ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第十八回ふわふわラジオ(3)

 

「信頼かー」

「お、なんです?」

「いやさ。あたしのこの、他人を完全には信じられないって感じはさ。生まれたときからこうだったわけじゃないのよ」

「そりゃあ。ああ、なんかきっかけがあったって話ですね?」

「きっかけというか、変遷? 幼稚園生だとか小学生だとか、狭い世界でいたうちは、友達いっぱいいてさー。誰とでも物怖じせずに話せたし、多分、みんなの中心にいたって言えるくらいだったと思うの。同年代の子供もそうだし、大人相手でもがんがん行ってさー」

「怖いもの知らずって感じですね」

「そう。知るって怖いわね。中高の頃に、所謂女の嫌なとこってのが目に付くようになってさ。陰口とか、仲間外れとか。だから男友達とつるんでみたけど、そっちだって普通に言う人は言うじゃない?」

「そうですね」

「そうやって嫌いな人が増えていくと、数少ない仲良くなれた人に今度はあたしが愚痴ったりしてさ。あーなんか人間ってみんな怖いなーって思ったのは、このあたりからかなって」

「自分で嫌悪してたような奴と同じことしてしまった罪悪感ですか」

「それも勿論あるし、なんてーか、何気ないなって。その人にとっては何気ない行動とか、言動とか、あたしが嫌いだと思ってた人たちもそんな程度の感覚だったんだろうなって。そんな程度のことでも、人には嫌われることがあるんだなって」

「自分もそうなるかもしれない、と?」

「そー。別にさ、知りもしない奴にどう思われてもいいのよ。ネットで誹謗中傷されようが笑いながらレスバするし、ラジオのリスナーに文句言われるの、はちょっと悲しくはなるけど、まー多分切り替えられる。けど、あたしが大好きで、嫌われたくない人に嫌われるのは、耐えられないじゃん?」

「ラジオはリスナーと配信側で一緒に作っていくものとか言ってたのに切り替えられちゃうんですか」

「そんなん、そもそもが好きでいてくれるうちは共同制作の仲間だけど嫌われたら他人になるって話でしょーよ。あたしも、リスナーも、どっちかが合わないなって思ったら離れていって、また別の何かを見つけるの。それがたまたまあたしの、あたしたちの番組だから離れていく方がリスナー固定になってるだけでさ」

「まあ、そうですね。誰かと一緒にやるためのラジオではなくて、ラジオを一緒に作るための誰かとの繋がりですもんね」

「けど友人関係と、あと家族はそうもいかないでしょ。目的の為に集まってきた有志連合なわけじゃなくて、あたしとその人が一緒にいるのが前提で、じゃあ何すっかって話だもん。嫌われて離れていったら、そこで全部終わりなわけよ? 慎重にもなる」

「まあ、分かる気はしますよ。僕も、どんなに仲良くなっても、仕事の同僚と友達ってなんか違うなとは思っていましたから。寧ろしっくりきました」

「ま―そんなわけで。人間嫌な部分って結構あるなと思ったから、あんまり人間関係広げなくなったのと。友達に嫌われたくないなって思ったから、相手に対しても自分の行動に対しても、慎重っていうか、疑り深くなったのと。そんな感じだなー」

「僕らの世代はそうだったと思うんですけど、自分がやられて嫌なことは他人にはやるなって教えられませんでした?」

「あー、言われた言われた」

「僕ずっとあれ守っていたつもりだったんですよ。けど今って特に多様性の時代じゃないですか。するとですね、なんと、僕は別に嫌じゃないことが嫌な人がけっこういるんですよ!」

「時代の問題か? それ」

「いやまあ言い訳なんですけどね」

「まーでも、じゃあどないしたらえーねん! ってのは分かるよ。だからさ、信頼って結局、お互いを深く知らないとできないことだと思うんだよね」

「そうですね」

「時間をかけて、一緒に話したことで考え方を知り合って、何気ない日常生活から価値観をすり合わせて、一緒にはいなかった時間の話で気が合うかを測って。お互いに小刻みなテストをし合っていった末にあるのが信頼だと思うのよ」

「テストって言い方するとなんかすごい堅苦しい感じですけど、まあ、分かります」

「何が言いたいかというとね」

「はい」

マッチングアプリで交際相手を探すのは難しいのよ」

「はい?」

「時間の積み重ねがないのにどうやって信用しろって言うんだよ。顔は見えないながらもゲーム内で苦楽を共にしたオンゲー仲間とのオフ会とは話が違うんだっつの。アプリに入力された情報だけを頼りに気が合いますね! とか言っていきなり会うリスクを考えたことがあるんか? こちとらか弱い美人やぞ」

「か弱い……?」

「大体その情報欄、趣味だのなんだのに本音を入力するタイプかも分からんじゃろ? ちょっと見栄張るタイプだとか、卑屈なとこあるから気持ち上方修正して読んだ方がいいかなとか! そういうのを知る時間こそが本来必要なのよ! そこまで考えてマッチングしてくださいますかね!?」

「あー、もしかして後半ずっと、この展開に持ってく為に話展開してました?」

「してたよ!」

柴「なんかすごい力抜けました」

「何言ってんの、他人事じゃないでしょ? 時間は戻らないものなんだから、信頼関係を築いてきた人ってのは今更増えたりしないのよ。勿論、これから誰かと信頼を深めていくことはできるけど、お付き合いだのなんだのまで話が行くほどってなるとあたしら幾つよ?」

「人に寄るとは思いますが、28になって今からと思うと確かに少し焦りはあります」

「でしょ? それなのに、その時間の中でまあこの人なら信用できるかなって思えてた男にはもう相手がいる! あっちも! そっちも! ひとまず女同士で相談でもと思っても家族作ってて会えない! あたしは一人になっていく! どーすんのって話よ!」

「そういうめんどくさい感じだからみんなに置いてかれたんじゃないですか?」

「趣味欄にはブーメランの投擲が得意って書くのをおススメするわ」

柴「えっ、いや、僕はめんどくさくないじゃないですか。そういうのじゃないですよ、単純に、シンプルに友達が少なくて彼女ができないだけです!」

「そっか。ごめんね」

「泣きます」

「強く生きて」

「実際、上崎さん、結婚したいんですか? 大事な友達ですら全面的には信用できないってんなら、一番嫌われたくない家族を持つことはかなり大変になるでしょう」

「そりゃー勿論、不安はあるよ。でもさ、寂しいじゃん」

「寂しい、ですか」

「みんな家族持って、友達の中であたしの優先順位が下がって。いや、家族が上に来ることで相対的に、だね? 兎に角それで、少しずつ一人になってってさ。親もきっとあたしより早く死ぬし、そうなったら、寂しすぎるよ。だからあたしも家族を持ちたい」

「それがどれだけ大変でも? 常に気を使ってしまって、疑って、そんな自分が嫌になってしまうとしても?」

「そーだね。そもそもあたし、信頼できないってだけで、したくないわけじゃないもん。それこそ、それまでの付き合いよりもっともっと長い時間をかけて、信頼できるようにしていきたいな」

「そうですか」

「よし! いい感じにまとまったな!」

「寧ろ話題がとっ散らかってそのまま爆散した感じがするんですけど。まあ、時間ですし今日は終わりにしましょうか」

「おたより、お待ちしています! それではまた再来週、ばいなーら!」

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(22/7)」

 

 

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第十八回ふわふわラジオ(2)

 

「あの、言っておきますけど、あたしちゃんと友達いますからね。関係も良好ですからね。心配しないでね」

「はい。関係が良好ならよかったですね」

「余計なことばっか考えちゃうあたしに合わせてくれるからね。相手のおかげで良好な関係を保てているわけだね。言ってて申し訳なさに押し潰れそう」

「また余計なこと考えてますねえ。ほら、要は、ある程度合わせてでも良好な関係を保ちたいと思ってくれてるってことでしょう? それだけ得難い友人だと思ってくれてるんでしょうよ。きっと上崎さんも、その友人に貰っているのと同じくらい、相手に貢献できているんだと思いますよ?」

「そうだといーなあ」

「というかなんで、より友達少ないであろう僕が上崎さんを励ます構図になってるんですか? 寧ろ励まして?」

「あ、やっぱ少ないのね」

「それだけ深いですけどね! いや嘘! 多分元々は深い友人関係だったけど社会人になってからはそうでもないかもしれません!」

「正直じゃん。あー、ってことは大学の頃とかの友達か」

「そうですね。僕はあまり高校時代に友人が増えなかったので、中学の頃の地元の友人と大学に行ってからの友達。ほぼそれで全てですね」

「高校? そういえば、友達いないからバンド組めなかったんだっけ」

「違いますー! 方向性の違いから組めなかっただけですー!」

「はいはい。まー理由はどうあれ友達が増えなかったのね、その頃には」

「それ自体は事実だから言い返せない……」

「で、えーと、社会人になってからは会ってないの?」

「うーん、まあ今は感染症の影響で出歩けないってのもありますが」

「まー東京にいるとそうか」

「僕が東京なのと、友人たちがあんまり近くにいないんですよね。悔しいですが、僕は本当に考え方とかが上崎さんに近いので」

何が悔しいんだよ小一時間語らせてやろうか?」

「つるんでた友人たちも同じタイプが多くて。要するに、地元近くに帰っていった人たちなんですよね。友人」

「成程」

「寧ろほんの少しの勇気と無謀で東京に出てきた僕のほうが、仲間内では異質なので」

「そうなると確かに会いにくいわよね。感染症流行る前からも、わざわざ出向いたりしないと会えなかっただろーし」

「地元、と一言で言いますけど、あの、何故かガチ田舎が多いんですよね。それこそ秋田や、福井とか、あと三重だっけか? たしか全体的に新幹線で行きにくいんですよ」

「あれ、これ言ったことあったっけ」

「ん、なんでしょう?」

「あたしのとこ……あー土地バレしそうだなー、いっか」

「いいんですか」

「今更だしね。地元のおっちゃんと話してた時にさ、ここ……地元の市っていいとこだよな! 交通の便もいいし! って言われたんだよね」

「いいんですか?」

「うん、あたしも疑問に思ってさ。えーそうですか? 結構不便じゃって言ったらさ。おいおい空港まで1時間、飛行機で東京まで1時間だぞ! って言うんだよね」

「基準が飛行機かあ。いや、でも地方としては、あるだけマシですけどね」

「そんでその後、電車でも6時間あれば行くし! って言ったんだよね」

「電車」

「田舎民には新幹線も電車と同義よ」

「まあ、ええ、うーん」

「2時間、けど飛行機か。電車もある、けど6時間か。この、なんていうか、いや全然じゃん! とも言えないけどな感じ。こういう微妙な感覚の差異ってのをすげー感じたのよね」

「2時間って部分だけ聞くと確かにそんなもんかの範囲ではありますもんね。けど、そうですねいいですね! とも言いにくいというか」

「実際柴山さんも飛行機移動はあんましないでしょ?」

「そうですねえ。いや、僕が予定決めるのかなり遅い方だからっていうのもあるかもしれないですけど。意外と国内も飛行機移動頻繁に使っていく方もいるとは思いますよ」

「学生プラスアルファくらいのあたしらからしたらなー」

「確かに。一般的20代会社勤めからするとね」

「まーそんなわけで、ちょっと脱線させちゃったけど、新幹線の駅ある周辺とか以外は東京マンが気軽に遊び行ける場所でもないよねって話に賛同したかったわけよ」

「気軽、の程度にもよりますけどね。僕のこの話の場合、週末ちょっとご飯行くかーくらいの誘い方ができる範囲に、もうちょっと友達いてほしかったなーってのはあります」

「そっか、お酒飲まないんだっけ」

「僕はね。友達が飲んでる分には文句ないですよ」

「前に二人で、仕事飲みで酔った人の相手めんどくせえみたいな話で盛り上がった気がするけど?」

「そりゃ仕事仲間と友達は違うでしょう」

「勿論そうだけどさ。いや、それこそ仕事のつながりでも一緒になるような、その繋がりでできた友達とかいないの?」

「いないですね」

「即答かよ」

「ぎりぎりに出社して終業と同時に帰っていく人間が、友人になるほど人と歩み寄れると思います?」

「思わないし、よくそんなんで誰かと仕事できてるなとは思う」

「ゲームの時間削って仕事してんのに終業してから友達作りに咲いてる時間は流石に無いんですよ。かと言って仕事中は当然仕事でいっぱいいっぱいなので、仕事の話以上のコミュニケーション取れないですし」

「ゲームの時間がメインでそっから仕事で削られてるって思考なのね、わかるよ」

「分かるんですか!?」

「似てるって何度も言ってんじゃん」

「こんなダメ人間僕意外にもいたんだ、安心しました」

「は? おい」

「まあそれプラス、単純に同年代の同僚が少ないってのもありましたけどね。あまり規模の大きい会社ではないので」

「東京でそんなこと言ってたら秋田にいるあたしはどうしたらいいんだ。友達になれる人も恋人探しも絶望的になっちまうじゃねーか」

マッチングアプリしかなくないですか?」

「ずっと一緒で、仲のいい友達すら信頼できないあたしが? マッチングアプリで? 会ったこともない男と仲をつめて? 本気で言ってるの?」

「どうしようもないMCしかいないなあ」

 

(CM)

 

 

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第十八回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「どーもこんばんは。MCの上崎茜(CV.三澤紗千香)です」

「同じくMCの柴山蒼汰です」

「『ふわふわラジオ』 も18回目、隔週放送になって3回目。そろそろ慣れてきましたかね?」

「毎週のように同じこと言っていきそう」

「あたしの声を聞けない金曜日を嘆く声がここまで届いてきたからさー」

「どこの並行世界から来たんですか?」

「この世界ではあり得ないってか? はー! まーいいけどね! 取り敢えず第18回始めるよ!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「ニブンノイチ(BACK-ON)」

 

「PN『職人』さんからのリクエストでした。ありがとうございます」

「なんの職人なんだろうか」

ガンプラ職人でしょう」

「なんでそんな絶妙なとこチョイスするわけ?」

ガンプラを扱ったアニメの主題歌だからですよ」

「あっ、あたしの知識ガバだったか」

「知識ガバって」

「で?」

「はい。『上崎さん、柴山さん。こんばんは』」

 

二人「「こんばんはー」」

 

「『ガンダムビルドファイターズの主題歌、ニブンノイチをリクエストします。この作品は、全てのガンダムファンが好きであろうバトル展開と共に、モノ作りに対する情熱や思いも表れていたような気がして私は好きでした』」

「ほーん」

「『家具職人である私も、若き日の情熱を思い出しましたよ』、えっ」

「推理ガバじゃん」

「『まあ、どんなに真心を込めて作っても、私の作った家具は戦ってはくれないのですがね。はは』なに笑とんねん」

「自分の予想外して恥ずかしいからって八つ当たりすんの恥ずかしいですよ」

「ぐっ……『また、作る者として絶対に忘れてはならない、使い手との信頼関係が描かれていることも最高でした。作り手と使い手は二人で一つ。そんな意識が作品からも、ニブンノイチという曲名からも分かります。今でも大好きな作品です』だそうです」

「信頼関係かー」

「なかなか、僕たちのような一方的な発信側には分かり辛い感覚ではありますけど、いいですよねそういうの」

「は? 何言ってんの」

「はい?」

「ラジオこそ話し手と聞き手で作り上げていく作品でしょ。特にこの番組なんておたより募集してるんだよ? 聞き手が興味を持ってくれることがおたよりに繋がって、それがあるから私たちは話ができる、話を聞いて聞き手がまた楽しむ。こういうWin-Winの関係を作っていくのが大事だし、その意識が柴山さんに足りてないからおたよりが集まりづらいんじゃないの?」

「ぐえっふ」

「柴山さん今日調子悪いね」

「そうみたいです……そして上崎さんは絶好調ですね」

「うん。ぶっちゃけあたしもあんまよく分かんないなーと思ってたけど、先に柴山さんに言われたらなんかすんなり言葉出てきたよね」

「ええ……」

「大体さ。作り手、使い手の話からちょっとズレちゃうかもだけど」

「はい」

「そもそもあたしは人との信頼関係を上手く作れねえ」

「可哀想」

「同情するなら信頼をくれ!」

「どーせ他人の信頼貰ってもあなたの側では信じられないんでしょう?」

「人のことは信じられないけど人から信じられたくはあるのよ」

「コミュ障の上に我儘で自己中な人だあ」

「大体、知ってるよ? あたしは。柴山さんもこっち側でしょ?」

「えっなんでですか」

「割としょっちゅう気が合うというか、意見が合うじゃん。あたしたち」

「嫌な信頼だなあ」

「あたしも誰かを信頼できるなんて……!」

「そういういい話じゃないんですよ。感動して泣いてる場合じゃ、えっ嘘ほんとに泣いてるの!?」

「と、こんな風にね、人によってはウソ泣きなんて簡単なことなんですよね。信頼なんてね、聞いて笑えるわよね」

「うーわ」

「で? 柴山さんは、えっとー。他人を信用できるほうなんでしたっけー?」

「他人を煽るときの表情が一番いい笑顔なのがなあ……いや、でも今のは置いておいても、そうでもないかもしれません。昔から友人関係は狭く深くって感じだったので、限られた人としっかり信頼関係を築く感じだったんじゃないですかね」

「あー、友達少ない奴のよくある言い訳ね」

「今日失礼が過ぎませんか!?」

「まー、あたしは更にその少ない友人すら信じられないタイプだったからあんまり人のこと言えないんだけども」

「すごく責め辛い……」

「いや、勿論嫌いなわけじゃないんだよ? 友達だもん。でもさ、例えば急に遊びに誘ったら迷惑かなとか、自分の悩み相談したら鬱陶しがられるかなとか、どんなに仲良くなっても思っちゃったりしない?」

「それは信頼してない、にはあたらないんじゃないですか? また別の、気遣いというか」

「いやー信用してないことになるでしょ。相手があたしに見せてきてるものを、そんなの気にしない人間だよって部分を疑ってるんだから。それほど失礼なことはないと思ってる……のに、考えてしまうのよねー」

「前々からめんどくさい人だとは思ってましたけど。本当にめんどくさいですね」

「ストレートな罵倒!?」

「いやだって、そういうこと考えちゃうから自分から人付き合い避けてるんでしょう? 要は」

「いやそれはその通りだけども!」

「そういうこと考えすぎないで声かけてみれば友達になってくれる人絶対いますって」

「あのね! 言っとくけどね! 頭では分かってんのよ多くの人はそうだって! でもね、無理なの!」

「何が貴女をそこまで頑なにしたんですか」

「急な呼び出しも答えを求めているわけでもない悩み相談も! あたしが! めんどくなっちゃうほうなの!」

「あっ」

「実際行けば楽しいし聞いてみればその人を理解できて嬉しいけども! 一瞬ええ……ってなるの! だから他の誰かも、そうなるかもって思っちゃうの! あたしという実例がいるから!」

「それは、なんというか。どうしようもないですねえ」

「ね! もーいい、CMいく!」

 

(CM)

 

 

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第十七回ふわふわラジオ(3)

 

「さーて! なんか明るい話題でもないかな!?」

「十分明るい話題だったじゃないですか今週も」

「愚痴ばっかの有能トークで自分たちの無能さを再認識したこれまでのどこに明るさがあったと?」

「しょうがないですねえ」

「あたしが! 我儘みたいに! 言うなや!」

「では、PN『散財マー』さんからのおたよりでも読んでいきますか」

「散財マン?」

「散財マー」

「マーって何?」

「さあ?」

「ふーん。明るい話題なんでしょーね」

「明るいって言うか、面白い話にはなるんじゃないですかね? えー、『上崎さん、柴山さん。こんばんは』」

 

二人「「こんばんはー」」

 

「『しがないサラリーマンである私、散財マーの趣味は……実は! なんと! 散財なんですがー』」

「だろうね。名前聞いた瞬間から分かってたけどね」

「『高給取りとはとても言えない現状ですので、思うような散財ができずストレスが溜まってしまいがちです』」

「あー、ストレス発散に散在する人って、散財できないとストレスも発散ささらないのか……そうなのか?」

「『仕方が無いので、現実では本当に欲しいものにだけお金を使い、オンラインゲーム上での散財を定期的にすることで欲求を満たしているような感じです』」

「それでいいのか。まじで金使うこと自体が目的というか、楽しみなのね」

「『お二人はどんな物にお金を使うことが多いですか? 何を買ったときに幸せな気持ちになりますか?』ですって。ありがとうございます」

「ございますー。うーん……柴山さんはゲームだよね?」

「ゲームですね。別に金使うことに楽しみを乱しているわけじゃありませんので、普通にお金を使っていますね。別の言い方としては、課金と言われることもありますね」

「そうとしか言わないんじゃねーかな。因みに、どれくらい?」

「どれくらい、とは」

「いやその、課金額というか」

「ふっ。そんなもの、いちいち覚えちゃいませんよ。欲しいものがあれば金をかける、それだけです」

「自己管理が出来てなさすぎる」

「いや実は、一度簡単に計算したことがあるんですけどね。怖くなって考えるのをやめました」

「怖くなったんなら金かけるのをやめた方がいいんじゃないかな! てかどちらにしろ改まって計算するまで気付かなかったんだね!」

「いやあ、僕の場合は複数のゲームを掛け持ちして、それぞれに少しずつかけていましたからね。一つ一つのタイトルにかけた額だけで言えば微課金、微量の課金と言われる程度の物だったんですけど、それを10個くらいやってると……ははは」

「はははて」

「ついでに、ここまでの話は全部ソシャゲに関した話であって、他にも普通にPCのゲームとか、スイッチプレステなんかも買いますからねえ。給料から生活費引いたら残りは大体ゲームにかけてると言えるかもしれません」

「分かっちゃいたけどやべーなあこの人」

「そういう上崎さんは何に使ってるんですか? 趣味が多いのは知っていますけど」

「うーん、なんだろう。ゲームは買うけど課金はほとんどしないし、本や漫画、月額制のアプリとか」

「出てくる単語だけ拾うとやっぱ完全にオタク気質ですねえ。女性に対する勝手なイメージですけど、服とかカバンとか買ったりもするんでしょうか?」

「そりゃ買うけどさ。別にブランド物大好きってわけでもないしなー。春夏秋冬三パターンずつくらいあれば生きていけるわよ、仕事だって制服だし」

「豪快だなあ」

「あ、わかった。食費だわ、あたしの場合」

「食費ですか?」

「そう。食べ物に関しては、あたしも柴山さん並みにやばいかもしれない。あんまり金額気にしないってーか、食べたい! 注文! ってしてから金額確認することも多いかな」

「注文、っていうと外食ですか」

「うん。自分で作ることあんまりない。全くできないわけじゃないと思ってるけど、そんなに凝って作るほどでもないからねー。基本プロの作ったもののほうが美味いに決まってるじゃんね」

「まあ、多くの人において自分でご飯作るのは、自炊だと食費が抑えられるって理由が大きいでしょうからね。そこを気にせずがんがん食べちゃうと?」

「美味しいもの食べるために仕事してるとこはある。てかさ、食事の回数って限りがあるわけよ」

「はい?」

「太り過ぎないように、健康に気を付けたうえで食事できる回数って、一日にたった三回しかないのよね。んで、仕事してて朝は時間が無い、昼も限られた時間の中で食べなきゃいけないと考えると、何も気にすることなく食べたいものを食べられる機会って全然多くないわけよ。そんな貴重な、食事のできるタイミングで、お金のことを気にして食べたいものを食べないなんて実に愚かしいことだと思わない? あたしは思う!」

「うーん、言われてみると確かに」

「でしょう! だからあたしは金を使う! 金を生贄に捧げて美味いもんを召喚する! まーでも高ければいいってものでもないから、食べたいもんかどうかが一番大事なんだけどね」

「お金を惜しんでいないってことですよね」

「そそ。それこそ日によっては自分でちゃちゃっと用意するわよ。お味噌汁とカレーだけは、定期的に家庭の味が欲しくなるのよね」

「カレーはなんというか、味が広いですからねえ。母の作った、自分が育ててもらったあの味には、なかなか外ではありつけなかったりします」

「勿論隠し味に凝ってたり、スパイスの配合に工夫しまくってたりの店カレーが食べたい時もあるんだけどね。市販のルーの味全開の家カレーが食べたい時にそっちで代用はできないのよね」

「うちはバーモント派だったのでかなり甘いというか、かれくないカレーの気分になりますね」

「うちはバーモントの辛口とジャワの中辛を1:1。もう一生ハウスから逃れられないわ」

「なんかお腹減ってきた……帰りになんか食べて、ああでももう家カレーの口になってしまった! 流石に帰ってから作るのはなあ!」

「ふはは、明日が休みでよかったわね。晩御飯の調理時間がゆっくりとれるではないか」

「僕も普段は買い食いばかりなので、たまーに自分で作るとすっごい時間かかっちゃうんですよね。でもしょうがない、材料買って帰りますわ」

「まあこんな感じです! あたしはご飯、柴山さんはゲームにお金をかけがちだし、金を払って幸せを得ているぜと。散財マーさん、これからも幸せを買うためにお仕事頑張りましょーね! 一緒に!」

「なんかこう纏められると僕だけすごい嫌な感じですね。もうちょい使い道考えます……」

「柴山さんが改心したところで今週はお時間です」

「改心て。えー、次回の放送は再来週、おたよりお待ちしています」

「よろしくおねがいします! それでは皆さん、ばいなーら!」

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(DJみそしるとMCごはん)」

 

 

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第十七回ふわふわラジオ(2)

 

上「有能か、無能かと言えばさ」

柴「はい」

上「そして臨機応変と言えばさ」

柴「はいはい?」

上「難しいことを、難しいままに言う人って無能寄りよね」

柴「あー」

上「具体的に言うと、説明ってのは聞く人に合わせた言葉を使ってこそよなーって。あたしはしょっちゅう思うわけよ」

柴「具体的に説明をしないと伝わらないような言い方をする我々も十分に無能寄りですけどねえ」

上「分かってるから言わなくていーわ!」

柴「でも確かに、特に自分とは立場が違う相手への話とか、使う言葉に気を付けないといけないですよねえ。身内で当たり前に使っていた言葉が実は専門用語でした、とか割とありますから」

上「身近なところだと、仕事で別部署と話してる時とかありがちよねー。取引先とは寧ろ積極的に専門用語を交わす仲だから、意外と同じ会社の別部署のが分かり合えないという」

柴「第n次営業・現場戦争ですね」

上「あと、政治家の国民に向けた小難しい説明とかね」

柴「結局政治の話になっているじゃないですか」

上「何がまずいってさ、分かる人はわかるってことよね。本業でも無いのに詳しい人ってのはどこの世界にもいるわけで。誤魔化すために難しい言葉使っても、そういう人には一発でばれる」

柴「そんで今はSNS等の発達もあって、一般の方発信の情報がよく広まりますからねえ。どーせみんなよくわかんないやろってクドく誤魔化したはずが、数人の有識者の解説によって世間にばれるってのが起こりやすいんじゃないでしょうか」

上「ただ、一方でSNSは本人が興味ない情報は入ってきにくいって面があるからねー。元々政治の話題に触れる気が無い人たちからすると対岸の話というか」

柴「そういう人はテレビでも、そういう話題になると変えちゃうでしょうしねえ」

上「そう考えると、興味ない人にも伝わるような言葉づかいで、分かりやすく物事を伝えられる人が、有能だってことになるのかな?」

柴「政治家としては、の話ですね。しかも、それだけじゃ当然駄目で仕事で成果を出せる人でもなきゃいけない……うーん大変なお仕事です」

上「まるで演技も歌も踊りもトークもこなす声優さん並みのマルチタレント!」

柴「出た、当番組お得意の声優トーク!」

上「いつの間にこんな番組になってしまったのやら」

柴「兎に角、臨機応変に、相手によって言葉や対応を変えられる人が有能って結論でいいんじゃないでしょうか」

上「相手によって対応が変わる、ってだけ聞くと滅茶苦茶嫌な奴だね」

柴「日本語って難しいなあ」

上「日本語が難しいというよりは、どう対応を変えるかによるというか、何を基準に変えるかによるというか。あー、ちょいと脱線するけども、日本には御恩と奉公って考え方があるじゃん?」

柴「日本史で出てきそうな言い回しですけど、要は受けた恩を返そうとか、お世話になったぶん恩返ししようって感じの話ですよね」

上「そうそう。あれ、悪い考え方だとまでは言えないけど、あたしは嫌いだなー」

柴「恩は仇で返すべき、と」

上「そういうこと言ってるんじゃないでしょ? そーいうのなんもなしに、フラットであるべきって話」

柴「だって、恩を受けたら返したくなりませんか?」

上「ありがとうって言えばいーじゃん」

柴「それじゃ足りなく感じちゃうっていうか」

上「まーそれ自体はある程度自然な思考だとは思うんだけどさー。恩を受けることと、お返しがさ、セットになっちゃうのがよくないじゃんか、まず」

柴「まあ、最近話題の忖度ってやつとかも、そういうとこから発生するんでしょうしねえ」

上「そう! 何かをしてあげることは、見返りを求めたものであっちゃいけないはずなんだよ本来は。それが愛ってものなんだよ! 見返りを期待した助力・プレゼントは取引なんだよ、取引なら見返りも事前にはっきりさせとけってんだ」

柴「お礼禁止にしろ! って言うより、貸し・借りってのを無しにしろって話ですね?」

上「そう。いや、気の知れた仲で、お礼にもらうものを決めておく時間も取れなくて、しゃーない貸しイチな! ってやり取り自体は悪くないと思うんだけどさー。前にも言ったことあったっけ? 暗黙の了解とか、明文化されないマナーっていう、そういう流れが出来ちゃうこと自体よくないとあたしは思うんだよね」

柴「何事もどんなことも、使い方ではあるんですけどね。大きなお礼は求めないから、今度俺になんかあった時助けてくれよな。って感じのかっこいい気遣いも、〇〇君あの時ワタシ手を貸したよね? 覚えてるんだったらさ、分かるよね? も同じ貸し・借り、御恩と奉公案件だと考えると、たしかにその文化自体無くしてしまった方がよくねって思いはします」

上「あとは、プライベート限定にするとかね。仕事ではあくまで規則上の堅苦しいやり方であるべきというかさ」

柴「する、あるべきというより、現状でもルール上は貸し借り的なの駄目だと思いますよ? 仕事では。無視してる人があまりにも多いだけかと」

上「なんか話してる自分でもよくわかんなくなってきたけど、要はさ。仕事を情でやるなや! ってことだね多分」

柴「義理も人情も、仕事上はクソ邪魔ですよねえ。それを重視する老害も邪魔」

上「おおー、強い言葉を使うね?」

柴「年功序列社会の中だとかなりいるんですよねー未だに」

上「人脈で仕事してるぜ! っていう人ね」

柴「なんか以前にもこういう話したような」

上「我々の嫌いが噴出している」

柴「逆に、現場にあまりにも即していないルールもあったりしますよね」

上「あるある。臨機応変さを発揮すると全部ルール違反になる組織ね。変えろや、って思うけど面倒くさがる経営陣」

柴「なんか、生きるのって大変ですねえ」

上「そうだね。ところで何の話だっけ?」

柴「どんな人が有能なのかな、って話でした」

上「こうやって話が脱線しまくる人は雑談シーン以外では無能ですんで気を付けてくださいねミスター・プレジデント! 現場からは以上です!」

 

(CM)

 

 

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第十七回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「こんばんは! みなさん、お久しぶりです! 『ふわふわラジオ』 が17回目を迎えまして、記念すべき今日この日のMCは上崎茜(CV.佐々木奈緒)です!」

「いかがお過ごしでしたか。MCの柴山蒼汰です」

「いやー休んじゃったねー! それはもう休みだったねー!」

「なんですかそれ、前回も同じようなこと言ってた気がしますよ」

「暫く毎週放送が続いてたからさー、仕方ないんじゃよう。働いてないと、落ち着かないの!」

「貴女それ正反対でしょう? 本来のキャラ」

「まーね! でも喋るのは好きだから待ち遠しかったのは本当だよ! だから頑張っていきますよ第17回レッツゴー!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「LOVE AND DEVIL(4U)」

 

「なんかかっこいい曲だったね。でもあたし知ってるんだ」

「あ、知ってたんですか?」

「いや、曲自体は知らないんだけどね。このラジオのリスナー層と、最近のアニソンはアニソンっぽくないという傾向……ずばり、アニソンでしょ!」

「残念。ゲーソンです」

「ぐわあああっ! まじか……いや誤差でしょ誤差」

「は? 全然別物ですが。演歌も日本の歌なんだからJ-POPですってくらい暴論ですよ」

「そこまで?」

「演歌歌手が歌ってる曲は全部演歌だって言うくらい暴論ですよ」

氷川きよしさん以外に対してはそこまでの暴言じゃないんじゃない?」

「まあほらおたよりで来てるんですから、読みますよ」

「あたしが聞き分けないみたいに言われてんの納得いかないわ」

「PN『バラードエンジェル』さんがらのリクエストです」

「聞く曲間違ってませんかね」

「『上崎さん、柴山さん! こんばんは!』」

 

二人「「こんばんはー」」

 

「『アプリゲーム、Tokyo 7th sistersからライバルバンド4Uの楽曲をリクエストします! 格好いいですよね!』」

「確かに、かっこいいよね。やっぱ女の子のバンドって最高だわ」

「お? そうなんですか」

「そうなんですかって何? いや、まあ、個人的な感想だけどね。あれだよ、ギャップ萌えってーの? かわいい子がかっこいいことしてるのとか……いや、でも逆はそーでもねーわね」

「逆って言うと、かっこいい人が可愛いことしてるのですか? それも十分ギャップ萌えになると思いますけど」

「普通ならそうなんだけど、かっこいい人が可愛い歌歌ってるとこはあんま萌えなくない?」

「いやーたしかに僕はそのシチュ萌えないですけども。人の趣味はそれぞれですからねえ」

「ん、まあ、そうか。まあギャップ萌えってことなのよ、うん」

「じゃあ、続き読みますね。『最近の音楽ゲームは、オリジナルソングもカバーソングもかっこいいものばかりですよね! 最近はガールズバンドを扱ったタイトルも多いですが、彼女たちは特に私の一押しです。是非聞いてください!』だそうです。ありかとうございます」

「確かに、多いよねえ。当ラジオで扱っただけでも、バンドリ、プロセカのレオニがいるけども」

スマホゲームの特徴として、何度も何度も更新がかかりコンテンツの追加があるってのがありますからねえ。新曲に次ぐ新曲、カバーで言えば楽しみにしていたあの曲。ファンはずっと楽しめるという」

「昔からさ、声優のカバー曲まとめ! みたいなのニコニコ動画とかに上がってなかった? 需要はずっとあったんだよね。そこに対する無限供給! 寧ろ供給過多! 何故ならそれを追っているだけで音楽聞きたい欲が満たされてしまうから! 一般人とのカラオケで何も歌えなくなるオタクたち!」

「いやでも僕みたいに、昔からカラオケで浮くタイプだった人間にとっては寧ろ逆ですよ。カバー追加されてからいい曲だなってなって思っての原曲逆輸入。寧ろレパートリーが増えていると言えます。最新曲に拘らなければね」

「あー、そういう見方もできるのね。確かに、ガルパは一般曲とかのカバーも多いかも」

「いい曲だな誰のだろ、って思ったら椎名林檎だったときは驚きましたねえ」

東京事変さん!? 結構がらっと雰囲気変えて歌い手に合わせてるのもあるし、細かい部分でのアレンジに留めて似せてるのもあるし聞いてて楽しいよね」

「こんな僕たちなのに地上波の歌謡祭みたいなやつのスペシャルカバーが好きになれないのは何故なのか」

「マジで上手い人が歌ってる分には普通に好きよ。結局聞いててアガるかどうかが全てだもん」

「声優さんってすごいなあって話に戻ってきちゃうと」

「マジで声優さんの話しかしてねーなこのラジオ」

「じゃあ政治の話でもしますか」

「柴山極端さんですか?」

「いやいや、そういうおたよりが来てるんですよ。だからしょうがない」

「声優の話を楽しく聞いてたリスナーが政治の話も求めてんの? 雑食にもほどがあんな」

「PN『ミスター・プレジデント』からのおたよりです、ありがとうございます」

「傲岸不遜にもほどがあるでしょ」

「『上崎君、柴山君! 御苦労!』」

「おー、なんかプレジデントっぽい」

「『君たちの意見を聞きたい。真の有能さとは、なんであると思うかね?』」

「随分と……なんていうか、概念的な質問だね……」

「『答えを楽しみにしている』だそうです。難しいですね」

「あ、でもミスター・プレジデント、短く伝えたいことを纏めてるって感じがして好感度上がったかも。話長い人はあんま有能な感じしないわよねえ」

「校長先生と政治家とスポーツイベントの組織委員会トップに多い感じの人達ですね?」

組織委員会に関してはノーコメントにしておこうかな! 一人しか喋んないときはいいんだけどね、複数人喋るときは、後の人に喋ること残しとこうとか、先に言われたとこは省略するとか、そういう臨機応変さが欲しいと思う。あー、話短い人がいいっていうよりは、臨機応変に対応できる人がいいのか」

「そういう意味ではミスター・プレジデント、話題の足りないラジオに短めのおたより送ってきてる辺り有能でないのでは?」

「質問が概念チックだからシンキングタイム多めにとってくれたと解釈すれば許容範囲でしょ」

「僕らは話が長い無能MCなのでCM挟んで話題続きまーす」

 

(CM)

 

 

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第十六回ふわふわラジオ(3)

 

「さて」

「うん」

「お便りが届いています」

「おっ」

「PN『Fly away』さんから、ありがとうございます。『上崎さん、柴山さん。こんばんは!』」

 

二人「「こんばんは!」」

 

「『上崎さんがスッキリ! 好きだと伺ったのでおたよりを書きました』」

「おー、Fly awayさんも同志か」

「同志て。『スッキリ! では最近、アーティストのオーディション企画を扱っていますよね』」

「あー、NiziUとか、BE:FIRSTとかね」

「『私は最近、それに夢中です。スッキリ! は勿論、配信サイトやyoutubeでも彼ら彼女らの話題ばかりを見てしまいます』」

「ふむふむ」

「『オーディションの様子、活動に向けた練習、JY ParkやSKY-HIの言葉、ファンによる感想や考察動画まで。いつまでも、いくらでも見れてしまいます』」

「あー、びっくりするくらいなんでもあるもんねyoutube

「『お二人はどんなアーティストが好きですか?』とのことです」

「アーティスト、かあ」

「前にも言ったかもしれませんが、僕あんま歌手で曲選ばないんですよね。曲聞いて気に入ったら買う、の繰り返しです。なので、好きなアーティストとかはあんまり」

「まーあたしもそんなに拘りないわね。嵐とかは歌が上手くて好きだったけど、毎回新曲追ってるほどじゃなかったしなー」

「Fly awayさんの言うNiziUとかは? スッキリ! で見てたんじゃないですか」

「実はね、ほぼ見てないのよ。もちろんスッキリ! は好きだからはいってるのは知ってたけど……最近流行りのオーディション番組とかがマジで嫌いだからそれはいったらチャンネル変えちゃってたのよね」

「おお、嫌いとまで言いますか」

「ん、いや、嫌いっていうか、あたしは見れない。別にやってんのまで批判するような、やるべきじゃないって嫌いではないけど、あたしが見るのは無理」

「それは何故?」

「えー? 多分……嫉妬するからかなー」

「嫉妬とな」

「うん。成功者を見るの、嫉妬しない? 自分が成功してれば他人の成功に興味なんて無いだろうし、自分の成功が遠ければ嫉妬しかしないでしょ。やるべきでないとは思わないけど、誰が見れるの? とは思う。実際人気なんだから見る人多いんだろうけどさ」

「まあ、僕もあまり見ないので、そう言われれば確かに……という感じではありますね。ただほら、オーディションって言うくらいですし、みんな成功者を見るのが目的なんじゃなくて、頑張ってる人を見るのが目的なんじゃないですか?」

「それは自分の頑張る時間を削ってまで見るものなのかなと」

「受け取り方が面倒臭いな……」

「いや、だからあたしの基準ね。あたしが異常なだけなんだろうなーとも思うし……結局あたしは、あたしのことしか考えてないからこういう考え方になるのよね」

「みんな自分のことが一番大事でしょう、という慰めで終わる話じゃなく?」

「多分? 歌上手い人見ればあたしももっと上手くなりたいと思うし、大して上手くもないのに人気出てる人見ればあたしのほうが上手いのにって嫉妬する。お笑いも、ドラマとかも、あたしならどう演出するかばっかり考えて見てる。他人が頑張ってる姿を見ると、こんなことしてる暇あったらあたしも頑張らなきゃいけないって焦るし、実力にしてもストイックさとかにしても敵わないなって人は辛くなるから見れない。最終的にはあたしのことしか考えてない、って纏めれそうじゃない」

「職場で仕事できる人とか周りにいてなんか不快みたいな感覚でしょうかね」

「他の人は分からないけど、あたしは仕事に興味が無いから仕事できる人に憧れない、のでそれは同一じゃないかな」

「うわとことんめんどくさ」

「うーん、柴山さん小説読むの好きって言わなかったっけ」

「まあ、はい。ラノベとかネット小説とかが多いですけど」

「寧ろそっちのが特徴的だと思うけど。出来の悪い主人公だとか、平凡な主人公とかに自分を重ねて見たりしない? 感情移入するというかさ。自分が冒険して、波乱万丈の展開を生きているような気分になったりしない?」

「恥ずかしながら、めっちゃしますね。一番わかりやすいのだと、前もちょっと出した恋愛ものの話ですか。主人公に感情移入しまくってるんで、主人公に好意を寄せてたヒロインが別の男とくっつくとすっごい寝取られた感じがするんですよ……そういう一体感ですよね?」

「そう。やっぱ柴山さんも“こっち側”ね」

「なんですかそれ」

「客観的に他人の人生を見て楽しんでるんじゃなくて、自分の分身として本を読むんでしょう? 自分にこそ、刺激的で幸せな人生を望んでるってことかなと。あたしもそうなのよ、他人の成功も、喜びも、どうでもいい。自分が成功できず、喜びもなく、ぼーっと見てるテレビの向こうで他人がそうなっていることにイラつきすらする。想像の余地が大きい本なら、文章なら、他人の成功ではなく成功の疑似体験であれる。そういうのしか受け付けない器の小さい人間の話よ」

「聞いてると僕らマジで嫌な奴ですね」

「ボランティア精神の欠片も無いというか、こんなんだから仕事にも希望を持てないんでしょうけど」

「でもまあ、分かるところはあります。ラジオやってても、リスナーさんに楽しんでもらえるのはすごく嬉しいんですよ。けどこれって、最後に目指してるところはリスナーさんが楽しむところじゃなくて、それを見て感じて僕が嬉しくなるところ、なんですよね。だから逆が無い」

「逆って?」

「リスナーさんが不快に思うことによって僕が辛くなることはあまり無いのでそっちに関してはどうでもいい」

「言うねー」

「嫌になった人は聞かないでください。それを楽しんでくれる人がいるなら、僕はその人のためにだけ喋りますので。って」

「まあでもそれはそうだよね。他人に危害を与えないのなら、何しても、何喋ってもいい。合わない人は離れていくし、合う人はきっと楽しんでくれる」

「実際には炎上も番組終了も怖いのである程度気を付けることにはなるんですけど、基本の精神はそれくらいでいたいですよね」

「万人受けを狙って成功できるのはごく一部だからねー。で、何の話だっけ?」

「お気に入りのアーティストからの展開でしたが、二人ともいなかったのでもういいんじゃないですかね」

「そーね、終わるか。おたより募集してまーす!」

「次回の放送は再来週になりますので、いつも以上のおたよりお待ちしております。それでは」

「ばいなーら!」

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(AAA)」

 

 

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