ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第十八回ふわふわラジオ(2)

 

「あの、言っておきますけど、あたしちゃんと友達いますからね。関係も良好ですからね。心配しないでね」

「はい。関係が良好ならよかったですね」

「余計なことばっか考えちゃうあたしに合わせてくれるからね。相手のおかげで良好な関係を保てているわけだね。言ってて申し訳なさに押し潰れそう」

「また余計なこと考えてますねえ。ほら、要は、ある程度合わせてでも良好な関係を保ちたいと思ってくれてるってことでしょう? それだけ得難い友人だと思ってくれてるんでしょうよ。きっと上崎さんも、その友人に貰っているのと同じくらい、相手に貢献できているんだと思いますよ?」

「そうだといーなあ」

「というかなんで、より友達少ないであろう僕が上崎さんを励ます構図になってるんですか? 寧ろ励まして?」

「あ、やっぱ少ないのね」

「それだけ深いですけどね! いや嘘! 多分元々は深い友人関係だったけど社会人になってからはそうでもないかもしれません!」

「正直じゃん。あー、ってことは大学の頃とかの友達か」

「そうですね。僕はあまり高校時代に友人が増えなかったので、中学の頃の地元の友人と大学に行ってからの友達。ほぼそれで全てですね」

「高校? そういえば、友達いないからバンド組めなかったんだっけ」

「違いますー! 方向性の違いから組めなかっただけですー!」

「はいはい。まー理由はどうあれ友達が増えなかったのね、その頃には」

「それ自体は事実だから言い返せない……」

「で、えーと、社会人になってからは会ってないの?」

「うーん、まあ今は感染症の影響で出歩けないってのもありますが」

「まー東京にいるとそうか」

「僕が東京なのと、友人たちがあんまり近くにいないんですよね。悔しいですが、僕は本当に考え方とかが上崎さんに近いので」

何が悔しいんだよ小一時間語らせてやろうか?」

「つるんでた友人たちも同じタイプが多くて。要するに、地元近くに帰っていった人たちなんですよね。友人」

「成程」

「寧ろほんの少しの勇気と無謀で東京に出てきた僕のほうが、仲間内では異質なので」

「そうなると確かに会いにくいわよね。感染症流行る前からも、わざわざ出向いたりしないと会えなかっただろーし」

「地元、と一言で言いますけど、あの、何故かガチ田舎が多いんですよね。それこそ秋田や、福井とか、あと三重だっけか? たしか全体的に新幹線で行きにくいんですよ」

「あれ、これ言ったことあったっけ」

「ん、なんでしょう?」

「あたしのとこ……あー土地バレしそうだなー、いっか」

「いいんですか」

「今更だしね。地元のおっちゃんと話してた時にさ、ここ……地元の市っていいとこだよな! 交通の便もいいし! って言われたんだよね」

「いいんですか?」

「うん、あたしも疑問に思ってさ。えーそうですか? 結構不便じゃって言ったらさ。おいおい空港まで1時間、飛行機で東京まで1時間だぞ! って言うんだよね」

「基準が飛行機かあ。いや、でも地方としては、あるだけマシですけどね」

「そんでその後、電車でも6時間あれば行くし! って言ったんだよね」

「電車」

「田舎民には新幹線も電車と同義よ」

「まあ、ええ、うーん」

「2時間、けど飛行機か。電車もある、けど6時間か。この、なんていうか、いや全然じゃん! とも言えないけどな感じ。こういう微妙な感覚の差異ってのをすげー感じたのよね」

「2時間って部分だけ聞くと確かにそんなもんかの範囲ではありますもんね。けど、そうですねいいですね! とも言いにくいというか」

「実際柴山さんも飛行機移動はあんましないでしょ?」

「そうですねえ。いや、僕が予定決めるのかなり遅い方だからっていうのもあるかもしれないですけど。意外と国内も飛行機移動頻繁に使っていく方もいるとは思いますよ」

「学生プラスアルファくらいのあたしらからしたらなー」

「確かに。一般的20代会社勤めからするとね」

「まーそんなわけで、ちょっと脱線させちゃったけど、新幹線の駅ある周辺とか以外は東京マンが気軽に遊び行ける場所でもないよねって話に賛同したかったわけよ」

「気軽、の程度にもよりますけどね。僕のこの話の場合、週末ちょっとご飯行くかーくらいの誘い方ができる範囲に、もうちょっと友達いてほしかったなーってのはあります」

「そっか、お酒飲まないんだっけ」

「僕はね。友達が飲んでる分には文句ないですよ」

「前に二人で、仕事飲みで酔った人の相手めんどくせえみたいな話で盛り上がった気がするけど?」

「そりゃ仕事仲間と友達は違うでしょう」

「勿論そうだけどさ。いや、それこそ仕事のつながりでも一緒になるような、その繋がりでできた友達とかいないの?」

「いないですね」

「即答かよ」

「ぎりぎりに出社して終業と同時に帰っていく人間が、友人になるほど人と歩み寄れると思います?」

「思わないし、よくそんなんで誰かと仕事できてるなとは思う」

「ゲームの時間削って仕事してんのに終業してから友達作りに咲いてる時間は流石に無いんですよ。かと言って仕事中は当然仕事でいっぱいいっぱいなので、仕事の話以上のコミュニケーション取れないですし」

「ゲームの時間がメインでそっから仕事で削られてるって思考なのね、わかるよ」

「分かるんですか!?」

「似てるって何度も言ってんじゃん」

「こんなダメ人間僕意外にもいたんだ、安心しました」

「は? おい」

「まあそれプラス、単純に同年代の同僚が少ないってのもありましたけどね。あまり規模の大きい会社ではないので」

「東京でそんなこと言ってたら秋田にいるあたしはどうしたらいいんだ。友達になれる人も恋人探しも絶望的になっちまうじゃねーか」

マッチングアプリしかなくないですか?」

「ずっと一緒で、仲のいい友達すら信頼できないあたしが? マッチングアプリで? 会ったこともない男と仲をつめて? 本気で言ってるの?」

「どうしようもないMCしかいないなあ」

 

(CM)

 

 

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