを楽しみたいのではありません。ゲームで勝ちたいのです。そして数多の負けゲーマーを煽りたい! マウントを取りたい! それこそがゲーマー、社会の最底辺でゴミ山のてっぺんに登る者!」

「それこそなんのためにゲームやってんのかって本気で思った」

「そんな人間から見ると上崎さん達の遊び方は極めて健全に見えるわけですねえ」

 

(CM)

 

 

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第二十二回ふわふわラジオ(3)

 

「今週もうずっとアイドルトークでもいい?」

「まあ、元々何の番組か製作スタッフも誰一人として分かってないとこありますから。何か話したいことあるんですか?」

「さっきの22/7の話でさー」

「特定の一グループに関するアイドルトークじゃないですか。22/7ラジオかよ」

「これは寧ろあたしたちが22/7なまである、いや無いけど。それでさ、なんちゃら素数さんはセンター批判みたいなんしてたけど、じゃあ他に誰がセンターだったらよかったのかな? っていうさ」

素数を愛する男さんですよ。上崎さんいっつもペンネームちゃんと覚えるのに今週全然ですね」

素数って言葉のインパクトが強すぎて」

「そうですかね」

「で、センターよ。今更だけど、柴山さんも22/7は分かるんでしょ?」

「本当に今更ですね。アニメは見てないですけど、バラエティーのほうは見てましたよ。YouTubeもいくつか」

「よしよし。あ、聞いててわかんないリスナーさんはぜひ、後で見てきてくださいね。計算中の1st seasonはアマプラとかで見れたはず」

「運営の手の物ですか?」

「よせやい。ただの三四郎ファンだよ」

「話ころっころ変わってるんで戻しますけど、うーん、たしかにみうちゃんはセンターじゃなくてもというか、逆に後ろに隠れてるくらいのほうがコアなファンがついたかもって気はしますね」

「勿論、センターの今もなんというか、パフォーマンスの時のギャップが大変素敵なんだけどね。普段はみんなのフォローに助けられてる子が、みんなを引っ張ってってる! すげー! みたいな」

「俺だけが魅力を分かってるんだぜ、って優越感もファンには大きいんですよ。なんかそんな話昔もした気がするんですけど」

「マイナーアイドル推しのあたしの弟の話した時だね」

「そうでしたそうでした。うーん、あと今回卒業するメンバーについては、あんまり想像できないかもです」

「都ちゃんとジュンちゃんのよさはなんてーか、自由さによる感じだからねー。センターとしての重荷というか、そういうので良さが死んじゃいそうな感じはある。つぼはつぼだよ」

「なんなんでしょうね。つぼの存在感は」

「朝の情報番組で若者代表として出るコメンテーター枠というか、家庭教師ヒットマンREBORN! の雲雀恭弥枠というか」

「はい?」

「人とはちょっと違う目線みたいな?」

「うーん、分かるようなわからないような。でもセンターとは違いますか」

「リーダーも、二番手の位置にいるからこその回し役みたいなもんだったからね」

「東条ちゃんもつぼに近かったですかね?」

「そうかもなー。普段は元気キャラの印象が強いんだけど、突然ぼそっと確信をつくの好きすぎるのよね」

「あ。もしかしてですけど、これ、立川ちゃんでは?」

「あーそれだ。解決したわ」

「よし」

「残りのメンバーもそれぞれセンター張れそうだけど、みうちゃんと同じで、グループの色が変わりそうな気がするのよね。その点立川ちゃんって、唯一、どの立場にいてもどんな状況にあっても立川ちゃんでいられて且つ、周りに影響を及ぼしすぎないというか」

「彼女は彼女で完結出来てる感ありますよね。なんか褒めてるように聞こえないんですけど大丈夫ですか」

「超褒めてるじゃないの。そもそもの話をすれば、今のセンターを差し置いて他に誰がって話してる時点で失礼だから大丈夫よ。大丈夫じゃないのでは?」

「よし。やめときますか」

「そーね。まーなんというか、人間ってさ。向き不向きがあるじゃない? でも意外と、向いてないと思ってたことで意外な良さが発揮されたりするもんだって言う感じの話ってことで」

「というか、そもそもですけど。アイドル=センターが固定みたいなイメージって、いつからなんでしょうかね?」

「うーん。確かに、今も別にそうじゃないグループなんざいっぱいいるのにね。ジャニーズとかも、嵐なんかが曲ごとに違ったし、センターですっ! って主張が強くなかったし。そもそも奇数人数でのパフォーマンスに限らないしね」

「いや、僕もあまりアイドルに詳しいわけじゃないんですけどね? アイドルのイメージなんてモーニング娘。とか、あ、AKBでしょうか」

「その可能性はあるなー。人気投票制!」

「1位がセンターとか売りになってましたもんね、たしか」

「あとアニメのアイドルものなんかもセンターを置く印象があるなあ。センターってか、主人公ってか、メインキャラってか。一人だけイラスト載るときとかに選びやすいようになんだろうけどね」

「それこそ素数を愛する男さんのやってるゲーム『IDORY PRIDE』なんかは、2グループのセンターがW主人公みたいな感じだったり、これも多様化していますけどね」

「ま、所詮は売り出す側の戦略の話でさ。どうあったって結局は、ファン一人一人に推しがいて、どのポジションにいたってそのファンにとっては推しが真ん中というか推ししか目に入らないんだから考えるまでもないとも思うけどね」

「おお、たしかに、言われてみればそんな気がします」

「あたし箱推ししかしたことないから分かんないけど」

「ええ」

「広く浅く派のあたしにとって単推しはなかなかリスクが高いのよ、沼にはまって出られなくなるからね。箱推しなら、こう、我慢が利く」

「そういうものですか」

「間違ってもガチ恋勢にならないから」

ガチ恋勢。やっぱりいるんでしょうか」

「え? いや、いるでしょ。そもそもアイドルを単推しする人なんてガチ恋勢ばっかじゃないの?」

「怒られますよその偏見」

「というか、狭く深く派の柴山さんもわかる話かと思ってたわ」

「僕の推しは、大体その、次元が一つ違うので」

「あ、はい。そーね」

「というか上崎さんの理論で行くとVtuberとかのファン全員意味不明になっちゃうじゃないですか。中身とガワが違うんですから」

「そーよ。割と理解できてない」

「うん、えー、誰か誤解といてくれるといいですね」

「おたより募集しとこーね。アイドルでもなんでも、その人単体が推しだけどガチ恋じゃないなって人! どういう感覚なのか教えてけろっ!」

「いま僕久しぶりに炎上の心配してますよ」

「だーいじょうぶでしょ。あ、時間だ」

「ですね。今週はアイドルの話ばっかりでしたが、なんというか雑食なラジオです。皆さんからのトークテーマなども、おたより募集しています」

「ぜひぜひ! それではまた次回、ばいなーら!」

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(fhana)」

 

 

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第二十二回ふわふわラジオ(2)

 

「アイドルの冠バラエティーって結局MCにいる芸人との相性で成否が決まるよねって話です」

「まー他のアイドル番組見てないからなんとも言えないけどね」

「逆にMC芸人にとっても、素人上がりみたいなアイドル達をどう使って面白くするかの実力が問われる難しい仕事なのではないでしょうか」

「やっぱ三四郎ってすげーわ」

「結論そこですね。さて、ところで曲リクエストのおたより読んでないんですが」

「アツくなりすぎたね、反省、反省」

「えー、今日の曲はPN『素数を愛する男』さんからのリクエストです、ありがとうございます」

「数学者とかだったらすごいんだけど、絶対22/7に絡めた名前にしようとしか考えてない人間じゃん?」

「しっ! 多分そうですけど口には出さないのっ! 失礼でしょ!」

「あっ、いっけね!! てへぺろ!」

「死語では?」

「早く読め」

「はい。というわけでね」

「はい」

「『上崎さん、柴山さん! こんばんはー』」

 

二人「「こんばんはー」」

 

「『夜な夜な泣きながら22/7卒業メンバーのyoutubeを徘徊している僕がやってきましたよ』」

「こっわ」

「『IDOLY PRIDEをプレイしながら』」

「それ確かアイドル物のゲームじゃ?」

「はい。アニメとかもやってましたね」

「この浮気者ぉ!」

「『違うんです、僕は、みんな等しく好きなんだ!』」

「それを浮気者というのでは!?」

「『まあそんなわけで22/7より曲をリクエストします。僕としては最新曲の覚醒や、彼女たちに出会った頃に発売された理解者なんかが思い入れ深いのですが、22/7は歌唱メンバーが毎回違うので……採用チャンスに捻じ込むならこれしかない、と思いました』」

「大丈夫だよ。リクエストなんてほどんど来てないから、捻じ込むとか考えんでも結構採用されるよ。多分」

「えーっと、ああ。初期メンバーの11人なんですね? この曲」

「初期メンバーって言葉がどの時を指すのかも怪しいグループなわけだけど……まあそうね。最初2曲くらいの頃は8人分しかキャラクターがいなかったから、3人は半デビューみたいな状況でね。漸く11人でのシングルを出せたこの曲のすぐ後には、ニコルちゃんが、その、新キャラになったから。確かに、初期メンバーの曲と言ったらこれか」

「すごく今更ですけども、本当に詳しいですね」

「そんな、まあまあよ」

柴「そしてその謎の謙遜も何なんです? えー、『因みに僕の推しは滝川みうちゃんです。西條さんも同様に、同様にと言うか、他のメンバー以上にあそこはキャラと声優が一心同体ですよね。そういうとこも好きです』」

「計算中でも検算中でもみうちゃんは西條ちゃんだし西條ちゃんはみうちゃんよね」

「因みに計算中がバーチャルアイドルとしての番組で、検算中が中の人達としての番組です」

「そう、か。あたしの中では常識だったけど、リスナーさんにとってはそうとは限らないのか」

「自分の趣味なんかを語るうえでは気を付けていかないといけない部分ですよね」

「特にこのラジオは、濃ゆいオタクばっかおたより寄越すからなー感覚麻痺してたわ」

「うーん否定はし辛い偏見」

「まーでもそのまんま生きていっちゃうとTPOを守れないオタクになってっちゃうからね、気を付けないとね」

「TPOを守るってとこが上崎さんのウリですもんね」

「うん」

「で、続きを読みますけども」

「あ、まだ終わってなかったんだ。ごめん」

「そんな、とっとと終われよ長いんだよみたいな言い方」

「してないよ」

「はい。『それで、好きだからこそ思うんですけどね。欅坂の件と言い、秋元さんって、突出した個性をセンターにおいて話題を作りながら扱いきれなくなって放置するのが趣味なんでしょうかね?』」

「やめなさい。ほんとにやめなさい」

「『学習しないのでしょうか』」

「やめろ!」

「はい」

「いいかなんちゃら素数さん。あのね、世の中にはね、逆らっちゃいけない相手っていうのがいるのよ。中でも逆らっちゃいけない代表格でしょあの人は、それ以上はいけないぜ」

「代表格とまでですか」

「だってそーでしょ。どんだけ生きとんねんっつー話よほんとに」

「その言い草のほうが失礼では?」

「いや勿論、生きてるっつーのは業界で、というか界隈で、というかね? それこそ芸人で言う明石家さんみたいなさー、レジェンド枠でしょ? もうさ」

「でも本当にすごいですよね。ヒットメーカーというか」

「ああいうプロデュース業でずっとい続けるってのはすごいわよね。作品作りとはまた違ってさ、後から評価されるみたいな世界じゃないから、常に最先端を走って流行を作ってる側なわけでしょ?」

「なんか、あれですね。はるか昔の成功体験を引きずってどや顔してる老人どもに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいですよね」

「おおう、なんか言い方がおっかないわね。でも、たしかに。その成功体験に新たな何かを加えて、常にアップデートし続けてる方ってことだろうからね」

「で、グループのセンターの話に戻るわけですけど」

「戻っちゃうかー。いや、でもさ。平手ちゃんの時も、みうちゃんに関しても、別に失敗してるわけではないからねえ」

「そうですよね。そこがちょっと、素数を愛する男さんとは見解が違うかもしれません」

「結局アイドルグループとしての成功と言ったら、どれだけ知ってもらうかと、下世話だけどそっからどれだけ稼げるか、になっていくわけだからね。突出した個性が他を引っ張る形だろうと、その人のグループだのって言われても売れれば成功なわけだから」

「そして、扱いきれなくなって放置と言いますけど、それもちょっと、いや言いたいことは分かりますけどね。グループとして売れたらあとはそこからは個人次第みたいなとこもありますから」

「まあ欅は本当に中心に負担が行き過ぎてたみたいなイメージは確かにあるけどねー。詳しくないから、あくまでイメージだけどさ」

「その点みうちゃんはなんというか、ちょっと負担かけたらすぐ潰れてしまいそうな感じがするというか、僕らが心配する前からすっごい支えがしっかりしてますよね」

「これ私たちは褒めてるし、すっごいいい印象で喋ってるけどどう聞こえてんのかしら? 心配なってきた」

「応援の仕方は人それぞれですから許されるといいのですが。番組は誹謗中傷撲滅を願っています」

 

(CM)

 

 

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第二十二回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

上「はいこんばんはー。MCの上崎茜(CV.田中美海)でーす」

柴「こんばんは。MCの柴山蒼汰です」

上「雪降って来たね!」

柴「こっちはまだです。やっぱり東北は早いですね」

上「早いっていうか、もう、12月になるもんね。そんなもんよ」

柴「いやいや、早いですよ。ドラマとかで見るでしょ? 東京のクリスマスとか粉雪が舞えばそれでホワイトクリスマスですよ。片や秋田は?」

上「朝から雪かき必要なくらいじゃないとホワイトクリスマスなんて言わないでしょ! 寒さを理由にリア充どもが引っついて歩く光景、はーもうイライラしてきたわ、ぶっカマしていくわよ『ふわふわラジオ』! 22回目でーす、ツーツー!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「何もしてあげられない(22/7)」

 

上「壊滅したグループじゃん」

柴「なんでそういうことだけ知ってるんですか? 声優とか別に詳しくないくせに」

上「SNSでの繋がりは偉大だよ? 色んな情報が入ってくるからね。声優好きの知り合いだっているさー」

柴「あー、なるほど」

上「あと三四郎が好きだから一時期計算中見てたよ」

柴「普通にファンじゃないですか」

上「やだなー、そんなことないよ」

柴「やだなて」

上「都ちゃん、ジュンちゃん、つぼが特に推しだったからもう一生見れないなと思ってる程度だよー」

柴「推しがいる時点で!」

上「勿論みんな好きだけれどもね。リーダーはいつ戻ってくるんでしょうか……ニコルちゃんの復帰、復帰? 復帰でいいよね。あの時は早かった気がしたんだけどなー」

柴「しかも割と古参ファンじゃないですか。どの口でやだなとか言ってたのやら」

上「いやほら、たしかリーダーの卒業発表したのが検算中の最中か直後じゃなかったっけ? その辺りで見るのやめちゃっててさー。推しは先述のメンバーだったけど、リーダー第三のMCみたいな独自の立ち位置を確立してたからね。ちょっと、うーん、悲しかったな」

柴「上崎さん……わかります。三人目の三四郎みたいなとこありましたよね」

上「そして推し三人とそれに並ぶ元気っ子東条ちゃんの卒業とな。残りのメンバーもあたしは好きだ、応援したいけれど、中身が変わったメンバーを等しく愛せる気が私にはしないのだよ」

柴「中身が変わったとか言うのやめてください」

上「ニコルちゃん(新)とやり取りする時って小宮さんどういう心境だったんだろうね。あたしはそれを聞いてみたいよ」

柴「一時期めっちゃギクシャクしてましたもんね」

上「寧ろ小宮さんがえこひいきし忘れててメンバーに突っ込まれるみたいな構図にすらなってたよね」

柴「しかし、中の人とキャラクターの関係性をどう見るのかっていうのは、今後バーチャルコンテンツを好きでいるにあたって考えざるを得ない問題かもしれません」

上「最近は掃いて捨てるくらいいるもんね、Vtuberとか」

柴「特になんか、最近の人たちはキャラクターに色んな設定もたせちゃいますからね。感情移入というか、応援めっちゃしやすいんですよ。ファンはつきやすくなるでしょうけど、その分中の人が変わるとNEW・中の人を受け入れがたいんじゃないかと思うんですが」

上「一人でやってる分には引退でいいんだけどね。キャラ同士の関係性を作って、縛った状態でガワだけ残されると新しい人はガッツリ設定残った状態で演じなきゃならなくなるからねえ」

柴「キズナアイでしたっけ? 中身が複数いるって公言してるのって」

上「たしかそう。あの子に関してはもう会社ぐるみでキャラを作ってる筈だから、公開されてる以外の人が演じてても何ら不思議じゃないけどね。声出す必要が無い現場とか怪しいもんよ」

柴「現場……バーチャル存在にとって現場ってのは何処を指すのかも微妙ですが、まあ分かります。22/7の話に戻ると、彼女たちはアイドルグループという関係性に縛られているから、キャラ自体の引退が簡単なことではないということですね」

上「その上、キャラ設定と演じてる本人のアドリブで初期に比べて大分キャラクター自体が変化してるからなあ。丸山ちゃんとかもう第一回計算中と完全に別人じゃん。優秀かつクールなふりをしてるポンコツってとこまで含めて一つのキャラクターじゃん。誰がアレを引き継げるのかって話よね」

柴「なんというか、絶妙ですよね。これは演じてるんだろうなってうバレバレの演技の中に抑えきれなかった素の部分が出ることで、どっちか分からない個性の部分が生まれ始めるって言う」

上「都ちゃんの滑り芸も狙ってできるものじゃないし、ジュンちゃんの絶妙な弄られキャラもきっと他の人には御しきれないし、何よりつぼの謎のカリスマ性とかどうやって再現するんだって話よ。あの子たちはもう、キャラクターでもあり、中の人でもあるのよ。実際ニコルちゃんも新旧どっちも好きだけどあくまで別の人じゃん?」

柴「それは本当にその通りなんですけど、それ言いだしたらバーチャル存在って何なんだろうって話ですよね」

上「そう、そういう話なのよ。あたし達はバーチャル存在とどうやって付き合っていけばいいのか? そのことを、22/7メンバーの卒業をきっかけに、考えるべき時を迎えているの。きっと、運営側も含めてね」

柴「思ったより壮大な話になったなあ」

上「ところで三四郎、いいわよね」

柴「いいですねえ。元々アメトークなんかで小宮ばかりがフィーチャーされましたけど、相田さんがすごくいいですよね。隠れないオラオラ系」

上「一見奇抜なツッコミ役と一見まともなボケ役って構図は最近では珍しくないけど、その走りとも言えるわよね。ただ、相田さんの魅力がオラついて下々の者にイキってる時に一番出るからさー。ベテランMCが回してる深夜バラエティーだとなかなか見えづらいのよね」

柴「完全な状態の三四郎を見れるのは22/7計算中だけということですね」

上「最高の三四郎を見るためにも続いてほしいわね」

 

(CM)

 

 

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第二十一回ふわふわラジオ(3)

柴「続いては、PN『社会人3年目』さんからのおたよりです。ありがとうございます」

上「新社会人ラジオかな」

柴「3年目って新社会人ですかね?」

上「あたしと同じ、と考えると違うかもしれん」

柴「えー『上崎さん、柴山さん! 聞いてくださいよ!』」

上「お、おう」

柴「『あ、こんばんは!』」

上「お、おう!」

柴「『実はぼく、コロナ禍でずっと行けてなかった、大学時代を過ごした場所に行ってきたんです! そしたら、びっくりしました! まさか仙台の商店街でシャッター街を見るとは!』」

上「え、マジで? あの大都会仙台で?」

柴「『まあぼくの地元ではよく見る、ずっと見る光景ではあるんですが。やっぱり大変な2年間だったんだなあと強く感じました。お二人の地元や、思い出の場所は大丈夫でしたか?』僕の地元は駄目でしたね」

上「たった今駄目だったのが確定したもんね」

柴「秋田はどうでした?」

上「よく見るずっと見る光景ですが?」

柴「なるほど」

上「というか、意外とね。コロナ、ど田舎の小さなお店のほうが影響少なかったんだと思うよ。実際地元はよく見るずっと見る光景、でもそのまんまあまり変化は無かったもん」

柴「ふむ?」

上「凄く悪い言い方になるけど、それがなくても上手く行ってなかったわけだからね。そして上手くいってなくても、死なずに生き残っていたわけだから。そーゆーの慣れっこだったんじゃないかなって」

柴「ああ、まあそれはあるでしょうね。高い回転率と収益を維持していたところほど、自粛要請とやらの影響をモロに受けたでしょう。実際、僕この前ちらっと仙台帰ったんですけど」

上「あ、そうだったんだ」

柴「確かに大きな、駅に近くの好立地ほどシャッターと化していましたけど、個人でやってる喫茶店とか知ってるのは一つも消えてなかったんですよね。なので上崎説、間違ってないと思いますよ」

上「神サ•季節?」

柴「は?」

上「ちょっと思いついただけ」

柴「はあ。そういえば、上崎さん大学はどこだったんでしたかね? 秋田県外だってのは聞いた気がするんですけど」

上「仙台だったよ」

柴「僕ら話題の範囲も生活の範囲も似すぎてますね……」

上「ダブルMC(持ちネタ被りまくり)ってのもまた、新しいよね」

柴「誰もやらなかった新しいことが良いものだとは限らないんですよ」

上「東北ラジオじゃん」

柴「変な属性がどんどんついていくなあ」

上「宣伝ツイートのハッシュタグ増やしていかなきゃ」

柴「絞っていかないと投稿内容が薄くなりますよ!」

上「何の話だっけ?」

柴「シャッター街?」

上「ああ。昔住んでたと言っても、今やただの一観光客として行く身としてはさ。馴染みの店が無くなってたりすると強い悲しみを覚えるのよね」

柴「寧ろ、昔住んでたからじゃないですか? もう行く機会が減ったからこそ強烈に思い出として残っていて、だからこそ無くなってしまうとショックが大きい」

上「十年、二十年空いてれば違うんだろうけどねー。例えば今行ったとして、3年の間での変化って、こう、目に付くから余計感傷的になるわよね」

柴「変わらぬ町並みの中に、思い出の店だけが無いんですよね。僕も言ってるだけで悲しくなってきました」

上「いつか後悔しないように、行けるときに行って、楽しめるときに楽しんでおこうみたいな話で終わりかな」

柴「次帰ったら一通り回ってみようと思います。行けるうちに、ね」

上「大学時代といえばさー。あたしはこう、あんまり成長できてないなーって気がするよ」

柴「どうしたんですか急に」

上「ほら、最初のほうで社会って場所のヤバさの話したじゃん?」

柴「社会のヤバさというか、正義を問う者さんの会社のヤバさというか」

上「いやいや、そこ以外も、全ての社会が割とヤバいと思うよ? けどさー、いつまでこんなこと言ってんだろーなとも、ちょっと思ったりさ」

柴「いつまで、ですか」

上「嫌だと言ったって、あたしはもう、親の金で学生やらせてもらってた頃には戻れないし。社会の中で生きていくしかなくて。守ってくれる人はいなくて。なのに、社会ってものがまるで自分の居場所じゃないかのように、いつまで叫んでるんだろうかコイツは。そう、自分に対して、思ったりさー」

柴「うーん、まあ、社会を構成するうちの一人なんだという自覚は、たしかに大事でしょうけど。でも、社会の中で生きるというのは、社会に合わせて自分を捻じ曲げていくのとは違うと思いますよ」

上「そうなのかな」

柴「今回は例が極端でしたけど、だって、じゃあ自分の居場所を守るために上崎さんは法を犯すんですか?」

上「それは、やっぱり違うと思うけど」

柴「けどじゃないですって。どうせ、それで守れる居場所は一時的なものですよ。いずれバレて、失うだけの場所です。あなたに見えている社会はきっと全体のほんの一部だし、あなたが思い、願っているような場所もきっとありますよ。社会ってきっと、一を聞いても十の予測すら出来ないような多様で不規則な存在ですって。だから、自分を捻じ曲げるんじゃなく、自分のまま生きられる社会を探しに行くくらいでいいはずです」

上「そのとおりだと思うけど、理想論すぎない?」

柴「ええ、超理想論です。でも、結局最初に戻りますよ、あなたが法を犯したり、バレたらそれこそ社会から除け者にされそうなそんなリスクを背負うくらいなら、厳しくても理想論を追うべきだと僕は思っています」

上「分かっちゃいるけど踏み出せない! 踏み出した先、どこに足を置けばいいか分からない! そんな時はまたおたよりをください。我々ふわふわラジオが一緒に悩みます」

柴「一緒に悩むんですか」

上「ふわふわした知識しかないから」

柴「しょうがないですね」

上「というか結局、正義を問う者さんに向けたトークしちゃってるわね。社会人3年目さんもおたよりありがとう!」

柴「法律ってワードのパワーが強すぎましたね」

上「そんなわけで今週もお時間です! おたよりバシバシ送ってくださいね!」

柴「聞いてくれてありがとうございました。また再来週お会いしましょう」

上「ばいなーら!」

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(T-Pistonz+KMC)」

 

 

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第二十一回ふわふわラジオ(2)

 

柴「どうしようもない現状は伝わってきましたが、じゃあどうすればいいかなっていう話ですけど」

上「逃げるしか無くない?」

柴「ええ」

上「そりゃ職場を、周りを変えるって方法はあるだろうさ。けど、その為には時間をかけて正義を問う者さんが根回しをしていって、味方を増やしたうえで上に掛け合って、納得させてから具体的な話し合いをしてってしなきゃいけない。それじゃあ時間がかかりすぎて、結局それまでに正義を問う者さんの手は悪事に染まっていそうだし?」

柴「正しいこと言って、そうだねって聞いてもらえるようならそもそも今みたいになってないでしょうしねえ」

上「そもそも法律違反だと分かってて言うことを聞けっていう奴が、ルールを整えたくらいで意見を翻すとは思えないし?」

柴「根っからの犯罪者なんじゃないかって感じですよね、もうその人」

上「そうじゃない人でも悪い方に染まっていくんだろうしねー。実際あたしもそうだもん」

柴「自首ですか?」

上「半分そう。勿論、法律違反をしたことはないけどさ。全ての行いをお天道様に顔向けできるような事だったとは断言できないかなって」

柴「例えば?」

上「それ言っちゃっていいと思う?」

柴「まあ、思わないですけど」

上「あたしの大嫌いな、暗黙の了解ってもんもけっこうあるしねー。業界の常識社会の非常識、みたいな」

柴「ありますよね。入社一年目は常識を塗り替える年と言っても過言ではないです」

上「若い意見も必要だからどんどん言ってね! と言いつつ否定から入る上司」

柴「求められてる意見かどうかが何より重要ですからね。それ意味ありますか?」

上「でも実際、自分が3年も経って新人に意見言われると、分かってねーなーってなるという。ね? 染まっちゃってるでしょ」

柴「ほんとですね。あの頃の上崎さんはもう、いない……」

上「柴山さんと会ったときにはもう変わってしまったあたしだったけどね」

柴「まあ、あれですね。正義を問う者さんの言うことは凄くわかります。ですが、全てが全て絶対の正解のもとで生きていけるわけでないのもまた、事実です。ですから、上崎さんの言うようにすぐに逃げ出せるわけでないのなら、妥協できるとこは妥協するのも一つの手ですね」

上「それこそ法律に違反するような、絶対にやっちゃ駄目なとこ以外はいい子でいるとかね」

柴「まあそれはそれで何言っても言うこと聞く奴だと思われて、ヤバい話振られそうですけどね」

上「駄目じゃん」

柴「そもそも、既に法律違反させられそうなんじゃないでしたっけ?」

上「駄目じゃん!」

柴「それはもう逃げるしかない」

上「不安だよねー。だって、自分のいた会社だけがそういうものだとは限らないんだもの。社会って全部、汚いものだと思ってしまうと、環境変えるのすら怖い。わかるよ」

柴「手に職持ってないと、どこも雇ってくれなくて行き倒れるんじゃないか。例え仕事を貰っても、今以上のブラックだったらどうしよう。その不安は僕もすごくあります」

上「お、柴山さん辞めるの?」

柴「お、じゃないですよ。お、じゃ。いや、すぐ辞める気はありませんけど、会社に忠誠を誓ってるわけじゃないですからね。常に別の道にも目を向けられるようにはしてますよ」

上「会社に忠誠を誓ってないと会社の番組で言う会社員こっわ」

柴「でも、どんなに不安でも、踏み出さなきゃいけない時もあると思います。だって今のままでも破滅するんでしょう? 100%死ぬ地獄より、5%で生き残れる場所を目指す方が賢いですよ、きっと」

上「柴山さんの想定シチュめちゃめちゃ追い込まれてるね」

柴「そんなもんでしょう。以前にも転職の恐怖って話した気がしますけど、我々みたいに技術も経験が少ない人間の転職なんざギャンブルですもん。こうでも思わないとやってられないです」

上「まー、あれだね。どんなに汚く見えても、行きにくく思えても、あたしたちが生きていくには社会の中でやっていくしかない。全部が地獄に見えたとしても、どの地獄がマシか見極めて飛び移るしかない、ってとこかな」

柴「今更ですけど僕ら信じられないほどネガティブですね。正義を問う者さんほど酷い目にあってるわけでもないのに」

上「多分、普通に社会くんに恩恵貰ってるし、利用させてもらってるんだけどね。それらは当たり前になって、不満だけが目についちゃうからしょうがないさ」

柴「僕もしょうがないと思いますけどすげえ嫌な奴なのは間違いないですね」

上「今更でしょ?」

 

(無言)

 

柴「よし。次のおたよりいきましょうか」

上「その前に、正義を問う者さん! 取り敢えず労基に駆け込むんだよ! お姉さんとの約束な!」

柴「労基への信頼が半端ないですね」

上「まーね。あたしは元労基女よ?」

柴「労基女?」

上「労基、に就職できないかと画策していた、女」

柴「ただの女じゃないですか」

上「これ労基が一番ブラックなのでは? と考えて受験しなかった女」

柴「無関係な女じゃないですか」

上「あーあー何もしなくても経営者が全員ライフ・ワーク・バランスに目覚めて全人類がのびのびと仕事できるようにならねーかなー! って思ってる、女」

柴「労基の仕事なくなったじゃないですか」

上「そうなったら受験するよ」

柴「よかった、いつもの働きたくない上崎さんですね。安心しました」

上「あーあー、何もしなくてもジャブジャブ金入ってきて誰一人不幸にならないです生きていけねーかなー! と思ってる、女!」

柴「止まらないのでCMでーす」

 

(CM)

 

 

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