ポっと出に敗れる

「ふわふわラジオ」を連載しています。

第十五回ふわふわラジオ(3)

 

「ランダム封入と言えばさ」

「嫌なところに食いつきましたね」

TCGとかソシャゲのガチャってよく消費者庁に怒られないよね」

「あれ、やってることは購入じゃなくてギャンブルですからね……」

「怒るべきお役所が違うってこと?」

「多分? でもパチンコや競馬が特例として許可される国、その名も日本ですから、ガチャという微妙な立ち位置の物も大きく扱いはしないんでしょうねえ」

「まあガチャも勿論あれだけど、TCGあるじゃん? パック購入時にギャンブルするのもそうだけどさ、あたしとしてはカドショの存在が気になって」

「カードショップですか?」

「転売では?」

「あー」

「カードに限らず、古本屋に古着屋といったリサイクルショップ、骨とう品、それと転売の違いって何? っていう。あたしは転売滅ぼすべし慈悲はない思考だけど、どこまでを転売として扱うんだろう?」

「その辺の基準を示せないから、国としても強く規制できないんじゃないですかねえ」

「1日限りのライブチケットを転売するのは悪だけど1日限定配布だった本を転売するのは悪と言うのか? 限定じゃなければいいのか? 難しいわよね」

「個人的には、原価より高く売ってるのは全部滅ぼしたいところですけどね。他人の作品でてめーが得をするな、と」

心理的にとかシステム的には勿論違うけど、合理的にだけ見れば、運営から直接販売を委託されて販売してるチケット店から買うのも転売ヤーから買うのも同じチケットだと言えちゃうからねー。やっぱ基準、これはいいこれは駄目! ってのを国とか偉いとこで出してほしいわよね。何事も」

「難しいですねえこの問題は」

「ま、それだけ」

「そうでしたか」

「さて、次の話題、なんかある?」

「ありますのよ、特大のが」

「マジで?」

「この番組についてです」

「なにそれ、番組終了?」

「似たようなものです」

「えっうっそ、それは困る。でも終了ではないのね……あー、月一とかになる?」

「そんな感じですね。来週から、隔週放送になるらしいんですよ」

「えーまじか、そんなに需要無かったか」

「まあ聴取率もそんなにとれてなかったですが、一番問題だったのはあまりにもおたよりが来ないことですよね」

「完璧に理解したわ。素通り状態だったもんね」

「そうです。番組スタッフサイドも協議の結果、話題の無さがどうしようもねえと判断したというわけですね」

「話すことなさ過ぎてアニメの話ばっかしてたもんね」

「まあ、それはそれで僕らは楽しいですが」

「そっかー。じゃ、次会うのは再来週ということで。今後もまたよろしくね柴山さん」

「ええ、そうですね。じゃ、次のおたより行きますか」

「え?」

「どうしましたか」

「終わる流れだったじゃん?」

「何言ってんですか。まだ時間残ってるでしょ、次のトークテーマ行きますよ」

「番組の! 構成! 聴取率とれないのはそういうとこもあると思うぞスタッフども!」

「はいはい、騒がない騒がない。PN『シェークもシェイクもシェーキも美味い』さんからのおたよりです」

「あたしも好きだよシェーク」

「『上崎さん、柴山さん、聞いてくださいよ! 私の地元が秋田県なんですけどね!』」

「マジで身内ばっかだなこのラジオ……」

「同じ県の出身者を身内って一括りにするの地方民あるあるですよね」

「まあ、衰退する地元を離れた地からも互いに盛り上げていく同志であるからね。生まれも育ちも就職も、発展し続けていく都市住まいさんには分からないでしょーなあ!」

「軽い気持ちのあるあるネタに辺りが強いなあ……えーと、『うちの近くにもミスドがあるんですが、シェークを売っていないんです! これって地方差別じゃないですか!』ですって」

「あー、もしかして、同じ地域に住んでたまである? いや秋田県内には点在してそうだな……」

「シェークの無いミスタードーナツが、ですか?」

「そーよ。特に、特殊な機会を使うらしきシェークに多いんだけどね、チェーン店舗でありながら一部お取り扱いしていない店舗ってのがあったりするのよファストフード」

「えー、そうなんですね」

「これが都心部であれば、正直一店舗で扱ってない商品があっても大した違いは無いのよ。ちょっと歩けば別の店あるんだもの。でもね、地方でのそれは深刻でね、だって市区町村一つにつき一店舗あればいい方なんだもんチェーン店、そこにシェークが無いということは隣町まで行かないと無いってことだよ」

「そして隣町にも置いてない、と」

「シェーク飲みに秋田市まで通えってか!」

「ぼく田舎住めないですわ」

「で、一番気に食わないのはさ」

「ええまだあるんですか?」

「シェークやってないのにタピオカ売ってんのよ。何が! タピオカだ! いらんわそんなん!」

「まあ、そこら辺は好みの問題ですし。好きな人もいるかもしれないじゃないですか」

「そんな流行ものだけ都会にかぶれてどーすんねん! タピオカは! 東京で飲めばいいの! 秋田にいるときも飲みたいものはシェークなの! 分かる!?」

「すごい理不尽な怒り方してるのはよくわかります」

「まあ、なんだかんだ言っても、いくつかの市町村にあるだけ優秀だけどねミスドロッテリアはマジで秋田市にしか無いからね。シェーキどころの話じゃないわ」

「僕、田舎には住めないですわ……」

「そんなわけで今度こそお時間ですな」

「そうですねえ」

「寂しくなるわね……」

「いや、終わるみたいなテンション」

「まーいーか。えー、当番組ではおたよりとかを募集していまーす」

「オープニングで流すリクエスト曲や、フリートークの時に扱ってほしいネタ、聞いてほしいお悩みなどなんでもオッケーです」

「ただ、番組コンセプトとして、ふわふわな知識をもとにふわふわなトークをしてふわふわした結論を出すっていうモノなので、ご期待通りの返事はできないかもしれません! けどね!」

「それでもいいって人、是非お待ちしてます」

「初めてじゃない? こんなちゃんと宣伝したの」

「ちょくちょく忘れたし、時間なくてできなかったりしましたからねえ」

「おたよりが全然集まってないのはこちらの努力が足りてなかったからでは?」

「都合の悪い真実に上崎さんが辿り着く前に今週はここまで! ではまた再・来週!」

「ちゃんと今後も聞いてね! ばいなーら!」

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(MAN WITH A MISSION)」

 

 

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第十五回ふわふわラジオ(2)

 

「恋愛の話、難しすぎるから辞めたいんだけど」

「まあ、僕はいいですけど。僕ばっかり語ってしまったので、リスナーは上崎さんの話も聞きたいんじゃないですかね」

「えー……うーん、何回か男性と付き合ったことはあるんだけどさー」

「はい」

「なんて言うんだろう。最初はまー、割とかっこいいし、優しかったり頼もしかったりで付き合うんだけどね。付き合ってるうちにどんどん嫌なところを発見していっちゃうっていうかさー」

「減点方式の恋愛タイプなんですね」

「そういうタイプ区分あんの?」

「まあ、多分」

「参考にならねーなあ……兎に角、まあでもそんな極端に嫌いになることはあんまりないわよ? あたし、見る目はあるつもりだし、付き合う前にどういう人かなんとなくは分かってOKしてるつもりだしね。でもまあそもそもが多分、誰かと生きるのに向いてないのよねー」

「あー分かる」

「今何を分かったおい? 自分もそういうタイプなのかあたしの協調性の無さに納得したのかどっち?」

「まあまあ。いいから続き聞かせてくださいよ」

「釈然としないなー。まーその、誰かと一緒に休日とか過ごすようになるほど自分一人の時間の心地よさに気づくというか」

「はいはい」

「学生の頃なんか、彼氏と一緒に帰るものみたいな暗黙の了解があってさ。それまではその日の気分で色んな友達と遊びながら帰ってたのに、なんか、毎日窮屈だなーって……あたしだって人並みに、その、いい雰囲気みたいな? のに憧れはあったけど。毎日欲しいわけじゃないんだわ」

「すげえ頷きながら今僕聞いてますけど、いざ付き合うと僕も毎日一緒に型男性になっちゃうんですよね。恋は人を狂わせるというしやはり僕は恋をしていた……?」

「独占欲も性欲も人を狂わせるからやっぱり不明だよやったね柴山さん。そんなわけで、多分二桁は付き合ったことあるけど、長続きすることも深い関係になることも無かったなあ」

「成る程。つまり今日のトークの中では、恋愛感情とはなんぞや? の答えは出ないわけですね」

「寧ろあたし達の会話で答えが判明したことあった?」

「言われれば、うーん」

「勿論色々違う部分もあるけど、根本的にあたしら似過ぎてるから会話しててもループしまくりになるからね。第三者の意見が無いと纏まりようがねーわ」

「たしかに」

「そんなわけで恋愛以外の話しよーぜ。おたよりとか来てないの?」

「それが、こんなところに曲リクエストのお手紙が」

「また忘れるところだったんじゃん危な」

「PN『LRS』さんからのリクエストでした、ありがとうございます」

「なんて?」

「ありがとうございます?」

ペンネームの方だわ」

「エル、アール、エス。全部アルファベットですね、多分単語とかではないと思うんですが」

「ふうん? まー、ありがとうございます」

「じゃあ読みますね。『上崎さん、柴山さん。笑えばいいと思うよ!』」

「いつもニコニコ笑顔です♪」

「くくっ」

「何」

「いえ。『こんばんは、LRS過激派です。LRKとかなんなの? 本編にそんな素振り今までありました?』」

「この人は何を言っているの?」

「僕にもさっぱり。『ケンアスもそうだよ! LRS過激派だからと言ってアスカはどうでもいいというわけじゃないんだよ! その辺制作陣分かってるんですかね!?』」

「解説してよ」

「いやだから分かんないですって。でも、うーん……多分エヴァの話題でしょ? ケンアス……ケンアス?」

「えっ、もしかして、アスカって、この人ずっとエヴァカップリングの話してる? ペンネームから、よく分かんないアルファベットもずっと?」

「イマイチ理解できてませんが、多分、そういうことですよね」

「恋愛の話からはなれてねーじゃんか!」

「あはは……『仕方が無いので私は二次創作に消えます。CP展開は兎も角、映像も演出も音楽も全てが素晴らしい映画でした。曲に罪は無いので毎日聞いていますし皆さんも聞いてください』だそうです」

「罪」

「流石、過激派は言葉がもう過激ですねえ」

「最近さー」

「オッ強引な話題転換」

「うっさい、このまままた恋愛トークに引きずりこまれてたまるか。最近、アニメ映画だとかテレビでも、一般に有名なアーティストが歌うこと多くなったわよね」

「その話前にもしませんでした?」

「そうだっけ?」

「アニソンと一般的なJ-POPの垣根あんま無いですよねって」

「マジか。普段から考えすぎてて繰り返しちゃったか」

「どちらかというと、僕らが言う『一般の』って呼称のほうが、いつの間にか異質になっている気がしますね」

「まー、そうかも。でもさ、他の言い方なくない? アニメの曲もJ-POPだと含んじゃうんでしょ、じゃあドラマの曲は? CMの曲は?」

「ドラ、ソン……? CMはCMソングって売り出しますよね」

「CDが発売になった時入ってる他の曲は?」

「あ、うーん」

「CMと言えば、昔に比べてアニメーションのCM増えたわよね」

「話題の転換があまりにも早い」

「昔は商品CMと言えば有名芸能人だったし、それを結び付けて覚えてたもんだけど、最近は……あのほら、『ブルーピリオド』のCM、知らない?」

アルフォートですよね、チョコの」

「そう! あれあたしみたいに『ブルーピリオドのCM』ってしか覚えてない人多そうだけどいいのかなー。購買に繋がってんのかな?」

「分からないですけど、チョコ系は結構アニメ系との関わり積極的ですよね。僕もクリアーファイル貰うために何十個と買ってます」

「あー、あれもチョコだっけ。まあ、多くの人に刺さらなくても、コラボした作品のファンとかが買いまくるのかな? 結局個数売れれば何人で買ったって関係ないもんね、うん」

「握手券封入してCD何枚も買わせるアイドルみたいなこと言いますね」

「そう聞くと駄目な気がしてきたな」

「まあ実際は、今までの購買層と違ったところへのアプローチって感じですかね? 多分CMが何に変わろうと古参のおファンは買い続けますから、さらに顧客層を広げていくべしという」

「あー、成程ね。そういうことかー」

 

(CM)

 

 

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第十五回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「こんばんは! 巻き起こせ愛のハリケーン! 『ふわふわラジオ』MCの上崎茜(CV.瀬戸麻沙美)です!」

「いくぜ正義のタイフーン! 『ふわふわラジオ』MCの柴山蒼汰です!」

「いぇーい!」

「いぇーい!」

「柴山さん今日ノリノリだね」

「上崎さんが頼んできたんじゃないですか! これ言えって!」

「いやまさか、やってくれると思わなかったし」

「実は毎週、ちょっと楽しそうだなと思って見てたんですよね」

「相方に憧れられる女……上崎! さあ第15回もフルスロットルでいきますよー!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「One Last Kiss(宇多田ヒカル)」

 

「さようなら、全てのエヴァンゲリオン……」

「終わっちゃいましたねえ」

「ところであれってエヴァンゲリオン? ヱヴァンゲリヲン?」

「いや喋りじゃ分かんないですけど。多分標記のこと言ってますよね? あれは新劇場版シリーズが旧字体とか使ってるほうで、それ以外は普通の標記らしいですよ」

「あ、そーなんだ」

「というかこれ系の作品って大体そうですけど、ガチファンが滅茶苦茶拘ってるだけで意外と制作陣からしたらどうでもいい要素多いってのありますよね。この標記がそうなのかは知りませんが」

エヴァはロボじゃないってファンが拘ってたら監督がエヴァはロボでしょwって言った話?」

「そんな感じですね」

「まあ制作陣、って言っても複数人関わってる時点で一枚岩じゃないしね。多分、明確な作者が一人だけ存在する小説とか、漫画とかそれくらいじゃない? 世界観のこだわりが完璧なのって」

「そうなのかもしれませんね」

「シンエヴァの映画、見た?」

「見ましたよ」

「どうだった?」

「面白かったけど二度と見ないですね。脳破壊されたんで」

「どういうこと?」

「正直冒頭からアスカと某男性が付き合ってるのかばっか気になってて内容3割も入ってきてないです」

「(爆笑)あー、あれね! 確かにあたしも驚いたわ」

「終わりの諸々も、僕の中では公式が並行世界説で通してますからね未だに。あんなの剪定事象でしょ」

「そこまで言うか」

「そもそも僕、恋愛を最後まで描き切るタイプの作品心がキュウっとなるので苦手なんですよね」

「心が、キュウっと」

「なりません?」

「うーん分かんねーなあ。いや、ニュアンスは実は分かる、けど、それが恋愛ものを読む楽しみじゃないの?」

「ふっ、わかってないですね上崎さん」

「あ?」

「それは現実の人間関係で普段から心がキュウっとしてない人間の感想ですよ。僕のように普段からキュウキュウしてばっかの人間からすれば、創作の世界の中でくらいは平和でほのぼのな関係ばっかり見ていたいのです」

「あれ、なんだろう。ちょっと可哀想になってきた」

「失恋した主人公やヒロインの心情描写とか読んだ後二日は立ち直れないですし、作中好意を寄せていた以外のキャラと結婚したヒロインの後日談とか見ると自分の中で展開を捻じ曲げ始めますね」

「あ、エヴァが初めてじゃないんだ」

「瀬尾浩二さんの作品とか、絵もキャラも好きですけど別作品で過去シリーズの未来の姿とか出てくるんで正直読めませんし……なんで主人公とラブコメしてたヒロインが他の男と仲良くやってる展開見なきゃいけないんですかね」

「しっかり読んでる奴の感想なんだよな。いやほら、失恋したーで終わるとさ、その人が不幸になったとこで終わるわけじゃん? 色々あったけどちゃんと幸せを掴みましたよっていう、ほら、サービス展開のつもりでは?」

「他の男と幸せになってる女、見て楽しいですか? こちとら主人公にがっつり感情移入済なんですよ」

「過激派だ」

「その点ハーレムものは安心ですね、出てくるキャラ皆失恋しないんだろうなと安心して読めますし。創作の中の出来事なので倫理観とかも忘れ去ってますから一夫多妻とか問題ナシ!」

「割り切りがすげー」

「上崎さんはあんまそういうの無いですか?」

「いやまあ、あたしも色んな感想を抱きながら、特に恋愛モノなんかは見てるけど、そこまで苛烈な拒否感とかは無いなー。あ、でもなんか、女性主人公のイケメン恋愛ものは苦手かも」

「え、女性でそれは、珍しいんじゃないですか?」

「いやー今どきはそうでもないんじゃないかな? 特に、LGBTQとかって価値観が一般的なモノだって受け入れられ始めてるわけだし。女性はみんなイケメンが好きだってのは偏見になりつつあると思うぜ」

「まあそこまでは思ってないですけど、でも上崎さん異性愛者だっつってませんでしたっけ」

「うーん、いや、実はあんまり」

「そうなんですか?」

「いや、だから同性が好きって話でなく、こう、あんまり恋愛感情を抱いたことがない、が正確なところかな。性欲はガンガンに抱くんだけどね」

「いやそんな、強調しなくていいですけど……」

「あとあたしほら、モテるから?」

「はあ」

「来る者拒まずだったからとっかえひっかえだっただけで」

「ああ……言い方はちょっとアレですけど、少しわかりますね」

「柴山さんもとっかえひっかえしてたタイプ?」

「いや全然そんなことはないですけど。恋愛感情抱かない、の部分に理解できたというか」

「ソッチかよ。でもそうか、わかるか」

「なんでしょうね、好きな人は普通にできるんですけどね。なんて言うのか、好きになってほしいだけというか。私のどこが好き? と聞かれたら説明できてしまうというか。そして最終的には顔とか言っちゃいそうというか。付き合ったら外に出したくなくなるというか」

「いやそこまで赤裸々に語られると困るんだけど最後のは特にどういうこと? 怖いわ」

「なりません? 独り占めしたく」

「まあ、それはなるかもしれないけどさ」

「彼女ができると、周りの男みんな彼女を狙ってる敵に見えません?」

「あたし女だけど、まあ、分からなくもない、か……?」

「寧ろ女友達に会う時ですら嫉妬しません? もうなんて言うか、僕だけを見ててくれ?」

「怖いよやっぱ」

「まあ要は、そんな感じなので、自分が感じている気持ちが好意なのかただの独占欲なのか、それこそ性欲なのか分からなくなるんですよね。みんなどうやって判断してるんでしょうか」

「長くなりそうなのでCM行きまーす」

 

(CM)

 

 

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第十四回ふわふわラジオ(3)

 

 

 

「我儘トークは一旦置いといて、転職ってものを話したいんですけど」

「ほう?」

「転職って滅茶苦茶勇気要りますよね」

「まあ、そうね。絶対そうね」

「僕たちのような人間にとっては、特に」

「僕たちのような?」

「こう、レールの上をその通りに歩いてきたと言いますか、寄り道しないで人生来ちゃった感じと言いますか」

「あー、言わんとしてることは分かるかも」

「自分の頑張りもありましたし、それ以上に周りに恵まれていたことで。小・中学校を出て普通科の高校に入り、浪人することなく大学を4年で出て、一般的な企業に就職した人たち。これを言い換えてしまえば、今後の人生を大きく変えるような決断を避けられちゃってた人たちでもあるんですよね」

「これが駄目だったら大きな決断をしなければならない……を、駄目じゃなくて決断しないで来ちゃった人たちね。あたしもそのクチだよ」

「なんというか、イチかバチかだったことがあまりないんですよね。これはとても恵まれていることだと思っていますが、逆に言えば親の庇護下、なんとか取り返しのつくレベルでの失敗経験を積めなかった人間とも言える」

「わかるー。無理よね、人生最初の選択がいきなり働き口とか、その先とかさ。夢を追って不安定な道にいきなり挑めはしないわよ。だってこの先はあたし自身の力と責任で、生きていかなきゃいけないんだもの」

「高校、大学選びをもっと真剣にやってれば違ったんでしょうかねえ。僕は成績も平均的な位置だったんで、どちらにしろ選択肢そんなに多くありませんでしたし。当時は明確な夢が無かったので、専門学科のある所を探したりもしませんでしたから」

「あたしの地元はそもそも高校が多くなかったからね。普通科で、大学に行きたくてって時点でほぼ決まってるようなもんだったな」

「今も似たようなもんではありますけど、遊び盛りの当時の僕らは、勉強やそれにつながる物事に使う時間なんて無いようなものでしたから。取り敢えず、周りに遅れず進学できさえすればそれでよかった」

「何人かいた、その時点で将来をしっかり考えてる友人たちが別の生き物に見えて不思議でしょうがなかったなー。でもあっちこそが正しい在り方で、あたしたちが甘いだけだったと今は分かるよ」

「だから、サザンやこの曲が素晴らしいもそうですけど、人生30年さんこそが僕たちにとっては眩しくて、かっこいい存在ですよね、一番」

「30年そうやって生きてきた在り方を変えるってのすごい挑戦だよねー」

「ちょっとくどくなっちゃいますけど、今、自分の普段の生活も思い返してたんですよ」

「うん?」

「例えば仕事のやり方一つとっても、すごい細かく確認しちゃいません?」

「あー分かる。お前のやり方でやっていいよ、って言質とってない限りは逐一確認するわあたし」

「このやり方でいいですよね? これでやっていいですよね? って、一つの仕事に関して5回は上司に確認しますね。すげーしつこい奴だと思われても、やらかすより100倍いいですから」

「もう怒られるのが恐いとかじゃないのよね。やらかし、それ自体が恐怖そのものなの。失敗をする自分が無理なの」

「という、日常的に挑戦を避けて生きてるなー僕と、今ふと思いました」

「今日、冒頭でオリンピックの話題出して、それ以降ご時世的な話してなかったじゃん?」

「ああ、そういえばそうでしたね」

新型コロナウイルス……未来の世でなんて呼ばれてるのか知らないけど、これでほぼほぼあらゆる民間企業が自粛だのテレワークに強制移行だの、なったじゃん? その時あたし、ああ、あたしは何も間違ってなかったと思ったんだよね。安定をとってよかった、と」

「就活というか、仕事選びに関してですね。でも言うて上崎さん、公務員ではないじゃないですか?」

「うん。いやー、ここで公務員以外の道を選んだのがあたしの人生最大の冒険だと思うよ。それでも一応公的機関に次いだ老舗、生活に密着してるから需要が無くなりにくくて、業績が安定してるとこではあったからさ」

「まあ僕も、自分の考えていた将来像の中では一番無難で安定した未来を選んだクチですけど」

「前にも言ったかもしれないけど、あたし、一番興味ある分野はエンタメ系だったのよ。イベント会社とか、制作とか、夢と云うのはそっちばっかりだった。けどね、うん、業界の人達には本当に失礼ながら、そういう仕事選ぶ人たちは正気じゃないとすら同時に思っててさ」

「特定の誰かを貶める意図のある発言ではありませんからね! 決して!」

「本当に、感情的に言えば本当に、なくてはならない分野ではあるのよ。けど生命活動に直結してる仕事ではないから、人類の危機に瀕した時無くなる順番はきっと早いほう。その時に食いっぱぐれるリスクをあたしは取れなかった」

「人類の危機に食いっぱぐれの心配とか考えすぎ、って笑いたいのにここ2年のことを考えると笑えませんね」

「でしょ? 少しでもリスク低く、例え日々の仕事の時間がずっと苦痛でも、お腹を満たして快適な部屋にいて、趣味にも使えるお金がもらえるならそっちを選ぶ。もう信念だよねこうなると。だからこう、リスクをとってでも自分の望む道を進んできた人たちが、いざという時特に我儘に見えちゃうのはあるな」

「特に今回は、政府からの補償が出ない自粛要請だの、多かったですからね。大体は、ほんとはみんなの主張も当然の権利なんですけどね? 例えば災害への補償だのを含めて、それを前提に仕事を選んできた人たちなんですから、ちゃんと保証しろって言うのは図々しいわけじゃない」

「それに、夢を叶えた人たちだって、その道にはその道の苦労があったことも間違いないのよね。心も体も、その苦労に耐えてきたからこそきっと夢を叶えられたんだろうし。そう分かっていても……いざという時の安心を求めるなら、どうして公務員やインフラ、無くならないような仕事を選ばなかったの? とつい言いたくなってしまうのよな」

「或いはこれこそが、僕らの我儘なのかもしれませんね。いざという時の為に、僕らは日々の仕事の喜びを捨ててでも、安定した仕事をこなしてきた。そのいざという時が来たのだから、日々の仕事の喜びを選んだはずの人達は僕ら以上の苦労をしてほしい、という傲慢な我儘」

「口に出しちゃうと本当に醜い感情だけど、これは確かにある。けどまあ、先に言ったように……人には人の苦労があって、物事にはいろんな立場の人が関わっているから、優しさと思いやりを全員が持っていかなきゃいけないわね」

「そうですね」

「まとまった? なんか、転職とはちょっと違う結論に辿り着いたけど」

「いいんじゃないでしょうか」

「えー、一応注意。こちらも繰り返しだけれど、あたしも柴山さんもふわふわした知識でこのラジオのトークを進めているからね」

「子育ての経験も移住の経験も、転職の経験もないですからね。マジで無責任だな僕ら」

「だから、話半分というか、こういう意見の人もいるんだなーくらいに聞いていただけると助かります。そんな感じで、次回もお話していこうね!」

「それではまた来週!」

「ばいなーら!」

 

(ED)

(曲)「番組テーマソング(Mrs.GREEN APPLE)」

 

 

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第十四回ふわふわラジオ(2)

「最近の人類って我儘だよねーって話です」

「そんな話でしたっけか」

「そうだよ」

「はい」

「何事もそうだと思うんだよね。例えば……あーなんか似た話先週もした気がするんだけどさ」

「先週? 何の話でしょう」

「子育ての話」

「ん-、そういえば、なんか確かに。あれですね、負担を分散させて終わりじゃなく、負担自体を減らそう見たいな話でしたっけ」

「おー、よく覚えてるね。そのへんの話のそもそもなんだけどさ。望みが、多すぎる人、いるよね」

「というと?」

「例えがどうしても女性目線になっちゃうけど、子供を産んだ後もばりばり働きたい。でも産休はしっかりとりたい。夫に育休も取ってほしい。仕事もするけど、子供の成長もしっかり見守りたいし、遊ぶ時間も取ってやりたい。と言いながらたまには母の役目から解放されて休む時間も欲しい。それらすべてを絶対にと言うことを、人は無茶と呼ぶでしょ」

「こうして主張だけを並べてみると、たしかに無茶ですね」

「そもそもさ。昔から日本にあった、妻は家で家事と育児、夫は外で仕事っていうこの役割分担ってすごく合理的なんだよね。だって家事と育児は片手間でできるような作業じゃないし、仕事はそれだけを頑張れる人ほど会社で重宝されるもん。しょっちゅう休む人に急ぎの重要な仕事は任せられない、これはいじめでも差別でもなく純然たる事実なのよね」

「けど多分、合理的だったって話をするだけでも、今の時代は男女差別だって叩かれそうですよね」

「ほうっときゃいいわよそんな馬鹿は。今は、感情の話はしてないの。というかこれ男性が家で家事育児で女性が外で仕事でも成り立つしね? どちらにしろ出産で休みを取らなきゃいけない女性が仕事を辞める方が会社的には助かるだろうけど、まあそれくらいは何とでもなるだろーし。大事なのは、合理的に考えたときに、夫婦で役目を分担するのが理に適ってるってとこなのよ」

「ふむふむ」

「ただこれも例外というか、全員に当てはまる話でもない、けどね。仕事も子供も夫の仕事含めた収入も! っていう我儘に対して苦言を呈したかっただけ。現代社会だと、夫婦の片方だけの収入じゃ経済的に厳しいから、辞めたいのに働かざるを得なくなっている人も大勢いるだろーし、そういう人たちを否定する意図が無いことは伝わっててほしいわ」

「あくまで考え方の話ですからね。多くを望み過ぎていませんか? という」

「けどまあじゃあ、経済的に苦しい人が我儘じゃないか? って言うと、そうとも限らないわけで」

「えっ」

「周りのサポートが欲しいと言いながら、実家に戻らず、人付き合いの薄い都会にしがみつく人とかね。昔、二世帯三世帯で済むのが当たり前だったり、地域の人と協力して子を育てるのが当たり前だった田舎を離れて都会に出てきたのは自分達だったわけでしょう? 自分から過酷な環境に出てきて、無いと分かっていたものを寄越せというのは正直滑稽に映るというか」

「なかなか言いますね」

「勿論これも全員に当てはまる話ではなくて、家族からの暴力や嫌がらせから逃げた人はきっと実家を頼れないだろうし、そういった人たちの為にサポートを充実させることは大事だと思うの。でも、今なんて特に縁もゆかりもない田舎ですら移住を歓迎してくれるような時代でしょ? それでもやりたい仕事が無いだとか都会でしかできない趣味だとか言って都会にしがみつきながらぐちぐち言うのはちょっと我儘寄りかなーとは思っちゃう」

「まあ田舎は田舎で昔からの風習とかありますし、そこに馴染めるかどうかもあるので。移住が簡単な話だということは決してないんですけどね」

「そーだね。結局どの苦労が一番マシか、みたいな話にはなっちゃうけどね。でもどの苦労もしたくない、は我儘なんだよなーと」

「それは確かに」

「そもそもこれは、我儘が悪いことだよって話じゃないのさ。というかあたしなんてベースが我儘の塊でできてるような女だし? 仕事にそんなにやる気は無いけど金は欲しくて将来のこと考えるのに頭使いたくないからクビになりたくなくて人ごみ煩わしいから都会に出たくなくてでも人とは喋りたくて趣味に金も使いたくてって奴だしね?」

「こっちもこう聞くとマジで我儘ですね……」

「でしょー? 要は、なんかの時にも話したけど、自分の状態をもっとみんな理解するべきだよなーっていうお話ね。私たちが主張して、お願いしてることは叶って当たり前のことじゃないんだよと。多くの人の頑張りや、社会構造の大きな変化を伴ってこそ変わる類のもので、ちゃちゃっと手軽にできるものじゃない。そう分かっていれば、少しは優しくなれるんじゃないかなーとあたしは思うわけですよ」

「仕事から帰ってきたパートナーに家事や育児を頼むとき、相手も自分と同じだけ疲れてると分かれば少しの気遣いができるかもしれない。会社の制度がなかなか思った通りじゃなくても、会社に文句言うだけじゃなく別の会社を探すとか……これはちょっと違いますか? まあ、意味のある動きができるかもしれない」

「公的サービスを受ける時には、税金払ってるから当たり前だと思ってる人は言葉も態度も乱暴になる。けど、それを考えてくれた人、頑張って実現してくれた人、運営するためにいまあ頑張る人を想うことで多分接し方が変わる」

「つまり、どういう話ですかね?」

「プライベートでは人類皆我儘、仕事では人類皆必死。自分も同じ、相手も同じ。プライベート状態の時も、我儘を声高に叫びつつ、相手への気遣いは忘れずに生きていこうな!」

「マジで何の話からこの結論に至ったかわけわからんですね……区切りいいんでCM入れまーす」

 

(CM)

 

 

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第十四回ふわふわラジオ(1)

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

 

「こんばんは! 夢を追いかけBダッシュ! 上崎茜(CV.内田真礼)の『ふわふわラジオ』です!」

「ついに番組を私物化しだしましたね? どうも、柴山蒼汰の『ふわふわラジオ』でもあります」

「オリンピック終わったねー」

「えっ、ここでその話題振るんですか? 今までご時世的なトーク全スルーしてきたのに?」

「やっぱアレだね、チーム戦は腰を据えて、個人戦はなんとなしにテレビつけて気軽に見れるのがいいよね」

「完全無視しやがりましたね。いや、まあいいですけど、タイトルコールの後にね?」

「へーいそだね。よしじゃあとっとといきますかー第14回!」

 

(SE)『ふわふわ〜ラジオ〜!』

(CM)

(曲)「I AM YOUR SINGERサザンオールスターズ)」

 

「敢えての?」

「何がですか?」

「オリンピックの話題からのサザンオールスターズと来たら『SMILE~晴れ渡る空のように~』だと思うじゃん? 敢えての『I AM YOUR SINGER』?」

「いや、そもそもオリンピックの話題が最初に出てくること自体が僕らにとって予定外だったのでなんとも。普通にリクエスト曲ですよ」

「あ、そうなんだ」

「PN『人生30年』さんからのリクエストです、ありがとうございます」

「同年代、ちょっと先輩の人か。あー、それだとこの曲が世代ドンピシャか」

「そうですね、それくらいだった気がします。『上崎様、柴山様。いつも楽しいお話を聞かせていただき、ありがとうございます』あ、どうも。」

「初手感謝はポイント高いわよ」

「『私がこの曲に出会ったのは、丁度、第二の人生について考えていた時でした』」

「待って?」

「第二の人生?」

「これ、10年と……13年くらいか、それくらい前の曲よね? 今30歳でしょ、てことは高校生くらいじゃないこの人? 第一の人生どこ?」

「いや、待ちましょう上崎さん、高校生とは限りませんよ。世の中、中学卒業と同時に働き始める方もいらっしゃいます。そこでの仕事が第一の人生、そこから第二の人生を考えていた方かもしれませんよ」

「あー、いや、成程ねえ。確かにあたしの中で、18歳イコール高校生がイメージとして固まっちゃってたかもしれない。それに気づかせてくれてありがとうございます……ん? 何の話だっけ」

「第二の人生の話ですね、おたよりの続きを読みます。『この曲は、サザンが30周年にして無期限活動休止を発表した時の曲で、これまでの感謝といつかの再会を願った、テーマとしてはありふれた曲かもしれません』」

「ふむふむ」

「『けど私にとっては、これをサザンが歌ってくれたことがとても大きかった。何歳からであっても新しい道を選んで進み、それでいて今の出会いにもまたもう一度と言っていいんだって。別れも、挑戦も、約束も。手遅れなんてことはないと教えてもらえました』」

「なんか、感想がだいぶ年上じゃない? 30っぽくなくない?」

「『50を過ぎての転職という、時代が時代なら有り得なかった選択を後押ししてくれたこの曲が、多くの人に届けばいいなと思います』とのことです」

「やっぱ30じゃないじゃん! なんでサバ読んだの? しかもペンネームだけで? 謎過ぎる!」

「いや、上崎さん、僕分かりましたよこれ。50過ぎでしょ? マイナス30年すると20ちょいってことになるでしょ? 第二の人生、って話してたでしょ? これ、一つ目の仕事、第一の人生に30年いたってことですよ多分」

「え、ちょっと待ってね……あーなるほど、理解した。でも紛らわしいわ!」

「ですね。でもまあ、おたよりありがとうございました」

「10年以上前かー。確かに、今ほど転職が当たり前の時代ではなかった気がするわね」

「というか、今も実はそんなにでもないですよね。業種や職種によって転職に対する考え方が違う気がします。同業種内でガンガン人動くとこと、一生涯勤め上げる! 会社に尽くす! って業界での考え方の温度差みたいなの、ありませんか」

「あー、そうかもしれない。なんだろうね、職種自体の新しさ? ITとかが人の動き激しい気がするけど」

「そこで働いてる人の目的の差、ってのがある気がします。勿論、個人差がありますって前置きはあった上で、より上のお賃金を求めて働く人たちと、より上の技術を求めて働く人たちとの違い」

「成程ね。考えてみれば、閉鎖的な業界でもより自分の能力を磨きたい人は転職も含めた変化を求めるし、流動の激しい業界でも生活のためって人はできる限りの安定のために居座るか。どっちのタイプの人が多いかで、業界の色みたいなのが決まると」

「そのイメージでした。傾向として、技術者、職人さんとか呼ばれる人たちがスキルアップ重視型が多いかなという」

「職人さんと言えば、伝統工芸とか、所謂『弟子入り』のある業界はまた別なのかな。師匠のを受け継ぐのが前提なんだろうし」

「それはそうですけど、最終的には独立を目指す人が多いんじゃないですか? 所属する会社自体が変わるのが当たり前、と考えると技術者型と言って差し支えないのかなと」

「まあそうか」

「会社が従業員を全力で守り、従業員は会社のために尽くすのが終身雇用タイプの前提なんだろうなと言うのは想像つきます。反対に能力向上転職上等型は、組織が同じ目的を持った人たちの集まりなんじゃないですかね」

「会社組織が上、従業員がしたって構造が強くないと。というか、そういう言い方をされると、会社の為に尽くすべき! って考え方も間違ってるわけじゃないんだなと思うわね」

「今どきそんなことを言えばすぐブラック企業だって言われるでしょうけどね、何事も一応の理由はあるってことじゃないですか」

「というか会社に安定を守ってもらいつつ仕事は最低限やってプライベートを満喫したい派のあたしたちがどれだけ我儘かよくわかるね」

「勿論、全ての人々が幸せに暮らす社会が理想なのでその在り方が理想の一つではありますけどね。世論的にその我儘が、通って当たり前になりかけているのはちょっと怖いですよねえ」

 

(CM)

 

 

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第十三回ふわふわラジオ(3)

 

 

「どうしたら上手く会話できるか? の話が、いつの間にかそもそもどんな会話が上手いor楽しいか? になってました」 

「上手い会話、上手い会話かあ。楽しい会話のことなら結構はっきりわかったけども、上手い会話ってどんなふうなのかイマイチ分かんないわね」 

「お互いに嫌な思いをせずに終えられる会話、とかですかね?」 

「上手く終わらせるための会話ってこと?」 

「うーんそう言いかえるとなんか嫌な感じが」 

「だよね。なんか、いらないんじゃないかな? と思うよ。上手い会話なんてさ」 

「しかしそれじゃああまりにも、回答になってないと言いますか。あー、じゃあほら、上崎さん上手い会話はできなくても会社で問題なく人とのやり取りはできてるんでしょう?」 

「うん、まー、あたしが思う限りでは?」 

「その時にどういう事に気を付けてますか」 

「あー……余計なことを言わない、かな」 

「そうそう、そういうのを説明してあげましょうよ」 

「えー、でも、それこそさっき言ったやつじゃない? どういい具合に会話を終わらせるかばっかり考えてるというか。これ言ったら面白いかなと思ったことを、言わない。これ言ったらもっと分かりやすいかなと思ったことを、言わない」 

「もっと分かりやすいを言わないのはまずいのでは?」 

「んー、なんていうか、言った後にもっと上手い言い回しというか、表現を思いつくことあるじゃん? それを敢えて言ったりしない、って感じ。勿論相手に伝わり切ってないようなら別だけど、ちゃんと伝わっているようなら、自己満足な言い足しをしないっていうのかな」 

「あー、それ、言えてるかもです。大抵の場合、必要最低限を越えるものは、自己満足の話ですからね」 

「相手に分かりやすく伝える、もその相手がめちゃくちゃ理解力あったりすると余計な気遣いだったりするし。ってなると、これが上手い会話になるのかな? 相手を見て余計なことを省いて丁度良く伝える」 

「それで、楽しい会話は、自己満足になり得るようなやりとりをお互いに楽しめている状態って感じですかね」 

「もうなんか、社会、疲れるね」 

「えっどうしたんですか急に」 

「いや、なんであたしは日々の会話の一つ一つにそんなこと考えて生きてるんだろうってちょっと」 

「社会生活というか、他人と生きるのって気遣いが必須ですからねえ。過剰なものは兎も角、見て、考えることが必要ですから」 

「やっぱあたしは一人が性に合ってるなー。別にずっと孤独でいたいわけじゃないけど、一人の時間もないときついわ」 

「それはまあ多くの人がそうだと思いますけどねえ」 

「そう? でもそれこそ多くの人がさ、結婚をして、家庭を持ってない?」 

「あ、もうそれすらきついレベルで集団生活苦手ですか」 

「実家にいた頃は自覚なかった、というか分かんなかったけど、一回一人暮らししちゃうとねー。これほど楽なものは無いってのをすごく感じちゃう」 

「それはまあ、そうですね」 

「最近さ。育児のことがちょくちょく話題になるじゃない? 男性も育児をするのが当たり前だって話」 

「はい」 

SNSで見かけるママの愚痴って、仕事から帰ってきた夫に手伝え! 疲れてんのはお前だけじゃねーんだぞ! ってのが多い気がしない?」 

「まあ、たしかに」 

「言いたいのは、女性がやるのが当然って話でもないし、男性が仕事して女性が家にいるスタイルが当たり前って話でもなくさあ。男女は置いといて、子供の相手してようが外で仕事して来ようがどっちも大変だって話でさー」 

「まあ、それはそのママさんが言ってる通りですよね」 

「どうしてどっちももっと苦労しよう、になっちゃうのかな。なんとかこの余分な苦労を無くそう、ってなれないのかな」 

「と言うと?」 

「旦那さんは仕事で疲れて帰ってきて、家で休まないと厳しい。奥さんはずっと子供の相手して疲れてて、旦那さんがいる時だけでも子供から手を離したい」 

「ふんふん」 

「よってここは旦那さんに子供を渡して奥さんが休む、が最適解に見えるけど、それだと旦那さんの休息が足りてない。というか、なんだかんだ奥さんもそのまま家事とかやって、意外と二人とも休めない」 

「そうですね」 

「本当の最適解は、どっかの時間で子供を外に預けることだと思うのよね、例えばだけど」 

「あー……まあ、そうですね?」 

「苦労を分散するのは大事だけど、無理があるラインを越えそうなら、苦労自体を減らす方向にシフトするべきだと思うのよ」 

「理解はできますけど、だって、お金もかかりますし。他人に預ける親の心情もありますよ」 

「うん。だから、社会や、制度が悪いよね」 

「おっいつもの無茶な結論」 

「いやまあこの件だけにモノ申したいわけじゃなくてさ。なんていうか、他人と一緒にいる時に、みんなで苦労を分散することしか考えない風潮がある気がしてさー。そりゃ最終的にはそうなるけど、まずは苦労そのモノを減らそうと動いてみるのが大事なんじゃないかなーって日頃から考えてたから、ちょっと言ってみたの」 

「日頃からそんなこと考えて生きてるんですかアナタ」 

「仕事でもそう。残業めっちゃ大変な人がいて、その仕事もっとみんなで分散しよう! 俺もうちょいなんとかできるぜ! じゃなくて、人増やして一人辺りのそもそもの仕事量減らそうとか、内容見直して仕事自体を減らそうとかそっちに考えやらない? って毎回思っちゃってさー。社会がおかしい、仕組みがおかしいを、まずは変えようとしない?」 

「逆なんじゃないですか。まずはできることから、破裂しそうな誰かを何とかするために苦労の分散から初めて、一時しのぎが出来てから根本原因を探るほう。まあ、結局根本原因のほうに手が回らず終わることが確かに多い気がするので、上崎さんの言うこともわかりますが」 

「あー。まあ、そうなのかも」 

「ひどいまとめかもしれませんが、楽をしようぜ! って感じですかね」 

「いや、それであってると思うよ。楽な道探してこう! ところで何の話だっけ?」 

「上手い会話?」 

「あっ。でもまあ、これ以上言えることないし。ぼっちちゃんさん、答えになってましたかね?」 

「納得いかなかったらまた是非おたより送ってきてください。改めて、言える限りの答えを考えます」 

「中途半端に回答してまたおたよりを貰う、マッチポンプ?」 

「人聞きの悪いこと言わない! はい今週もここまでですよ!」 

「聞いてくれてありがとうございました、おたより募集してます! それでは、ばいなーら!」 

「ばいなーら!」 

 

(ED) 

(曲)「番組テーマソング(月のテンペスト)」 

 

 

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