ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第二十一回ふわふわラジオ(2)

 

柴「どうしようもない現状は伝わってきましたが、じゃあどうすればいいかなっていう話ですけど」

上「逃げるしか無くない?」

柴「ええ」

上「そりゃ職場を、周りを変えるって方法はあるだろうさ。けど、その為には時間をかけて正義を問う者さんが根回しをしていって、味方を増やしたうえで上に掛け合って、納得させてから具体的な話し合いをしてってしなきゃいけない。それじゃあ時間がかかりすぎて、結局それまでに正義を問う者さんの手は悪事に染まっていそうだし?」

柴「正しいこと言って、そうだねって聞いてもらえるようならそもそも今みたいになってないでしょうしねえ」

上「そもそも法律違反だと分かってて言うことを聞けっていう奴が、ルールを整えたくらいで意見を翻すとは思えないし?」

柴「根っからの犯罪者なんじゃないかって感じですよね、もうその人」

上「そうじゃない人でも悪い方に染まっていくんだろうしねー。実際あたしもそうだもん」

柴「自首ですか?」

上「半分そう。勿論、法律違反をしたことはないけどさ。全ての行いをお天道様に顔向けできるような事だったとは断言できないかなって」

柴「例えば?」

上「それ言っちゃっていいと思う?」

柴「まあ、思わないですけど」

上「あたしの大嫌いな、暗黙の了解ってもんもけっこうあるしねー。業界の常識社会の非常識、みたいな」

柴「ありますよね。入社一年目は常識を塗り替える年と言っても過言ではないです」

上「若い意見も必要だからどんどん言ってね! と言いつつ否定から入る上司」

柴「求められてる意見かどうかが何より重要ですからね。それ意味ありますか?」

上「でも実際、自分が3年も経って新人に意見言われると、分かってねーなーってなるという。ね? 染まっちゃってるでしょ」

柴「ほんとですね。あの頃の上崎さんはもう、いない……」

上「柴山さんと会ったときにはもう変わってしまったあたしだったけどね」

柴「まあ、あれですね。正義を問う者さんの言うことは凄くわかります。ですが、全てが全て絶対の正解のもとで生きていけるわけでないのもまた、事実です。ですから、上崎さんの言うようにすぐに逃げ出せるわけでないのなら、妥協できるとこは妥協するのも一つの手ですね」

上「それこそ法律に違反するような、絶対にやっちゃ駄目なとこ以外はいい子でいるとかね」

柴「まあそれはそれで何言っても言うこと聞く奴だと思われて、ヤバい話振られそうですけどね」

上「駄目じゃん」

柴「そもそも、既に法律違反させられそうなんじゃないでしたっけ?」

上「駄目じゃん!」

柴「それはもう逃げるしかない」

上「不安だよねー。だって、自分のいた会社だけがそういうものだとは限らないんだもの。社会って全部、汚いものだと思ってしまうと、環境変えるのすら怖い。わかるよ」

柴「手に職持ってないと、どこも雇ってくれなくて行き倒れるんじゃないか。例え仕事を貰っても、今以上のブラックだったらどうしよう。その不安は僕もすごくあります」

上「お、柴山さん辞めるの?」

柴「お、じゃないですよ。お、じゃ。いや、すぐ辞める気はありませんけど、会社に忠誠を誓ってるわけじゃないですからね。常に別の道にも目を向けられるようにはしてますよ」

上「会社に忠誠を誓ってないと会社の番組で言う会社員こっわ」

柴「でも、どんなに不安でも、踏み出さなきゃいけない時もあると思います。だって今のままでも破滅するんでしょう? 100%死ぬ地獄より、5%で生き残れる場所を目指す方が賢いですよ、きっと」

上「柴山さんの想定シチュめちゃめちゃ追い込まれてるね」

柴「そんなもんでしょう。以前にも転職の恐怖って話した気がしますけど、我々みたいに技術も経験が少ない人間の転職なんざギャンブルですもん。こうでも思わないとやってられないです」

上「まー、あれだね。どんなに汚く見えても、行きにくく思えても、あたしたちが生きていくには社会の中でやっていくしかない。全部が地獄に見えたとしても、どの地獄がマシか見極めて飛び移るしかない、ってとこかな」

柴「今更ですけど僕ら信じられないほどネガティブですね。正義を問う者さんほど酷い目にあってるわけでもないのに」

上「多分、普通に社会くんに恩恵貰ってるし、利用させてもらってるんだけどね。それらは当たり前になって、不満だけが目についちゃうからしょうがないさ」

柴「僕もしょうがないと思いますけどすげえ嫌な奴なのは間違いないですね」

上「今更でしょ?」

 

(無言)

 

柴「よし。次のおたよりいきましょうか」

上「その前に、正義を問う者さん! 取り敢えず労基に駆け込むんだよ! お姉さんとの約束な!」

柴「労基への信頼が半端ないですね」

上「まーね。あたしは元労基女よ?」

柴「労基女?」

上「労基、に就職できないかと画策していた、女」

柴「ただの女じゃないですか」

上「これ労基が一番ブラックなのでは? と考えて受験しなかった女」

柴「無関係な女じゃないですか」

上「あーあー何もしなくても経営者が全員ライフ・ワーク・バランスに目覚めて全人類がのびのびと仕事できるようにならねーかなー! って思ってる、女」

柴「労基の仕事なくなったじゃないですか」

上「そうなったら受験するよ」

柴「よかった、いつもの働きたくない上崎さんですね。安心しました」

上「あーあー、何もしなくてもジャブジャブ金入ってきて誰一人不幸にならないです生きていけねーかなー! と思ってる、女!」

柴「止まらないのでCMでーす」

 

(CM)

 

 

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