ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第四回ふわふわラジオ(3)

 

柴「旅行といえば」

上「うん」

柴「移動が発生するじゃないですか。電車でとか、車とか飛行機とか。あれどうしてますか」

上「なんか抽象的な問いだけど、そうだなあ。最近は新幹線使って行くことが多いね」

柴「新幹線ですか」

上「まあ行き先によっては使えないけど、あれば基本は? 指定席あること多いし、席も割と広いし、一番のんびりできるかなと。学生の頃はお金なくて使えなかった分今は新幹線ばっかりだな」

柴「あれ必ず2席以上並んでるから隣にクソみたいな奴座ってくるかもしれないじゃないですか」

上「一緒にしないでくれる? 二人以上で行くもん」

柴「あっ」

上「可哀想……というか、大体そうじゃない? どの乗り物でも」

柴「まあそうですね。だから僕は自家用車やレンタカー、もしくは電車を乗り継いで移動することが多いです」

上「車は兎も角、電車なんて隣に知らない人が絶対いる乗り物では?」

柴「最初から寛げる期待してない分落ち幅が小さいんですよ」

上「めんどくさいなあ」

柴「新幹線での移動って道中何してるんですか? 景色見てるには流れが速い気がしますけど」

上「案外そうでもないよ? そりゃ住宅街とか通ってるときはもうビュンビュンだけど、田園風景とかは逆にちょうどいい時間見てられる気がするかも。海とか」

柴「たしかに。電車で田んぼの中とか通ると飽きますよね」

上「それこそあたしは、自分で運転してる時間が嫌いなんだけど。何もできなくない?」

柴「そうでもないですよ。必ずブルートゥース対応のカーステレオついた車借りてですね。事前に作っておいたプレイリストを爆音で流すんですよ」

上「あーたしかに、音楽聞くなら車、いいね」

柴「『しゅわりん☆どり~みん』爆音ライブ開催です」

上「(四)十五の夜さんと気が合いそうだね」

柴「たまに歌っちゃったりして」

上「あれは彩ちゃんが歌うからいい曲なんだよ! 柴山さんが歌っても拷問にしかならないよ!」

柴「なので一人で行くわけですね」

上「あ、綺麗に話戻ってきた」

柴「みんなで行ったカラオケで萌えアニソンを歌う男子」

上「それあたしも聞いててしんどいけど一番古傷を抉られてんの柴山さんじゃない? 大丈夫?」

柴「僕そんなことしませんし……でも、普通に周りと曲の好みや知識はズレてましたね」

上「一回さ、クラスの連中となんかの打ち上げでカラオケ行ったんだよね。普段はあんま話さない女子も、ちゃらい男子も一緒にさ」

柴「懐かしき青春の一ページですね」

上「地獄、だった」

柴「ええ……」

上「CMでギリ聞いたことあるかってアゲアゲな曲歌いだす陽キャ男子、手ぇ叩いて喜びながら踊りだす陽キャ女子、順番回ってくるたびにオタクソング歌って変な空気にする陰キャ男子、それら全部を冷静に受け止めた結果全く動けないあたしたち陰キャ女子。あたしらをモブとしか思ってない陽キャども以外誰も幸せになってなかったよ」

柴「でもそれ多分幸せになった人のが多いですよね」

上「そう。悲しい」

柴「僕みたいな人種からすると、あれ。タンバリン? 歌ってるときにあれ叩かれるだけで鬱陶しいですけどね。聞けよ」

上「そうなんだよ、あたしたちのカラオケは言うなれば、歌合戦というか。誰かが歌って、上手いねっつって、じゃあ次あたしの番! っていう。ターン制なんだよね。でもあいつらずっとみんなで騒いでるから、知らないカラオケだ……ってなった」

柴「結局気が合う人とだけ行ってるのがみんな幸せだし世界は平和なんですよね」

上「気が合わない人と無干渉を貫ける前提では、だけどね」

 

(無音)

 

柴「旅行に話戻してもいいですか」

上「いいね、そうしよっか。分かり合えない人と人の話はもう辛くなるからね」

柴「一人で行くと絶妙に困ることあるんですよね」

上「何?」

柴「トイレ」

上「え、一人のが困るの?」

柴「トイレに行くとき荷物どうするのか問題ですよ」

上「あー、成程」

柴「ちょっとこれ持っててが効かないので、どんなにデカいものでも手提げの袋でも持っておくしかないんですよね。アレどうしたらいいんだろっていっつも思います」

上「どうしてんの? 現状は」

柴「手提げ、男性、小さいほうの条件下であれば、便器の正面の壁がちょっと台みたいになってることが多いんですよ。そこに置いて、用を足したら手に取って手を洗いに行くんですけど……こう、触らないように気を付けるのが、面倒ですね」

上「触らない……ああ」

柴「こう、極力指先で用を済ませて、手のひらだけで持つというか。人がいないトイレだったら、一旦用を済ませてから取りに戻ったり。それでもなんか嫌な感じはしちゃうんですよね」

上「詳細に描写をするな。因みに、デカい荷物の時は?」

柴「利用者がいない時は多目的トイレを使っちゃいます」

上「成程、その手が」

柴「でもあれ微妙に罪悪感発生するんですよね……荷物が多い人、は利用者として想定されてないんだろうなって。身体に障害のある方や、あと乳幼児と一緒の方とか? そういう人のためのトイレなんだろうから、と。なるべく早く済ませてますけど」

上「多目的なんだからマナーを守って素早く使う分には問題ない気がするけどなあ」

柴「うーん炎上するかなあ。なんかごめんなさい」

上「敏感! あとそうやって腫物扱いっつーか、触んないほうがいい話題みたいにするのが一番駄目だと思うよ!」

柴「でも実際燃えやすい話じゃないですか? 差別の話に繋がる話題って」

上「寧ろ一番燃えさせちゃ駄目な話題なんだけどねえ。みんなが意見を言いやすい、話をしやすい空気を作って、勘違いや無知な発言もさ。このままでよくはないけど、次から気を付けてねって言えればいいのになあ」

柴「今、思い出した話があるんですけどね」

上「やめよう。時間ない時に始める話じゃないよ、これは」

柴「スッキリ!の話なんですけど」

上「やめろ。スッキリ!は好きだけど、今はやめろ」

柴「話しやすいようにしていこうって言ったのは上崎さんなのに」

上「現実で今現在はそうじゃないってことだよ。前回の話以上に番組が終わりかねないぞ」

柴「じゃあやめときましょう。なんか言っておきたいこととかあります?」

上「何に関してもだけど、正しい知識を完璧に持っておいた上でしか話しちゃいけないってのはクソ思考だよ。人類みな曖昧な知識をもとにどんな話題をだらだらと語り合ってもいいんだよ。もっとも、正しい知識を持った人に指摘されたときは素直に受け止めなきゃだけど」

柴「番組コンセプトに軽く触れたところでお時間です」

上「おたよりマジで待ってまーす」

柴「来週もこの時間に、無事にまたお会いしましょう」

上「無事に? えっそんなに炎上しそう? ……さよーなら!」

  

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(ヨルシカ)」

 

 

 

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